ビシネスライク
ソニアはマスターを終了して、働き始めた。子育てしながら、ありったけの時間をこれ以上は無理!と言う程、有効に使っている。家事はアウトソーシング。
クライエントの問題も、迅速に的確に、そしてクライエントが幸せになれる方向に向けて解決していった。同僚と共にアイデアを出しながら、親身に仕事をこなしていた。
会社が傾き始め、将来の見通しがつかないから退職する同僚もいた。彼らの分の仕事もソニアとリリーは意欲的にこなした。
社長はとてもいい人だ。ソニアが離婚してシングルマザーになった時も、子育てと両立できるよう配慮した。部下のソニアに対して、社長目線の上下関係を築くことはない。ソニアの横に一緒に立ち、同じ高さの視点から模索する。「ソニアが幸せになれる仕事の方法」を、一緒に考えた。
リリーは、夢があった。そのリリーの資格取得のために、社長は方法を探した。学費を出し、リリーをサポートした。
「恩がある。」リリーは言った。「だから、私は、此処を去らない。最後まで、此処で仕事をする。」他の会社を探した方がいいのかもしれないと、不安にかられたソニアの迷いは、リリーのその強い意思に、消された。「だから、一緒に残りましょう!一緒に最後までやりましょう!」リリーは言った。
ソニアには、信頼している姉がいる。アメリカにいるから、不安な時、悩んだ時はすぐ電話をする。いつも彼女を励ましてくれる。ソニアは、リリーを姉妹のように感じていた。アメリカ在住の実姉と同じような。
リリーが、突然、1週間の休みを取った。病欠だった。休み明け「大丈夫?」と声を掛ける。「大丈夫よ!」と答えるが、それ以上は何も言わない。そして、会社を去った。転職したと、ソニアは後から社長から聞いた。
未だに彼女からの連絡はない。
専門職になればなる程、新しい職場を見つけるのは難しく、空いた席はすぐに埋められる。
美がある。徳がある。ソニアは、アジアで育ち、そういう感覚を大事にしている。リリーとその感覚を共有出来ていたと彼女は思っていた。彼女は思っていた。