【広島スタジアム問題】資料を読まない人のために、広島市が公表したスタジアム基本方針を解説するので読んで下さい
早速ですがいつのものやつです。2019年5月、広島市、広島県、広島商工会議所の3者が会談を行い、スタジアムの基本方針を策定いたしました。
今回初めて「⑦建設資金の確保」が示されたのが大きなポイントだと思います。それに伴い、「なぜ資金投入する必要性があるのか」という点に注力して基本方針が作成されている印象を受けます。
本方針はスタジアムの目指す方向性を指し示すものであり、基盤・基礎となるべき考え方ですから、ここを押さえておくことで今後実施されるらしい意見募集の一助になるのではないかと思います。
というわけで章ごとに内容を簡単にまとめてみました。
(余談ここから)
「なんで市・県・商議所だけで話し合うんだ!サンフレッチェが仲間外れなのはおかしい!」と怒る人がいるかもしれませんが、こちらの平成27年1月までの経緯を見れば、3者で検討してきたのがここまでの流れ(広島県サッカー協会は途中離脱)ということを理解していただけるかと思います。
(余談ここまで)
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①サッカースタジアム建設の基本的姿勢
いわゆる「はじめに」に当たる文章ですが、ここで結構大事なことを述べていますので丁寧に見ていきたい。主に4つのポイントが示されています。何故そういうことを書いているのか順番に見ていきましょう。
サッカースタジアムは、広島の新たなシンボルとして広域的な集客効果を高めるなど、広島市ひいては広島県全体の活性化につながるもの
1つ目はサッカースタジアムを作る必要性の説明です。もっと言うと、広島市・広島県がお金を出す理由があるんだよという根拠の表示。税金を投じるにはそれなりの理由付けが必要なのです。
サッカーを通じた国際交流が期待できる中で、その建設場所である中央公園広場と平和記念公園が一体となった平和発信の拠点となることを目指す
2つ目は中央公園広場が建設地となった理由の説明。サッカーの特性である国際交流と平和を繋げることができるのは広島の持つ強みでしょう。ただ、平和記念公園まで物理的な距離感があるので、処置が必要そう。
サッカースタジアムは、サッカーのための施設にとどまらず、都心部の更なる活性化に寄与することが期待され..........年間を通じて人が集まるスタジアムとしていくとともに、若者を含む幅広い世代が楽しめるような施設とする
3つ目の前段は中央公園広場を建設地とする理由の一つとなった「都市再生緊急整備地域」の指定を受けたことを示しているのではないでしょうか。国の補助金を使う根拠にもなっているっぽい。
後段はスタジアムが「専らプロサッカー」に使われるものではなく、広く市民・県民が利用できる施設であるという説明。国だけでなく市・県にとって税金投入先としてのフォローでもあります。まぁ仮に税金が投じられなくてもこうあるべきではあるでしょうけど。
旧広島市民球場跡地を含む中央公園全体の空間づくりなどを進めることで..........中央公園全体を使った大きな周遊ルートの形成につなげ、この一帯が、中四国地方の発展を牽引する広島の新たな賑わいの拠点となるように取り組む
最後に一体開発について触れています。先ほど「平和」という要素を通じて平和記念公園との一体利用(発信)を謳っていましたが、こちらは周遊ルートとしての一体化を目指しています。
1つ目~3つ目まではこれまでも説明がありましたが、4つ目は初めて示されたポイントです。サッカースタジアムがもたらすであろう周辺地域へ与える混乱に対応することをきっかけとして、中央公園全体の抱える問題点を改善していきたいということかもしれません。良いこと。
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②広島県、広島市、広島商工会議所の連携
建設だけじゃなくて付随する賑わい創出でも協力するよという話。
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③建設場所
これまでスタジアムの建設場所は中央公園広場の東寄り配置で検討されてきましたが(下の図は基町地区個別説明会で示された資料)、2019年度中に策定予定の基本計画において決定すると明言。
後述する規模を変更しない以上、図を見る限りでは西側に寄せるのは大変そう。角を隅切りにして角度を付けたらどうかは分かりませんが。
なお、当該建設予定地にあるモニュメント等の取扱いについては、現在の場所に配置することとなった背景等を十分に考慮する
この説明はとても大事なことですね。動かせばいいじゃんと軽く考えたらダメな場合もありますから。
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④事業主体
先日の4者会談における合意事項通り、広島市になりました。
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⑤規模
先日の4者会談における合意事項通り、3万人は変わらず。
建前=新スタジアムの集客需要予測の結果、広島広域公園陸上競技場での近年の集客実績、サッカーの国際試合を誘致する上での優位性の確保
本音=ここを変えると比較検討の土台が崩れるから今更変えられない
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⑥スタジアム建設に当たって留意する事項
4つの留意事項が示されています。
⑴スタジアムの多機能化と広場の再整備による魅力ある空間づくり
1点目。ここに「県民・市民等から幅広く意見を聞きながら効果的な賑わい機能の導入について検討を行う」とあります。これについてRCCは次のように報じています。
新スタジアム基本計画に市民の声反映(RCC 2019年5月30日)
また、有識者や民間企業から意見を聞く場を設けるほか、インターネットで市民アンケートを行い、今年度中につくる基本計画に反映させたいとしています。
シンポジウムだとかそういう形式ではなさそうですね。
⑵スタジアム建設と連携した紙屋町・八丁堀地区の賑わいの創出
2点目は「基本的姿勢」のところで述べたことなので割愛。
⑶広場機能、防災機能の維持
3点目は現状の広場機能・防災機能を維持するよという配慮。スタジアムの防災機能は近年Jリーグが推しているポイントでもあります。
基本方針において、「スタジアム自体が防災拠点となるよう、備蓄倉庫等を整備するほか、近隣の方の避難場所や帰宅困難者一時滞留施設として活用」と指摘されているように、周辺住民が安心できる施設とするべきです。
⑷周辺住民への配慮
4点目は試合中の騒音対策と来場・退場時のトラブル対策について。住民説明会で示されていることの焼き直しです。ここをどこまで詰められるかは大事だと思います。
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⑦建設資金の確保
今回初めて示された建設資金の確保方法ですが、実は新広島市民球場の資金確保方法と全く同じなのです。こちらは第1回広島市民球場運営協議会の会議資料から引っ張ってきたもの。
ここにあるように、新広島市民球場の資金調達の内訳は次の通り。
・地元経済界寄付(法人寄付)
・たる募金(個人寄付)
・国庫補助金
・球場使用料(で償還される市債)
・県補助金(市が建設主体なので補助金という名称だが実質県負担金)
・市負担金
⑴企業や個人からの寄附金
⑵国の交付金
⑶使用料収入等を償還財源とする市債の発行
⑷地方公共団体による資金確保
というわけで新広島市民球場の資金確保と全く同じなのが分かっていただけたでしょうか。
⑴企業や個人からの寄附金については、ガンバ大阪ほどは無理としても(ガンバ大阪は個人寄付が約6億、法人寄付が約100億。ちなみに新広島市民球場は上記資料のとおり個人寄付が約1億、法人寄付が約17億)、ふるさと納税制度が整備されていますので、頑張りたいですね。
⑵国の交付金については、「社会資本整備総合交付金」だけでなく「防災・安全交付金」も取りたいとのこと。新広島市民球場は「下水道国庫補助金等」を引っ張ってきていましたが、取れるものは取りたい。
⑶使用料収入等を償還財源とする市債の発行は、おそらく利率低め。
新広島市民球場が「異例の低金利」で資金調達できた理由(J-CAST会社ウォッチ 2012年3月15日)
なぜ、僕が感銘したか。その地方債の発行コストがものすごく低かったからだ。球場建設の歳出増に対応する地方債の応募者利回りは1.03%だった。同時期の国債の応募者利回りは1.20%なので、国債より低い金利で資金調達ができたことになる。一般的には自治体は国よりも信用が低いので、地方債の金利は国債より高くなるが、市民球場の場合には、地元住民に支持された事業だからこそ、こうしたことが起きたということである。
⑷地方公共団体による資金確保はセーフティネット。問題は割合ですね。
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⑧事業手法
「事業効果の最大化、設計・施工や管理運営の効率化が図れるような事業手法を検討」というのがどういった方式を念頭においているかは不明。
各手法の比較は先日沖縄の資料を引用して説明したのでそっちを参照。
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⑨整備スケジュール(予定)
今年は基本計画の策定、設計・施工の発注準備。2024年度開業を目指す。
ただ、これは何もトラブルがなかった場合の話なので、試掘調査で何か出てくると多少延びるのではないかと思います。こればっかりは仕方ない。
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⑩事業推進体制等
すごいざっくりとした組織図を作るとこんな感じ。
マクロ的な議論は市・県・商議所にサンフレッチェ広島をオブザーバーとした「サッカースタジアム建設推進会議」で行う(たぶん作業部会で検討したことの承認機構)。
ミクロ的な議論は市・県・商議所の職員に県協会をオブザーバーに加えた「作業部会」で検討していく。という感じなのでしょう。
新広島市民球場のときは広島市がほぼ全権を持っていたことを考えると広島県・広島商工会議所の発言力は大きい印象を受けます。広島商工会議所が仲立ちする役割を担ってきたという経緯によるものかもしれませんね。
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以上!