ちょっと気になったデザイン 2024年3月
こんにちは、ちょっと株式会社の久保田です。
寒さも和らぎ、花粉は飛び回り、すっかり春めいてきました。
街中の広告も明るい色が増えてきて、桜色に染まる並木道と相まってカラフルなシーズンがやってきました。
今月も気になったデザインをピックアップしてみます。
SOMPO美術館『北欧の神秘』
初見からタイトルロゴの面白さに惹かれました。(サイトはこちら)
メインになる「北欧の神秘」は力強い太めのタイポグラフィ、それを受けるサブ要素は極細でシャープな書体を使って構成されています。
英文を回転させているのも面白いです。
メインのロゴの太い部分、これ少しコミカルなフォルムになっていますが、そこに極めて細い直線を組み合わせることで、どこか謎めいた神秘的なデザインに仕上がっています。
なるほど面白い!って唸っちゃいます。
サブの部分はシャープな印象にしていて、THE MAGIC NORTHの英文サブタイトルは回転させてます。
行間を広めに取っているのは和文サブタイトルと揃えるためと推察できますが、この広い空間も良いアクセントになっています。
遠くにあって、自然が豊かで、ものすごく遠い国。
そんなイメージが湧きそうな「北欧」ってワードと、興味がそそられる「神秘」ってワードの組み合わせ。
このタイトルでロゴを作るなら繊細な書体でミステリアスな雰囲気を感じさせるデザインにするのが王道。
メイン部分は細めの明朝体、サブ部分は文字サイズが小さいので可読性を考慮してゴシック体を使うのが普通の発想じゃないかと。
しかしこのロゴデザインは普通じゃない。むしろ逆。
ガツンとパワフルな印象を持たせながら、ディティールの演出によって神秘的なイメージに落とし込めています。おそらく狙い通りでしょう。
大胆な発想と計算されたデザイン処理。完成度が高い!面白いです!!
京都水族館『京都ペンギン相関図2024』
3分くらいでなんとなく分かって、1時間くらい見ていられる!
このコピー通りなんですよね。このコピーは秀逸。
この相関図、そしてサイト自体は手が込んでるとは言い難い・・・ですが、見ていて楽しい。本当に楽しい。
水族館に展示されるパネル用のデザインがサイトで画像として公開されています。
これだけの規模の相関図って他に例がありません。日本で最も大きな相関図かもしれない・・・って思ってます。
ペンギンと飼育員さんの多さに驚きますが、それらを複雑に繋いでいる線が圧倒的!
あまりに複雑すぎて見る方も大変。「1時間くらい見ていられる!」ではなくて「全部見るのに1時間かかる!」です。それくらいのボリューム。
これだけの情報量を1枚にまとめるのは至難の業だと思います。
親しみを持たせる手書きフォントを使った説明、それぞれの関係性を色と線の種類で分けていてアイコンで補完、実際のペンギンを見分けるためのバンド色まで記載。
入り組んだ情報を少しでも見やすくするための工夫が施されていますが、それにしても情報量が凄すぎて・・・
これを作るって考えると気が遠くなりそうです。
情報を整理するだけでも大変、パズルのように試行錯誤を繰り返しながら配置をしていき、線や文字が重ならないようにレイアウトする。
しかも売り上げが出る販売物ではなく、来場者(閲覧者)を楽しませるために作られています。
ホッコリする内容に反して、作り出す過程には想像を絶する労力があるはずです。ファビコンの設定が漏れていてWPアイコンになっているのが気になりますが許容範囲。
これに携わっているスタッフ陣の情熱と労力には敬意しかありません。
キリンビール新ブランドのプロモーション
キリンビールが17年ぶりに新ブランドをリリースするとのことで話題になっています。
新商品ドカドカ出してるのに17年ぶり?って思い調べると、発泡酒やクラフトビールを除いて正真正銘のビールとしては17年ぶりらしく、その17年前の『キリン ザ・ゴールド』は黒歴史になっていたり・・・
大々的なプロモーション展開されていて、至るところで目にしますね。
発売・発表は来週。(本投稿は3/29にアップしています)
商品名を伏せておき、そのネーミングを当てるキャンペーンまで実施しています。
事前情報を全く出さないプロモーションは、『THE FIRST SLUMDUNK』や『君たちはどう生きるか』が大ヒットしたように、期待値を煽って話題性を高めながら、リリース直後にSNSでバズらせる手法として流行りつつありますね。
逆に期待外れだった際の反動は大きくなるので諸刃の剣です。
この情報が伏せられたプロモーションで唯一の情報と言えるのがカラーリング。
ティファニーブルーよりも少し濃いめのターコイズ。古い言い方だと浅葱色。カラーコードは#00B2C4。めちゃくちゃキレイで誰からも好まれる色じゃないでしょうか。
ん? 弊社のコーポレートカラーにも近いぞ・・・
この美しい印象を持つカラーを全面に押し出したプロモーションを展開しています。
カラーリングでゴリ押しする展開はよくありますが、食料品/ドリンク系に限ればかなり珍しいプロモーションな気がしました。
いよいよ来週、その全貌が明らかになります。
クイズになっているネーミングは『ザ・ゴールド』の前例があるので、カラーリングに絡めた商品名は避けていると予想。
みすず学苑の例の広告
この時期になると東京埼玉エリアの電車内や駅構内で必ず出会います。
今や初春の風物詩って言えるかもしれない。
しかしいつ見ても強いビジュアル。強すぎる!
この広告シリーズはネタにされがちですが、大規模とは言えない学習塾が高い知名度を獲得できている結果から、凄まじい広告効果を発揮していることが分かります。
そもそもネタにされている、ネタになっているところからして別格。
とにかく知名度を高めて興味を持ってもらう。それがコンセプトになっていると思われます。
このシュールテイストのビジュアルだと怪しさ=不信感に繋がってしまう可能性も低くありませんが、それ以上に知名度獲得を優先したものだと思われます。
結果、長年続けてきたこともあって相当な知名度は獲得に成功しています。完全に戦略勝ち。
コンセプトは全く違いますが、「きぬた歯科」の広告のように戦略を持ったビジュアル展開の成功例の一つですね。
今年はこれに加えてタレント起用もされています。
このインパクトに負けないようなタレントでありながら卒業生っていうファクト付き。極めて絶妙なキャスティングです。
そしてそのあまりにも強すぎるビジュアルだけと侮るなかれ、可読性/視認性に配慮したカラーリングや丁寧な文字組みなど、実はしっかりきっちり作り込まれています。
世間からは笑われているかもしれませんが、その戦略と結果で見ると絶対に笑えない怒涛の広告。
・・・
以上、2024年3月の気になったデザインでした!
2024年に入ってからAAAタイトルが連続リリースされているゲーム系からもピックアップしようとプレイしまくっていましたが、どのタイトルも面白すぎてデザインを見る余裕がありませんでした。反省。
春日一番のありあまる富エンディングは心に刺さったし、エアリスとティファのあざとさの極みにもやられまくったし、そしてユニコーンオーバーロードとペルソナ3が積まれたまま・・・
それでは。