たぬき掲示板に対する開示・削除請求
「たぬき掲示板」には、「V系初代たぬきの掲示板」「V系こたぬき掲示板」「V系老たぬき」「雑談たぬき」など複数の掲示板があります。たぬき掲示板に誹謗中傷が書き込まれた場合の対応として、たぬき掲示板に対する開示請求、削除請求について、専門弁護士が解説します。
「たぬき掲示板」とは
「たぬき掲示板」には、「V系初代たぬきの掲示板」「V系こたぬき掲示板」「V系老たぬき」「雑談たぬき」など複数の掲示板があります。
「V系」とは「ヴィジアル系」の略で、「ヴィジアル系」とは、日本のロックバンド・ミュージシャンの様式のひとつで、派手なメイクや髪型、ファッションを特徴とするバンドのことです。
「たぬき掲示板」はV系のバンギャ(バンドギャル=V系の音楽を好む女子)のコミュニティサービスです。
上記のとおり、「たぬき掲示板」はV系のバンギャのコミュニティサービスですが、「V系」以外の話題については、「雑談たぬき」で投稿することになっています。なお、「たぬき掲示板」は18歳未満の利用は禁止されており、中高生のバンギャは「V系こたぬき掲示板」を利用することになります。
「たぬき掲示板」を利用する際の注意点
「たぬき掲示板」は多くの人々が気軽に意見や情報を共有する場として広く利用されています。しかし、その匿名性はいくつかのリスクとも密接に関連しています。
偽情報の拡散
匿名性が保証されていることで、ユーザーは偽情報や誤情報を拡散する場合もあります。このような情報が一般に広まると、社会的な混乱や不安を引き起こす可能性があります。
ネットいじめ・誹謗中傷
「たぬき掲示板」では、個人を特定できない状況下で他人を攻撃するケースがしばしば見られます。このような行動は、被害者に精神的なダメージを与えるだけでなく、場合によってはその後の人生にも影響を及ぼす可能性があります。
個人情報の漏洩
匿名であっても、一定数の投稿を通じて個人を特定できるような情報が漏れる場合があります。このような情報が悪意を持った第三者によって利用されると、ストーキングや詐欺などの犯罪につながることもあります。
過度な極端な意見
匿名性は人々に自由な発言を促す一方で、それが過度な極端な意見を生む土壌にもなりえます。このような極端な意見が多くなると、健全な議論が難しくなる場合もあります。
無責任な行動
匿名性が高いと、人々は自分の発言や行動に対する責任を感じにくくなる傾向があります。その結果、攻撃的な言動や偏見、差別につながる発言が増える可能性があります。
「たぬき掲示板」を利用する際は、以上のようなリスクを十分に理解し、自分自身の言動に責任を持つことが重要です。また、信頼性の確認が難しい情報に対しては批判的な目を持つこと、そして自分自身が健全なネットコミュニティの形成に貢献するよう心がけることが求められます。
「たぬき掲示板」への発信者情報開示請求
発信者情報開示請求は、非訟事件である発信者情報開示命令申立てによる対応が原則となります。「たぬき掲示板」の管理者は、提供命令が発令されれば、アクセスプロバイダを開示する運用を行っています。
アクセスプロバイダが開示された場合は、当該アクセスプロバイダに対して、発信者情報開示命令申立てることになります。
開示決定が出された場合は、アクセスプロバイダから氏名、住所等の契約者情報が開示されます。
たぬピク事件(たぬきの掲示板)
たぬピクとは、
私が担当した事件ですが、「たぬピク事件」(東京地判平成31年2月28日・裁判所ウェブサイト)を紹介します。
「V系たぬきの掲示板」という匿名掲示板に画像を投稿するにあたり、「たぬピク」というアップローダーを利用するシステムになっており、「up@vpic(省略)」宛てに画像を添付したメールを送信すると、当該画像がインターネット上にアップロードされたURLが、送信元のメールアドレス宛てに返信され、当該URLを掲示板に投稿すると、画像が表示されるシステムになっています。
本件では、投稿者が投稿した画像は、原告が著作権を有する画像でした。
投稿者が、当該URLを掲示板に投稿する行為は、URLを記載したに過ぎず、リンクを貼る行為なので、著作権侵害には該当しないとも思われます。しかし、裁判所は、上記「たぬピク」によりインターネット上にアップロードされたURLが、送信元のメールアドレス宛てに返信された時間と、当該URLを掲示板に投稿した時間が近接していること、当該URLを第三者が投稿した可能性は低いことなどを理由として、著作権侵害を認めました。
リンクは著作権侵害とならない
リンクを貼る行為は、著作権侵害にはならないとされています。ですから、皆さんが、様々なリンクを貼って、SNSなどのインターネットを楽むことができるのです。
そうすると、たぬピクは画像URLを貼るだけですので、まさにリンクを貼る行為にすぎず、他人の著作権を侵害する画像がたぬきの掲示板に投稿されたとしても、著作権侵害とはならず、発信者情報開示請求が認められないか否かが問題となった事件が「たぬピク事件」(東京地判平成31年2月28日)です。この裁判は、私が担当した裁判ですが、著作権法でリンクの問題を検討する上では、よく取り上げられる裁判例です。
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/514/088514_hanrei.pdf
東京地裁は、画像URLが送信された日時と、掲示板に画像が投稿された日時がかなり近かったことから、たぬピクに画像を送信して画像URLを入手した人物と、画像URLを掲示板に投稿した人物は同一人物であると認められるとして、一般的な場合とは異なり、リンクを貼り付けた行為についても著作権侵害が成立すると判断しました。