青山敏弘とACL
青山敏弘が現役引退を発表した。
青山敏弘選手 現役引退のお知らせ
このたび、サンフレッチェ広島所属の青山敏弘選手が、今シーズン限りで現役を引退することになりましたので、お知らせします。
サッカー歴
作陽高等学校 ⇒ サンフレッチェ広島
コメント
サンフレッチェ広島の青山敏弘は今シーズンを最後に現役生活を引退する事をご報告させていただきます。
21年のキャリアの全てを広島でプレーさせていただいた事に、大きな誇りを感じております。
クラブ、チームメート、ファン・サポーターの皆様のこれまでの大きな支えに深く感謝いたします。
僕には新スタジアムで優勝という大きな夢があります。
皆様と喜びを分かち合うために、残りのシーズンを共に闘います。
このクラブと自分自身の力を最後まで信じて。
備考
12月1日(日)14:00K.O vs.北海道コンサドーレ札幌 @エディオンピースウイング広島の試合終了後、青山敏弘選手の現役引退セレモニーを行います。
最初は「本人のコメントを見て多く語ることもない。引退を発表したから語ることなんて特にない。もうずっと青山敏弘のことを語り続けてる」。そう思っていたんだけど、このコメントを何度も読み返すうちに青山敏弘という人間が我々に与えてくれた愛が重すぎて吐き出さざるを得なくなった。
たぶんこのまま自分のうちに抱えていたら良くないだろうなと思って書いてる。ただの自己満足みたいなものです。ポエムになってるので読まなくても大丈夫ですが、ACL2のチケットを買っていってくれたら幸いです。
①青山敏弘に救われたこと
青山敏弘のことを語りたいなと思って思い返してみるけれど、これだけ何年も試合を見に行っているくせにこれというエピソードは特にはないことに気付く。練習をまめに見に行けているわけでもないし、アウェイに何度も応援に行くほどコアなサポーターでもないし、その辺にいるごくごくライトなファンなので青山敏弘という人間を語れるほど何かがあるわけではない。
「青山敏弘といえば」で出てくる最初のキーワードは作陽高校だろう。
高校サッカーで誤審 10年後にMF青山含む当時の選手がOB戦
2002年11月10日、サッカーの全国高校選手権岡山県大会決勝の作陽対水島工業戦。1対1で迎えた延長3分、作陽の2年生でエースMFの青山敏弘(現サンフレッチェ広島。2014年ブラジルW杯日本代表)がペナルティエリア外からシュートを放つと、ボールは左ポストの内側を叩いてゴールネットを揺らした。それが決勝ゴールとなったはずだった。
ところが、ボールがゴール奥側のポストに当たり枠の外に転がり出てキーパーがキャッチすると、主審はなぜかノーゴールと思い込み、試合を続行させた。挙げ句、PK戦にもつれこみ、作陽は負けてしまった。
この誤審については当時ニュース等で見た記憶が朧気にあるもののそこまで注目していなかった。というのも2003年からサンフレッチェの試合をよく見るようになった程度なので(それまでもビッグアーチに行っていたけど熱心とは言えなかった)、新人の知識を得ようとすることもなかったんだろう。
最初に青山敏弘を認識したのは2006年にミハイロ・ペトロヴィッチが1-3-5-2のアンカーとして抜擢してから。当時20歳でリーグ戦出場経験がなく、しかも前年に左膝前十字靭帯断裂という大怪我をした選手の起用には驚いた。
当時は降格の危険性が絶大なシーズンで小野剛監督を解任、ボランチ/アンカーのライバルを見ると森﨑和幸はオーバートレーニング症候群で一時チームを離脱しており、復帰後も右CBとしての出場。ビルドアップを重視するミシャサッカーにおいて戸田和幸もリベロにポジションを移し、ベットは出場機会を失って後に事件も起こして退団。そんなチャンスを掴んで後にエンジンと呼ばれる青山敏弘がアンカーに君臨することになる。
青山敏弘といえば派手なロングシュートが目立つものの、持ち味はそこではないと思っている。むしろよく見ているからこそよく外すなーという印象の方があるし(もちろん遠目から撃つ以上精度が下がって当然だが)、よく走っているけど特別足が速いわけでもなく、守備も頑張るけどハンターのように狩れるわけでもない。
そんな青山敏弘の強みはアメリカンフットボールのクォーターバックのように長短組み合わせた展開力だろう。5or6トップのショットガンスタイルをとるミシャサッカーを一番体現していたのは彼に他ならない。
それでも森崎兄弟、佐藤寿人、調子乗り世代、といった派手な選手と比較するといぶし銀な選手だった。青山敏弘が名実ともにサンフレッチェ広島の中心選手となったのはサンフレッチェ広島が初優勝を果たした2012年のオフ、自ら5年契約を申し出てくれた瞬間で間違いない。
2010年以降、柏木陽介を筆頭にユース出身の選手型クラブに0円移籍で引き抜かれていくことが続いていた。プロの世界であり、サッカー界の性格上からどうしようもない…というか獲得側からしたら有望な選手が0円で買えるのだから乗り出さないわけがない(トルガイもそう)。ただ、理性では分かっていても感情で納得できないサポーターの心を救ったのは青山敏弘だった。
スポーツ選手には選手としての寿命があり、活躍できなければ活躍の機会を求めるという当たり前の欲求がある。ただ、応援する側からしたら1年でいなくなる選手を応援するのはとてもしんどい。チームを移っても応援を続ける個サポ、選手に肩入れしないドライを装う派(自分はこれ)、色んな考え方があると思うけど、共通するのはしんどいということ。
そこに(もちろん絶対ではないけど)5年いるつもりだよというメッセージを投げてくれた青山敏弘に我々は救われたんだと思う。後に同じく5年契約を結んでくれた塩谷司のことも大好きだけど、青山敏弘は一番してほしいときに一番かけてほしい声をかけてくれた。だからこれまでもこれからもサンフレッチェサポーターにとって唯一無二なんだ。
②青山敏弘のメンタリティ
青山敏弘は栄光の道を歩んできた。2012年・2013年J1リーグ連覇。2015年J1優勝の際はJリーグアウォーズにおいてMVPに選出。サンフレッチェ広島ではキャプテンを務め、CWC・日本代表でもゴールを決めてきた。
ただ、順風満帆だったかというとそうではない。2007年にはJ2降格を経験しているし(現所属で経験した選手はいなくなった)、2014年に佐藤寿人からキャプテンマークを受け取ったもののACLの過密日程もありチームは夏場に完全崩壊しており、皆川裕介の覚醒で辛くもチームを立て直したがキャプテンとしてもがき苦しんだ。
負傷禍にも悩まされ続けてきた。前述したように入団2年目に前十字靱帯を断裂。2008年の北京オリンピックに出場が期待されていたにもかかわらず、前年の最終予選で骨折による負傷離脱。翌年はJ2でのシーズンとなったことからか本選出場はかなわなかった。
2018年ロシアW杯の最終選考段階でメンバー選出されたにもかかわらず右膝の負傷で無念の辞退。2019年には森保体制となった日本代表でリーダーとしての活躍が期待されていたものの、これも右膝の違和感で離脱。
この膝の負傷は選手生命を脅かすほどだったがそこから復活を遂げて2020年~2021年で30試合以上出場しているのは驚嘆に値する。
何が彼をそこまで突き動かすのか、何故彼は折れないんだろう。これだけ怪我に悩まされているのに続けられるのになんでなんだろう。そんな疑問に答えてくれたのが今回の引退会見だった。
「誰にも負けたくない。負けたくないって思いも負けたくなかった」
これこそが青山敏弘だなとそう思う。決して清廉潔白な選手ではない。勝利に対して貪欲に、チームのために広島のために全力で戦う男なんだ。
③青山敏弘とACL
今シーズン残り試合も少なくなってきた。ホームゲームは11/3の京都戦、12/1の札幌戦、そしてACL2の東方戦(12/5)となる。
ホーム最終戦が札幌戦となっているのは個人的には広島側の希望だったんじゃないかと邪推している。札幌の監督はペトロヴィッチ。青山敏弘を抜擢し、彼のサッカー観に大きな影響を与えた人間だからだ。
もっというと本当は2023年シーズンを最後のシーズンとする可能性もあったんじゃないだろうかとすら思っている。青山敏弘はインテンシティを重視し、ハイプレスと即時奪回、撤退守備など激しい運動量と強度が求められるスキッベサッカーにおいて出場機会を減らしていた。
明らかに運動量、スピード、アジリティが不足しているシーンが見られているので当然といえば当然なのだが、スキッベ監督はビッグアーチ最終戦となるガンバ大阪戦に向けて1ヶ月前からスタメン起用を告げていた。
そして、ガンバ大阪戦は必死に食らいつく、我々が昔から応援し続けている青山敏弘の姿がそこにあった。試合終了後、新スタジアムで会いましょうという言葉を聞いてホッとしたことを覚えている。
青山敏弘本人が引退会見で語ったように、2024年が最後のシーズンとなると足立前強化部長と話し合って決めていたらしい。青山敏弘をスカウトしてきた足立さんだからこそできた最後の大仕事で、それを覆すべく1年間チャレンジを続けていたという青山敏弘もまた青山敏弘だった。
青山敏弘の願うリーグタイトルに向けて戦うシーズン終盤戦、リーグ戦で青山敏弘を起用できる展開は極めて少なくなることが予想される。神戸はそんなに甘い相手ではないし、Jリーグにそんな温いチームはいない。
そうなってくると青山敏弘のプレーを見る最後の機会はどこになるのか。札幌戦、展開次第で可能性はあるが一番可能性が高くなっているのがACL2。
サンフレッチェ広島は今年で6度目となるACLに挑戦している。
これまでの最高成績はラウンド16。今年から新しくできたACL2で現在グループステージ3戦3勝で首位に立っている。正直アウェイ・シドニー戦は相当分が悪いことが予想されるが、アウェイ2戦で理想は勝ち点3、少なくとも勝ち点1を積み上げれば最終戦へのプレッシャーは激減する。
どこかのインタビューだったかでスキッベ監督が早めにグループステージ突破を決めたいと語っていて、確かにそうなんだけどコメントで相手へのリスペクトを欠かさない御大にしては珍しいなと思っていた。ただ、「最終戦を消化試合にする」ことを早い段階から意識していたと考えれば辻褄が合う。
青山敏弘選手 現役引退会見を行いました
Q)引退を誰かに相談したか。
引退すること自体の相談はしていません。今シーズン初めに(ミヒャエル)スキッベ監督に(今シーズンで)引退することを伝えさせていただきました。スキッベ監督からは「アオにふさわしいシーズンにしたい」とおっしゃっていただき、僕も「最高のシーズンにしたい、優勝して最後のシーズンにしたい」と伝えさせていただきました。
消化試合であれば選手起用が柔軟にできる。我々サポーターが青山敏弘がピッチで躍動する姿を見れる最後の機会かもしれない。東方戦、青山敏弘が長年願っていた満員のスタジアムで送り出しませんか。彼がくれたものに対して少しでも返せるとしたらそれしかないと思うんだ。
最後の最後まで、
— サンフレッチェ広島【公式】 (@sanfrecce_SFC) October 23, 2024
偉大な紫の背番号6と共に。#ありがとう青山敏弘#sanfrecce | #シンぶちあつ! | #ACLTwo | #広島シドニー pic.twitter.com/Bq4UBrqwXn
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