偏愛食品#12:トマトジュース愛飲同盟(93/1000)
ここのところ週末は毎朝トマトジュースを飲んでいる。
健康に気を遣って、ではなくて、好きだから。ただそれだけ。
思えば中学生のころかな、トマトジュースを意識したのは。
というか意識したのは自分自身。
過剰な自意識。
なんかほら、自分は他人とはちょっと違うぜって思いたい(というか思われたい)、そんなお年頃があるじゃないですか。
その気持ちをまっとうな努力に振り向けていれば、今頃はひとかどの人物になってノーベル賞を取ったりしたんだろうけれども。
まっとうな努力を怠った人が他人と違うアピールをするには、なにかものに頼るとカンタン(な気がする)。
鉛筆をHBじゃなくてFにするとか。
給食のマーガリンが入っている箱を無闇に集めるとか。
Lv50の名刀 斬鉄丸を持っているとか(目下の自慢)。
で、中学生のワタクシは飲み物に目を付けたんですね。
みんな部活が終わってコーラをぐびぐび飲んでいる。炭酸のしゅわしゅわは堪えられん旨さだよなーげふ。とか言って。
もちろん好きだよ、コーラ。
でもそれじゃみんなの中に埋没してしまうじゃないか。
アイデンティティクライシス!
当時コンビニなんてコンビニエントなものはなかったので、飲料を入手する簡便な手段は自動販売機。
しかしまださほど大きなものではなく、横1列にせいぜい10種類ほどが並んでいるくらい。
コーラ、コーラ、ファンタ、スプライトあるいはマウンテンデュー、とかそういうラインナップなんですね。ほぼ炭酸。
あ、さらに付け加えれば、水やお茶がお金を出して買う飲料と認知されるのは、はるか後のことなので、なんらかの甘味がついているものが普通でした。炭酸じゃなければオレンジジュースとかアップルジュースとか。
子どもじゃないんだから(子どもだよ!)甘いものなんて飲めないね、ケッ。なんて反抗心、じゃなくて見栄をはった少年の目に留まったのがトマトジュースでした。
特段好きなわけでもなかったけど、かといって憎しみを抱くほど嫌いなわけでもない。ちょっと珍しいし、自販機によっては入っていない場合もある。
これだよ、これ。
ぼくをそんじょそこらにいる世間一般の中学生とは一線を画す存在にするための小道具。
そう、そのときにはもう飲料ではなく、そういう意味合いのものとなっているわけです。ばかですね。
「あーあぢいあぢい。コーラコーラ」
「おれもおれも」
「お、一口くれよ」
「おれが最初に飲んでからなごくごくごくごく」
「あー、お前ぜんっぜん残ってないじゃん!」
「ばーか、お前も自分で買えよ」
なんてやりとりを後目に、トマトジュースを買う少年。
「えー、お前押し間違ったの?」
「トマトジュース、ヘンじゃねえ?」
「いや、いいんだよ、これで。なんか甘くないものが飲みたくてさ」
一同「ギョヘー」
いやギョヘーはいいけど、別にそれ「すごいね、君って」なんて意味じゃないから。
と、分かるのはオトナ。
ばかな子どもにはギョヘーが称賛に聞こえるわけですよ。中3なのに。
そうして得意気にトマジュー(すでに呼称は省略形)のプルトップをぷちんと開けて。
なんだろう、そういう経緯で口にしたものだけど、最初からちゃんと飲めたし、もっというと「あれ、おいしいな」と思った。
ウマが合ったんだな、トマジュー。
それからはばかの一つ覚え。
「オレ、トマジュー」
「ああ、お前それ好きだもんな」
と、いとも簡単に日常的な風景となり、ちょっと違うものを飲む知的なヤツという認識は誰の中にも芽生えませんでした。
ま、あたりまえか。
ところがそういう不純な動機で付き合い始めたものの、なんか好きだよ君のことが、というぬるい愛情を抱き続けたんですね、トマジューに。
オトナになって、飲み物に承認欲求を付託する必要(というかムリだからそもそも)もなく、好きなものを好きな時に好きなだけ飲めるようになっても、たいてい冷蔵庫には常備しています。
となると今度は「理想のトマジュー」を探すようになるんですね。
無塩で濃厚な味のものを探し探し求めて、ひとり、ひとりさまよえば。
その愛の遍歴はお話するほどのものではないので割愛しますが、この夏、ついにこの人こそ! というトマジューに出会ったのです。
それが
というもの。
ある日、FBのタイムラインにこっそり顔を出したこの人。
どうにも気になって調べてみたところ、通販専門なんだって。
1.厳選したこだわりの高リコピントマト使用!
2.夏のわずかな旬を見極めて一気に収穫!
3.おいしさの決め手は、ゆるしぼり製法!
と、特徴すべてに「!」エクスクラメーションを付けるとは、よほどの自信とみた。
気になりますよね?
ならない?
うーん、私はなるの!
だって中学生の時から育んできた大切な気持ちだから。
ということでオトナだから遠慮なく注文するわけです。
送料無料になるならと2ケース頼んだもんだから、60本が家にどーんと届きましたよ、しめしめ。
一口飲むと、トマトの甘味と酸味のほどよいバランス。
こりゃ旨い。
のに、家族は誰一人賛同しません。
好きじゃないとまで言うんですよ。
中学のころ何やってたんだ! と思うものの、時すでに遅し。
やむなく大好きなトマトジュースを週末ごとに飲んでいる、というわけです。
最近、キンミヤで割って飲むという夜のオトナバージョンも開発したので、さらに付き合いは深くなっております。
そういう幸せな生活を送っていたら、カゴメが「だんなさん、こういうジュースもありますぜ」とか目配せしてきてですね、つい注文したのは
これも、ザ・桃! な味わいでコクがあっておいしいジュースでーす。
とまあ、オトナは人の目を気にすることなく、好きな物が飲めて楽しいよ、という言わでもがなのご報告でありました。
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