夫と家族の確執
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[登場人物]
・私 (都会で夫と二人暮らし)
・夫
・お義父さん(夫の父・地方でお義母さん、弟と3人暮らし)
・お義母さん(夫の母)
・弟(夫の弟・無職・実家暮らし)
・叔父さん(3人兄弟のお義父さんの弟・妻と同地方で2人暮らし・子供なし)
・叔父さんの妻(叔母さんが2人出てくるので叔父さんの妻とする)
・叔母さん(3人兄弟のお義父さんの妹・嫁いで同地方で夫と2人暮らし)
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実家で弟に見せてもらい、確認したお義父さんの通帳の残高は、
ほぼ蓄えのない状態だった。
お義母さんの通帳は存在するものの、ほぼ何も動きがなく、
お義父さんが全てお金の出入りを取り仕切っていたようだ。
こんな状況だなんて、知らなかった。
実家には夫は普段からあまり連絡をとっていなかった。
それは結婚してから気づいていたが、
私自身も自分の実家にはあまり連絡を自分からしないので、
これまで突っ込むことはしなかったが、
今後の話を夫としていく中で、ふと聞いてみた。
「前から気になってたんだけど、そもそもなんで実家とあんまり仲良くないの?」
夫は少し俯き加減で話し出した。
夫の実家は祖父、曽祖父の代、いやもっと昔からかもしれない、
ある宗教(神道)の信仰に熱心で、
家族全員でお経のようなものを唱えたり、
色々なしきたりにそってやることや、
先生と呼ばれるお坊さんのような存在の人が家に出入りしたりする毎日に、
夫自身は物心ついた時からなんとなく違和感を感じていたそうだ。
小学、中学と友人ができて他の家を見れば見るほど、
自分の家は何か違うと、その違和感は大きくなっていった。
夫は高校を卒業する頃、とにかく実家を出たかったことと、
かねてからデザイン関係の仕事がしたかったため、
今私達が住んでいる都会にある専門学校に行きたいとお義父さんに話した。
お義父さんはそれを許さなかった。
夫は、デザインの勉強ができることよりも、実家を出たい気持ちの方が大きかった。
交渉した夫は、お義父さんと同じ医療従事関係の仕事であれば、
都会に行って勉強しても良いと許しが出たため、
夫は仕方なくデザインの勉強を諦め、お義父さんと同じ道を選択し、
高校卒業と共に都会へ引っ越し、実家を離れることができた。
医療従事関係の勉強を終え、夫はそのまま同じ分野で就職した。
仕事がしばらく続いて、生活が安定しだした頃、
お義父さんから夫の生活を伺うような電話がかかってくるようになった。
電話の内容はいつも決まっていた。
まず夫の仕事や状況を伺い、
その次にありがたい言葉を与えるように、聞こえの良い話をしばらくする。
その後、お金の援助を求めてくる、という内容だった。
夫ははじめは言われるがまま少しでも、とお金を振り込んだり、
お金がないのなら、と生活に必要な家電やパソコン、家具など
実家へ送っていたという。
それでもお義父さんからの電話は定期的に鳴り、
夫はしだいにお義父さんからの電話が辛くなると、
電話は取るものの、お金の無心にあまり答えないようになった。
夫はよく、「この業界はそんなに儲からないから」
と言うが、お義父さんの金銭状況を見てきたからだったのかもしれない。
お義父さん自身も若い頃は同じ私達が住む都会で仕事をしていたらしく、
都会が地元だったお義母さんともそれで知り合ったのだという。
結婚して地元に帰ってから、お金がなくなっていったようだ。
「電話がかかってくる度にこんなこと言われたら、距離置きたくなるでしょ」
少し悲しい顔で夫は言った。
実はコロナ中も一度、お金の無心をされて、
10万円振り込んだという。
私を不安にさせたくないから言わなかったと言った。
これを聞いて私は、就職して以降、今のいままで
何年も夫は辛い思いをしてきたことに気づいた。
生前お義父さんは、夫が独立する時も実家には戻らず都会でがんばれと言っていた。
夫の収入が減ると何かあった時に援助してもらえないと思ったからなのか、
それとも自分のようにお金のない生活を子供にさせたくなかったのか。
今となってはわからない。
実家は、こんな状況でも宗教に関するお金は渡し続けていたようで、
宗教のせいで実家のお金がなくなることで、自分も苦しめられてきた、
という気持ちも強く、
何かあっても神様が助けてくれるわけではない、
困った時、神様がお金をくれるわけではない、
神様に頼らず、現実を見て自分の力で生きていくべき。
という気持ちが夫の中に根付いたのだった。
話を聞き終えた後、ため息しかでなかった。
神様に対して真摯な気持ちで日々礼拝していれば、
神様は必ず助けてくれる。そう思う気持ちを馬鹿にするつもりはない。
でも、一方で時代の流れを見ることをせず、
医療の発達や暮らしやすさが、昔より発展しても
それには頼らず神様だけを信じるのは違うと思う。
お義父さんが体の違和感を感じた時に、素直に医療に頼っていれば。
実家のお金のなさをひた隠しにせず、私達や第三者に相談できていれば。
そう思ってならない。
お金を渡し続けてきた夫にも、もう頼れないと思ってこちらにも相談しなかったのかもしれない。
コロナ前、お正月に実家に帰った時に、お義父さんは
私たちに1万円ずつ、ご祝儀袋に入れたお年玉をくれた時があったのを思い出した。
あの時も、お金がなかったんだろうなと思うと、いろんな感情が込み上げた。