【五匹の鬼】
『鬼滅の刃』が昨年、記録的な大ヒットを成し遂げた。
コミックは見ていないが、映画だけは鑑賞し娯楽としてだけではなく
教えられ、感じ入るところも多々あった。
桃太郎や一寸法師など、昔から童話などで鬼は欠かせない、
悪しきものの代表的存在である。
*
さて「鬼」とは一体なんだろう。
仏教でいうところでは、五蓋(ごがい) 「心に棲む五匹の鬼」といっている。
貪(とん) 瞋(じん) 掉挙(じょうこ) 惛沈(こんじん) 疑(ぎ)
の五つ
貪(とん)これは、「あるが上にもまだ欲しい、評価がほしくてたまらない」という鬼。
与えられたのにまだ欲しいと思う心、
背伸びしてまで評価してほしいと思う心。
瞋(じん)これは、「思い通りにならないと腹が立つ」鬼。
掉挙(じょうこ)おだてられたことを評価されたと思い、
「おだてられると図に乗る」鬼。
惛沈(こんじん)「うまくいかないといじける」鬼。
自分で自分の可能性を摘んでしまうことになる。
疑(ぎ)「疑い受け入れない」鬼。
五匹の鬼どもの棲家は私たちの心の中。
つまり自分と同体だから追い出すことも退治することも出来ない。
ではどのように付き合うかといえば、鬼どもに出番がないことを教え込み、
暴れださないように訓練するしかない。
その方法が「静思」(じょうし)。
「静」は一呼吸の間、「思」は声をかけての確認と抑制。
鬼が顔をのぞかせたとき、大きく深呼吸をして
「本当に欲しいの?」「腹を立てることなの?」「のぼせすぎじゃないの?」
「いじけることなの?」「信じられないの?」と
声をかけて確認することによって
抑制し、それを事ある毎に繰り返し鬼どもに出番がないことを教え込む
しかない。
鬼は気を抜けばすぐに暴れだすので、「静思」の実践により、鬼どもが
暴れない安穏な日々を実現しよう。
薬師寺 大谷徹奘執事長法話より