犬吠埼とロカ岬,銚子とポルトガル
銚子の犬吠埼は,ポルトガルのロカ岬と姉妹岬です。
犬吠埼とロカ岬はそれぞれユーラシア大陸の東端と西端で,緯度もほぼ同じです(犬吠埼は北緯35度42分,ロカ岬は北緯38度47分)。
犬吠埼灯台前の広場には,高さ2メートルの四角錐台の記念碑があります。
碑には,ポルトガル産のローズオーロラと呼ばれる大理石が使われています。その石に青で書かれた碑文は,潮風のためか消えかかって読みづらくなっています。
そうなると,非公認銚子観光大使としては,やはりロカ岬も訪れなければなりません。
というわけで,行ってきました。
銚子は東京から2~3時間の距離ですが,ロカ岬も首都リスボンから2~3時間です。
リスボンが快晴でも,ロカ岬は天候が荒れているということも多くあります。強風が吹き荒れているので,夏でも服を着込まなければ風邪を引きそうなほどの寒さです。
海抜165メートルの断崖絶壁の上にある,白と赤の美しい灯台は,1772年に建てられました。
その灯台を大西洋と空の青,丘の緑が囲んでいて,まさに絶景です。
犬吠埼は,灯台前に犬吠テラステラスがあり,周囲に温泉やホテル・旅館もあって,ゆったりと過ごすことができます。
しかしロカ岬は,灯台と碑,そして小さな観光案内所・レストラン・土産物屋が1つずつある他には,何もありません。
様々な国からやってきた観光客たちは,寒さに絶叫を上げながらロカ岬の碑の前で記念撮影をして,そしてすぐに帰って行きます。
ロカ岬にそびえ立つ碑には,「ここに地終わり,海始まる」と刻まれています。
これは,カモンイスの叙述詩「ウズ・ルジアダス」第3歌第20連の一節です。大航海時代におけるポルトガルの海外進出と栄光を描いた作品です。
16世紀の詩人・カモンイスは,ポルトガルでは知らない人はいないほどの国民的存在です。命日の6月10日は,「ポルトガルの日」として祝日になっています。
「ここに地終わり海始まる」は,宮本輝の小説や鈴木雅之の曲のタイトルにもあります。
地の果てからまだ見ぬ新しい世界へと出航していく心情は,今もなお,多くの人々の心を惹き付けます。
地終わり海始まるロカ岬と,海終わり地始まる犬吠埼。
銚子がこの遥か彼方の美しい景色に導いてくれたのが,本当に幸せです。
なお,犬吠埼にはロカ岬との友好記念碑がありますが,ロカ岬には犬吠埼の碑はありませんでした。
銚子から片思いのようではありますが(笑),「何もない」のが地の果て・ロカ岬の良さですね。
銚子には,灯台前の碑の他にもう一カ所,ポルトガルを感じられる場所があります。
銚子電鉄の犬吠駅です。
1990(平成2)年,銚子電鉄は駅を世界各国の建物のように改築しました(この詳細はまた改めて記事に書こうと思っています)。
このうち犬吠駅はポルトガル風の駅舎となり,オレンジの瓦やアズレージョ(ポルトガルの教会・宮殿などで使われていた白地の青の色柄タイル)が使われました。
当初は駅舎の正面ファサード中央上部にも青い装飾タイルが敷き詰められていましたが,徐々に剥離・落下してしまったため,2013(平成25)年にタイルが撤去され,ベージュの外壁パネルに差し替えられています(河村英和「日本における『スペイン風・南欧風』建築への偏愛について」)。
以前,銚子のいわしについて記事を書きましたが,ポルトガルはいわしが非常に有名という点でも,銚子と共通しています。
ポルトガルでは昔からいわしを炭で焼いて食べる伝統があります。首都リスボンでは毎年6月13日に,いわゆる「いわし祭り」で大いに盛り上がるそうです。
私は今年は銚子で入梅いわしを食べられなかったのですが,その分,ポルトガルのいわしの美味さが,体と心にじんわりと染み入りました。
大航海時代の船旅と比べれば,現代は飛行機で早く行けるようになったとはいえ,それでも日本から片道で1日がかりのポルトガル。
その遠くのポルトガルとの繋がりを,皆さんもぜひ,近くの銚子で感じてみてください。
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