【超速GP】TATB3レイアウトの作り方
皆さんこんにちは、アンリミニ四駆ステーション店主のアンリです。今回は好評をいただいた第3回タイムアタックチームバトルのコースレイアウトができるまでをお話したいと思います。それではいきましょう。
①TATB3のレイアウト
まずはTATB3で使用したレイアウトを見ていきましょう。
このレイアウトはツイッターでも何度かアナウンスしていましたが「フェイク」がテーマでした。なにがフェイクなのかというと、一見すると立体コースに見えて、じつはコースの特性としてはフラットコースだったということです。
具体的には白矢印のレイアウトの外側のセクションが、ある速度域まで到達するとバウンドのタイミングが合ってすべてエアターンで抜けられるようになっていました。スロープカーブなんかは本来であれば、かなり減速をかけなければ抜けられない厄介なセクションです。それがかなりの速度で抜けられるので、初めて走り抜けたときは皆さん驚いたかもしれません。
この視覚から得る情報と実際に走ったときの特性が違うというフェイクが見破れるかが攻略の大きなポイントでした。
②構想のスタート
このレイアウトには構想のベースとなるものがありました。それが6月5日(金)にアンリミニ四駆ステーションで公開した「HENRYサーキット5」です。
このレイアウトをパッと見たときに気がつく人もいるでしょう。白矢印のセクションがTATB3のレイアウトと同じなのです。このセクションをベースにレイアウト制作がスタートしました。
スロープカーブをエアターンで抜けるというギミック自体はもっと以前から使っていましたが、テーブルトップ2つとスロープ複合を置くことで想定以上の速度域で抜けられると発見したのはこのレイアウトからでした。
さらにスロープ複合とドラゴンバックで跳ねながらドラゴンジャンプに入ることでかなりの速度域でも着地3枚を抜けられると発見したことも大きかったです。ここはスピードとパワー値が微妙に異なるセクションを置くことでセッティングを難しくさせる意図で作ったセクションでした。これは偶然の産物です。
この一見すると立体テクニカルに見える2つのセクションがフラットだという”フェイクギミック”を発見をした瞬間に「TATB3の構想はこれしかない」と思いました。
③ギミックの3つの集合
面白い”フェイクギミック”を発見はしましたが、その2つのギミックでそのままレイアウトを作ってもただの簡単なフラットコースです。ここで僕がレイアウト作りで大事にしているギミックの3つの集合があります。
簡単に説明するとこんな感じです。3つのギミック要素が絡むことで共通部分の正解セッティングがより複雑で、より範囲が狭いものになるというイメージです。それぞれのギミックが干渉し合うようなものであれば、よりセッティングに求められる繊細さは高まります。
このときの僕はスロープカーブを抜けるギミックとドラゴンジャンプを抜けるギミックの2つを得ていました。ここで3つ目のギミックを加えることでレイアウトの印象をガラッと変えることにしました。
④3つ目のギミック
そこで僕が3つ目のギミックとして加えたのがこちら↓
”スロープカーブロング”です。僕の手元にある2つのギミックはある程度の速度域を出すことでクリアできるものです。その”ある程度”という速度域が、このままでは結構広い状態です。そこで3つ目でその速度域を制限するギミックを加えることにしました。
スロープカーブロングは短いスロープカーブより速度を出して抜けられるものの、それでもそれなりに速度を抑えなければCOしてしまいます。だからベーシックな攻略法はリヤステーでブレーキをかけ、速度を落として曲がります。これによりかなりの速度制限をかけることが可能になります。
ただ、最初の2つのギミックは速度を出さなければ成立しないギミック。あまり強いブレーキを求めると2つのギミックが死んでしまいます。それでは本末転倒です。ギミックは3つの集合でなければいけません。
⑤ギミックを干渉させる
そこでスロープカーブロングにひと工夫しました。それが手前に”オフロードレーン”を1枚置くことです。
オフロードレーンがあることでオフロード特性がない、あるいは低いマシンは減速してしまいます。しかしこの1枚のオフロードには減速を利用して強いブレーキをかけなくてもスロープカーブを曲がらせる意図があります。
ただ、オフロードには”芝”と”ダート”の2つがあります。芝はダートよりも減速が強い特性があり、ダートは減速は弱めで薄くバウンドする特性があります。減速の強い芝にするとそこまで速度域を落さず、強いブレーキをかけなくてもスロープカーブを曲がれてしまいます。
そこで減速の弱いダートを選択することで、その先のスロープカーブでエアターンをするために必要な速度域を保ちつつ、スロープカーブロングを強いブレーキかけずに曲がるために速度域自体をそこそこ落とす必要性が生まれます。しかもタイムを詰めるためにはギリギリの速度域を見つけなければいけません。
これで3項で述べた”ギミックが干渉し合う”という状態の3つ目のギミックのできあがりです。
⑥3つのギミックを繋げる
3つのメインとなるギミックが決まったところで、それぞれを繋げてコースとして完成させます。
ウェーブや45度バンクはパーツ選びやパワー値、節電などの調整にやや影響を与える意図(本当に微細ですが)があり、スロープロングはレイアウト全体を立体に見せるためのフェイク要因です。
ここでダートをまた1枚置いていることに意味があります。じつはこれがないとスロープ後のカーブで高確率でCOします。なんせこの前にあるスロープカーブロングをブレーキなし、あるいは軽いブレーキでクリアしてきているわけですから。レイアウトの主役はここではないので、難易度を落とす必要があります。
短いスロープにして着地枚数を増やす選択肢もありましたが、ダートにすることでパワー値や節電に干渉させることができます。パワー値が低かったり、電池がタレると”とりもち”状態になります。
そして上部のスロープロングもまたフェイク要因です。
前後にストレート2枚置くことで全体の速度域の中でエアターンが決まるバランスになりました。ここは何度か試走することで見つけていきました。
⑦レイアウトの完成
これで長いストレートセクションが一つもなく、全体的に立体に見えるフラットコースが完成しました。ただ、最後にもう一つ。じつはスタート位置はここ以外に選択肢がありません。
ポイントはドラゴンバックの直後に置いてあること。ここにあることで3周目のDJ後のカーブをなくしています。このレイアウトを成立させるためにはそれが必要でした。
ここ以外の場所にスタートを置き、3周目にDJからのカーブを曲がる必要があるとバウンドのタイミングが合わずCOします。このレイアウトに必要な速度域では2レーンと3レーンでしかバウンドが合いません。
DJの手前に置いても最初のDJからのカーブを曲がるためにスピードとパワーを調整すると、全体的に必要な速度域が出せなくなります。
このようにそれぞれのコースパーツがまるでパズルのようにピタッとハマっているのが僕のレイアウトの理想です。そのハマり具合は実際にTATB3で走り込んでもらったレーサーの方々に一番感じてもらえたのではないかと思います。
以上がTATB3でのレイアウト制作の舞台裏でした。だいたいレイアウト作るときはこんなプロセスで作っているので、各チームのマーシャルさんの参考になればと思います。