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続きのない話#56:セレンディピティよ、まわれ!(266/1000)

#7days #7bookcovers ではありません。まぎわらしいね。
偶然の神様の話をするよ、今回は。

さっきから、まるで校舎をたてにゆさぶるばかりに雨がふっている。風もでてきたらしく、校庭のへりの、せの高い楊の木が、重たげなみどりの髪をゆさゆさ大きく乱している。

そんな魅力的な語りだしで始まる物語が「光車よ、まわれ!」です。
あ、「光車」は「ひかりぐるま」と読みますよ。

もう20年ちかくお付き合いをしている作家、松原秀行さんが、大好きな話だとどこかでお書きになっていた。
タイトルがいいですよねえ。イメージが膨らむ。光の車? それがまわるとは? 

松原さんの発言を聞いて以来ココロのどこかで「読まないと」と思っていました。
でも読まなきゃいけないもの、読みたいもの、たまり続ける本と格闘している間に入手することすら忘れていました。

買って帰ってさっそく少し読んでみると、教室の中の風景から始まる物語はスリリングに展開し、あっという間に数10ページ読んでしまった。
しまった、もっと早く手に入れるんだった。

現在、会社は順番に自宅勤務になっています。
今日は私がその順番というか当番で出社せずに自宅にいました。
都知事が不要不急の外出は控えてと言うので、ここは東京都ではないけれどおとなしく自宅にいたんですが、豆千代がそわそわしている。
「ねえ、家にいるなら散歩でしょ、散歩。散歩に連れて行ってよ」
と言わんばかりの顔をして、じっと見上げてくるわけ。
飼い犬の散歩は要、急、ですからね、どう考えても。

散歩の道中に、もう何百回もその前を通った古書店があって。
普段はゾッキ本コーナーをちらちら眺めるくらいで真剣に見たことはほとんどなかったんだけど。今日なんとなくワゴンを見たら「講談倶楽部」があってびっくり。大正、昭和の弊社の雑誌が普通に売られている!

どれどれ手に取って見てみましょう。
なんか手に取りにくいな。
そりゃそうですよ、豆千代を抱いているんだから。

話はここで脱線しますが、豆千代が私と散歩するとき、家を出る時は絶対に自分で歩こうとしません。下に置いても、「抱っこ抱っこ」としっぽをやたらに振り回しながら足にしがみついて飛び跳ねるんですよね。
どんなに言い聞かせても、「抱っこ抱っこ!」。
毎回根負けして抱っこ散歩が始まります。
不思議なことにある地点まで行ってから、「はい、ここからお散歩でおうちに帰るよ」というと素直に降りて歩き始めます。
往復の復部分だけの散歩。

だから、その古書店まではまだ抱っこしていたわけです、豆を。
といっても軽い男だから腕をむにゃむにゃすればなんとか抱っこしつつも本を手に取ることは可能。
雑誌を見てみると、いやあ古い! わかってはいるけど古い! その割には作りがしっかりしていてさほど古びた感じはしない! いったいどっちなんだ! 結論としては、年代の割にはしっかりしている。
興味深いけど、まあ買わなくてもいいかにゃあ、なんて可愛く思案していたら、ふいっと目に入った本が!!
もちろんそれが「光車よ、まわれ!」だったわけです。

ココロのどこかにレーダーが張られていたんでしょうね。
いやほんとすぐに目に入ってきたから。
さっそく函から取り出して奥付を見ると、1973年の初版本。
程度もいいし、値段も手ごろ。こりゃ買うしかないわい。
散歩のときは財布を持ってないんだけど、万が一のときのために、ポチ袋に1000円札と小銭を入れて持っているんですね。転ばぬ先の杖。
杖を活用して散歩しながらも買えた、光車との出会い。
松原さん、私はやりました!

さ、あとは読み進めるだけ。
週末が楽しみだよ。

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