風采の上がらない主人公
動物をメタファーにした小説は読めない。
特に昆虫は大の苦手。だから、カフカの変身は、主人公が昆虫になった時の描写の始まりで、思いっきり本を閉じた。その本を側に置いておきたくなかった。
だけど、ひょんなことから聴いたカフカに関する講演から、「かえるくん東京を救う」英訳完全読解を、また手にとって読むことになった。小さいミミズのところの描写は飛ばしたけど。
風采のあがらない主人公に、共感を覚える。損な役回りを、文句も言わずに引き受ける。そして実直にやりこなす。だけど、特に感謝もされない。それでも誰を恨むでもない。
誰もやりたがらない、だけど、やらないと大変な事になっちゃう「雪かき仕事」
ダークサイドに転がり込んじゃう危険性は、自覚なしに私たちにはある。そのストッパーになるのは、かえるくんだ。自覚してない自分の良さを伝え、それがシステムの支えになっていると証明する。そして病室に灯りをつけてくれた看護師のような、無意識の他人の気遣い。
何度も言うけど、動物や昆虫の描写は飛ばして読んでる。だから、残念ながらカエルとかミミズの成り具合はわからない。でも、この本の英語版のタイトルは、Super-Frog Saves Tokyoだった。
スーパーマンみたいな、かえる?巨大なかえる?よく分かんない。今のところ、私はこう受け止める。かえるくんは、私たちの自覚されてない良い行いとそれに対する自信と承認。そして、Super-Frogは、大きく言えば、片桐を助けるシステムの在り方。ダークサイドへ転がり落ちちゃう可能性のある片桐を支える、大きな何か。例えば、国の個人に対する投資とか?
本を読むのが楽しくなってきた。
input;
「カフカのおかしさ」池内 紀(ドイツ文学者、エッセイスト) - 平成26年度 軽井沢土曜懇話会 第1回
村上春樹「かえるくん,東京を救う」におけるくコミットメント〉の行方 -「雪かき仕事」と「バトンタッチ」-