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クラブのアイデンティティ

①はじめに

この話をしないわけにもいかないので。忘れないように何を考えて何を感じたのかを書き留めておこうと思って筆を執りました。

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ただ、この案件は結構書きたいことが沢山あって軽く2000~3000字を書いては消し、書いては消し。らちが明かないので、とりあえず今回なんでこんなに反発してるのかを整理することにしました。

今回、なんでこんなに燃え上がっているのか、騒いでいるのかをまとめると大きく3つくらいに分類できるんじゃないかと思っています。すなわち、

・今回のコンセプトとデザインが認められない
・これまでのチームカラーの扱いに対して積もり積もったものが噴出
・クラブのビジョンや将来に対する不安

の3つじゃないかと。1個1個見ていきます。

今回のコンセプトとデザインが酷い

まずはコンセプトを見ていきましょう。

■アウェイユニフォームコンセプト
来夏に向けて、世界中の注目が東京に集まる中、ナイキが、サンフレッチェ広島、鹿島アントラーズ、浦和レッズの3クラブ史上初の統一テーマの新アウェイユニフォームを発表しました。この統一テーマには、スポーツの祭典に向け、スポーツの魅力や楽しさ、感動、そして、幸せや平和の実現をフットボールを通じて目指すという各クラブの理念が反映さてれています。

3チーム共通のコンセプトというのがすでに意味不明ながら(アルビレックスなどの総合スポーツクラブでそれをやるのは理解できる)、デザインを見ても東京五輪を意識していることは明白です。それは理解できます。

ただし浦和レッズも、鹿島アントラーズもサンフレッチェ広島も東京とは一切関係ない土地という点を除けばの話ですが。

(追記)
カシマスタジアムと埼玉スタジアムは東京五輪の会場だから関係あるという指摘を受けました。その通りだ!広島はやっぱり関係ないけど!

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浦和、鹿島、広島が新アウェーユニを発表! 史上初の3クラブ統一テーマ | サッカーキング

また、百歩、いや一万歩譲ってチームカラーが赤系の鹿島と浦和を同一コンセプトにすることは理解ができます(納得はできないだろうけど)、しかし紫がチームカラーである広島が巻き込まれるのは意味が分かりません

ユニフォームのデザインは、日本の国旗からインスピレーションを得て、各チームオリジナルのホワイトとレッドを採用し、日本から世界に羽ばたく3チームを表現。サンフレッチェ広島は広島東洋カープのチームカラーの赤からインスパイアされたサルサレッドを採用しています。

さらにこの説明の拙さ。同一地域の別クラブのメインカラーを採用する合理性も必然性もありません。むしろ同一地域だからこそ避けるべきカラーでしょう。結婚式に白い衣装で行くようなもんじゃないですかね。たとえが正しいか分からないけど。

断っておくと、赤色が全く駄目かというとそういうわけではありません。例えばワンポイントで赤を使うのは気にならないでしょうし(ただしエンブレムを赤く囲うのはもってのほか)、平和記念ユニフォームのように限定ユニフォームとしてなら受け入れられたかもしれません。

すでに指摘されていますが、東洋工業リスペクトで赤色を採用しました!とかカープとコラボしてカラーを交換しました!とかいう理屈で、さらに前述した限定ユニフォームでやればまだ賛同は得られたのではないでしょうか。

チームカラーに対するスタンスのブレ

この点については隊長(@frecce)が簡潔に書いておられます。

ナイキのカラー採用に関する説明には長年モヤモヤしていましたし、「サンフレパープル」キャンペーンはインスタグラムを巻き込んだブランド戦略として納得がいかないまでも理解しようとしていました。

何故その頃に自分が反発しなかったのかと言われますと、サポーターはその名の通りクラブを支える存在だと自分は考えているからです。

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したがって基本的にはクラブの言動を理解し、クラブの姿勢に賛同し、クラブの活動を手伝い、クラブを肯定する存在なのではないかと思います。

だからこそインペリアルパープルだのヴェノムグリーンだの朱色だのと変なカラーリングであっても自分自身を納得させて受け入れ、サンフレパープルについてもむしろ宣伝しないといけないと気を遣っていました。

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ただし、それはクラブがやっていることが正しい(正しそうな)場合の話。クラブを運営するのもまた人間ですし、クラブには歴史、環境、バックグラウンドがあります。それを踏みにじることは到底容認できません。

今回の案件でそのギリギリのラインを踏み越えてきたためこれまでの積もり積もったものと合わせて噴出した部分は正直あります。

クラブのビジョンや将来に対する不安

そういった理由から怒っているのですが、ことはそう単純な問題ではありません。わざわざ別のカラーを採用するというのはクラブカラーの変更に等しい事態だと思うのですが、それはとても大きな判断です。なぜならば、30年近く紫のユニフォームで戦ってきて、歌の中にも取り入れてきた、その歴史を否定するものだから。

その一方でクラブカラーを含めたクラブのアイデンティティーを変更せざるを得ない事態というのは生じうるものです。

その一つがリブランディングの観点から新しいオーナーがアイデンティティを変更するというもの。古くはヴィッセル神戸、最近では町田ゼルビアがその問題に直面しました。

ではサンフレッチェはどうでしょうか。

前述したサンフレパープルなどの企画を打ち出しているのはブランド戦略の迷走を感じますし、今回の赤を取り入れることにどういった意図があるのか理解できかねます。

むしろ今回のユニフォームデザインを採用したことによってクラブに対する不信感が強くなり、スポンサーたるNIKE社に対するヘイトが向いたのは極めて愚かなことと言わざるを得ません。

じゃあ何が理由かと考えていくと、担当者がめっちゃ馬鹿だったという可能性を排除すれば、NIKE社の都合以外思い当たるところがないわけです。

④アイデンティティVS.経営

NIKE社の都合というとさらに怒りのボルテージが上がりそうですが、現実的な話をするとスポンサーの意向は無視できるものではありません。

アイデンティティというのは経営の合理性とは真逆に位置することもあります。以前も書きましたが水戸ホーリーホックのエンブレムの件は経営の合理性とアイデンティティとの対立が明確に現れた一件でした。

アイデンティティを守るために経営にとって超重要なスポンサー料を捨てるという判断は弱小クラブである広島にはまだできないかもしれません。それこそ新スタジアムによって経営の柱を作れば話は変わるかもしれませんが。

他方で、アイデンティティは一朝一夕に生まれるものではありません。

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東洋工業時代の方々、Jリーグ加盟時に尽力された方、スポンサー・株主、そしてトップはもちろんユース等に関わってきた選手・スタッフ、そして応援してきた人たち、サンフレッチェはいろんな人たちによって形作られてきた存在であるはずなのです。それがアイデンティティを構築している。

そういったアイデンティティがあるからこそサンフレッチェ広島は「広島のクラブである」というアイデンティティを持ち、「紫をチームカラーとするクラブ」というアイデンティティを持っているのです。

チームカラーを毀損するということは、そういったアイデンティティを毀損することであり、その行き着く先はどこなのかという不安があるのです。

もちろん時代の流れに置いていかれないよう変革することは重要です。選手編成についても納得いかないことは多々ありますが、血の入れ替えを断行した結果、いくつもの強豪チームが苦しんだ(苦しんでいる)世代交代を見事に果たしたのが2019年なのでしょう。

たしかに改革するというのであれば理解もできるでしょう。しかしそういった意識で今回のデザインとなったようには感じられません。少なくともそういった説明は一言も耳にしていません。

それなのにこんな致命的な意思決定をしてしまう。そこが今のクラブの抱えている大きな問題でもあると思うのです。

繰り返しになりますがサポーターは基本的に、原則としてクラブを支えていく存在です。そのクラブが訳の分からない方向にずっこけようとしていたら、それを適切に批判し、真意を問いただし、場合によっては軌道を修正して貰えるよう働きかけることも大事なんじゃないかなと思います。

サポーターでは知り得ない事情もあるかもしれません。我々は邪魔をしたいわけじゃないです。それでもおかしいことが何度も続くようならおかしいと言えるような健全な関係でありたいと思います。

サポーターズカンファレンスまで色々と考えを深めておこう。

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