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本屋について

色々なものを売る店があるが、本屋というのは特異な場所だ。

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今日。本格的に冷え込んできて、半年ぶりにコートを着て外に出た。
昼間はカフェに居候し、夕方になる頃、寒さに少し首をすくめながら本屋に向かった。


私は大抵、本屋に行くと涙ぐんでしまう。


本屋には、たくさんの人の知識と経験が溢れかえっている。著者、もしくは主人公が何年、何十年とかけて得た経験が、たった数時間で読めるものとして並んでいる。その裏側に存在した、たくさんの人生に圧倒される。

特に私を涙ぐませるのは、愛や命の重さを説くものだ。

棚を眺めながら歩くと、コミカルな本の横に、別れをテーマにした本があるのが目に留まる。本屋には世間の縮図のように、幸せと悲しみが共存する。世間と見え方が違うのは、悲しみが息を潜めて暮らすのではなく、帯をつけて堂々と主張していることだ。帯は、たった一文で、別れの辛さと愛しさの物語であると説明し、きっと読者の心に響くだろうことを暗示する。本屋に佇む悲しみの堂々とした強さは、不意打ちで心の弱さをついてくる。だから私はいつも平然としてられない。


30分ほど店内を周り、涙ぐませる本に気を取られつつも、敢えて今の気分を沈ませないものを手に取り、会計を済ます。私は悲しみに打たれ弱い。


外は暗くなっていた。

冬は嫌いだが、熱くなった目頭と火照った頬を、冷たい風が冷ましていくこの感覚は好きだ。


夢現な気持ちを徐々に現実へと引き戻し、心落ち着く家へと帰った。

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