銚子は春キャベツの生産量日本一
銚子電鉄の犬吠駅から「地球の丸く見える丘展望館」に向かう近道があります。
その道で出会える,目の前のキャベツ畑の緑と,その先の海や空の青の取り合わせには,何度通ってもいつも感動します。
銚子といえば漁業が有名ですが,実は農業もとても盛んです。
特に,春キャベツは銚子が生産量日本一なのです。
キャベツは,収穫時期によって,夏秋キャベツ,冬キャベツ,春キャベツと,大きく3つに分かれます。
夏秋キャベツは,夏から初秋(7月~10月)に収穫するキャベツです。ビタミンCを一番多く含んでいて,北海道・群馬・長野からの出荷が多く,群馬県嬬恋村が圧倒的な生産量を誇っています。
冬キャベツは,晩秋から冬(11月~3月)に収穫するキャベツです。寒玉キャベツとも呼ばれます。葉が固く締まっていて煮崩れしないので,鍋料理や煮込み料理に向いています。愛知県の田原市や豊橋市の生産量が多いですが,銚子市も第3位です。
そして,春キャベツは,春(3月~5月)に収穫するキャベツです。新キャベツとも呼ばれます。葉は柔らかく,巻も緩やかで,とても甘みがあります。
この春キャベツの生産量の日本一が,銚子です。
犬吠埼灯台にちなんで,灯台キャベツの名称で親しまれています。
江戸時代にオランダから長崎に伝えられたキャベツは,当初,食用よりも観賞用として栽培されていました。
食用としてキャベツが本格的に栽培されるようになったのは,明治時代に入ってからのことです(相馬暁「新装版野菜学入門」133頁)。
そして銚子でキャベツ栽培が始まったのは,それからさらに後の,戦後のことでした。
もともと銚子では,さつまいもと麦が栽培されていました。
しかし,さつまいもは値段の変動が激しく,麦も「枯熟れ」(成熟期前に葉が急速に枯れ上がる現象)で生産が不安定でした。
そこで,1953(昭和28)年に銚子の青年たちの研究会が検討を重ねた結果,キャベツが銚子に一番向いているとわかり,翌年から栽培が開始されました。
しかし,当時はキャベツ栽培のノウハウがない中での,大変なスタートでした。1984(昭和59)年の「灯台キャベツ繁栄秘録」にも,「当時の先覚者の苦労と努力は言語に絶するものがあった」と書かれています。
その後,キャベツが安全かつ有利な作物だと認識されたことで,栽培面積は急速に伸び,1957(昭和32)年に「灯台印」蔬菜(そさい)出荷組合連合会が生まれて,今の灯台キャベツに繋がっていったのです。
今,銚子の農業について積極的に情報発信している,素敵な方々がいらっしゃいます。
農業体験ができる坂尾英彦さんのHennery Farmは,「農業の大変さや楽しさ,喜びを農業体験を通じて感じ取って頂きたい」「自分で収穫した野菜を産地でしか食べれない新鮮な食べ方,郷土の食べ方で食べて頂きたい」,そして「これからの時代を生きていく子供達,若い世代に農業を知ってもらうきっかけに”アフロきゃべつ”がなってくれることを願っています」という坂尾さんの熱い思いが,ウェブサイトに記されています。
HIPHOPのDJという経歴をもつ坂尾さん。ご自身の髪型がネーミングの由来となっている「アフロきゃべつ」や「アフロコーン」を始め,坂尾さんの農業への熱意と様々な新しい取組みは,いつも各メディアでよく取り上げられています。
ウッド村ファームの木村宏之さん・晃子さんご夫妻は,トマトをモチーフしたリコさんや,キャベツをモチーフにしたカヴォロ君などのオリジナルキャラクターで,銚子の農業PRを積極的に展開しています。
リコさんは,「全宇宙の野菜を狙うインセクターを追ってO-831星雲から来たオヤサイ星人」の高校1年生という設定で,なんと2019年に銚子市の特別観光大使に任命されています。
非公認の観光大使を名乗っている私も早く公認の地位に昇格できるよう,引き続き精進したいと思います。
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