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ずさんすぎた週間占い記事の謝罪について

みなさんこんにちは。長南です。ご無沙汰しております。

2024年6月に、週間占いの記事について流用や生成AIを使用していたとして、「人気占い師・玲音」氏がX(Twitter)に「お詫び」を掲載し、ニュースになるということがありました。

[2024/7/22] 緊急追記

当初この記事を書いた 6/10 の時点では、X(Twitter)に「お詫び」のポストが掲載されていましたが、とある方より本人が当該のポストを削除しているという情報をいただきました。確かに記事の引用が「見つかりません」になっているのが確認できると思います。当初この記事で

また、X(Twitter)での謝罪文では、あえてこの部分をカットして掲載しており「ほとぼりが冷めたら活動再開しよう」という意図があるように思います。権利問題ならまだしも、占いの本質にかかわるところで致命的な過ちを犯してしまった点、それを隠そうをしている姑息な意図が見え隠れしている点は指摘しておきたいと思います。

「ずさんすぎた週間占い記事の謝罪について」 - note 長南 浩

と書いておりましたが、まさにその通りの展開になりそうな状況です。まあ所詮こんなものかという感想しか出てきませんが、読者の方はよく観察されることをおすすめします。

(緊急追記ここまで)


一般メディアでも報道されましたが、スポニチのものを貼り付けておきます。

玲音氏は、Xフォロワー5万人を超える人気西洋占星術師。英国占星術協会会員。株式会社マイカレが運営する「マイカレWeb」や国内最大級のライフスタイル情報メディア「TRILL」など、複数メディアで連載を抱えていた。

スポニチAnnex 芸能 2024年6月4日

個人的にあまりこの人に興味なかったのですが、「マイカレWeb」や「TRILL」で書いていた人のようですね。「マイカレWeb」ですか、そうですか…


 週間占いを複数メディアで書くことの限界

最近「生成AI」についての話題がよく聞かれるようになり、学習ソースがどうとか権利(著作権含む)的にどうとか議論されているわけですが、生成AI以前の問題として週間占いの記事を複数の媒体に書くこと自体が無理な相談だったりします。

週間占いの記事というのは、おそらく12星座ごとの運勢を「今週の〇〇座」といった形で掲載する記事なのでしょうけれども、読者層(ペルソナ)を分けない限り似通った結果になることは目に見えていたのではないでしょうか。そりゃあ「マイカレWeb」「TRILL」どちらにも似通った「今週のふたご座の運勢」記事が書かれることになるでしょう。X(Twitter)の謝罪ポストでは「語尾等の改変」などと書かれているとおり、そのあたりをゴマカして原稿料の二重取り(あるいは多重取り)をしていたということになります。

複数メディアに同じことを書くというのは、それぞれのメディアに対して利益相反を引き起こす行為です。この部分は占い師というよりライターの倫理にかかわる問題で、連載の引き合いがあったときに「私はすでに〇〇さんで週間の占い記事の連載を持っていて、権利問題が発生する可能性があるので辞退します」というのが筋だと思います。もしくは先行しているメディアのほうで連載終了した上で移籍という形をとり「仁義を切る」ことをやる必要があったのではないでしょうか。

そういった意味で「文章を書いてお金をいただく」という仕事についての認識が甘すぎると言わざるをえません。

占いそのものについてのごまかし

そもそも週間で占い記事を書くのは大変な仕事なので、「忙しすぎて魔がさしたのかな」と擁護する見方もできなくなさなそうですが、次のサイトを見て私は仰天しました。

あまりに驚いたので「魚拓」もとってしまいました。

「星読みライフデザイナー玲音/公式」
星読みライフデザイナー玲音/公式をご利用の皆様へ
https://hoshiyomi-leo.jp/help/information

掲載記事は過去記事の盗用で占星術により導いた該当週の占いではないものです。同記事は公式LINEおよび「星読みライブデザイナー玲音/公式」にも掲載していました。

「星読みライフデザイナー玲音/公式」
星読みライフデザイナー玲音/公式をご利用の皆様へ

権利問題については前に述べた通りですが、それ以上に「占星術により導いた該当週の占いではないもの」であるというのは驚きの告白です。

権利的な問題、社会的な問題であればまだしも(本当はよくないのですが)、そもそも「まともに占いしてなかった」ということですから、弁護・擁護できる要素は全く見いだせないように思います。「占い師が占いをしていなかった」という致命的なところを認めざるをえないというのは、おそらく当該の記事について鋭い指摘が入ったものと思われます。

また、X(Twitter)での謝罪文では、あえてこの部分をカットして掲載しており「ほとぼりが冷めたら活動再開しよう」という意図があるように思います。権利問題ならまだしも、占いの本質にかかわるところで致命的な過ちを犯してしまった点、それを隠そうをしている姑息な意図が見え隠れしている点は指摘しておきたいと思います。

占い師とコミュニケーションスキル

占い師稼業では、占いについてのスキルと同じようにコミュニケーションスキルが重要です。電話占いや対面鑑定であれば言葉で占いの結果を説明するスキル、紙やWeb媒体の場合は文章を書いて伝えるスキルが占いそのもののスキルと同じくらい求められます。この記事の冒頭で、

「マイカレWeb」ですか、そうですか…

とボヤいたのは、実はそのあたりの事情があったりします。

「マイカレWeb」というのは、説話社が2019年に創刊、2022年に「『刊行形態の変更』という名の事実上の休刊」した雑誌「マイカレンダー」のWeb媒体(あえてリンクは貼りません)のことです。創刊当初は私も応援していたのですが、2,3号目から内容的に見るに耐えない状態になって心配をしていたことを思い出しました。休刊に近い時期のものは私の知り合いの方に「あれは雑誌ではなくて同人誌」と辛辣な評価をされていたのを覚えています。

一方で「マイカレンダー」が刊行していた時期も「CanCam」「ELLE」「VOGUE」「SPUR」といった有力女性誌は定期的に占いの特集を組んで、場合によっては占いのムックまで出していました。「マイカレ」とそれらの有力女性誌を読み比べると、文章や内容の点で「マイカレ」が大きく劣っていて、実力の差を感じることが多かったように思います。場合によってはどちらにも「鏡リュウジ」氏がクレジットに入った記事が掲載されているものの「マイカレ」のほうがやはり見劣りするのです。

こういった経験を総合して得られることというのは

・ 優れた占いの記事は優れた文章で書かれる
・ 優れた文章を作っているのは、腕利きの編集さんによるところが大きい
・ かならずしも占い師がよい文章を書いているわけではない

ということで、「マイカレ」を通じて占い業界の一面を垣間見ることができたことを思い出しました。その先には「文章スキルをそれほど持っていないということは、鑑定レベルも推して知るべし」ということになるのですが、あまりそこは強調しないほうが良いように思います(今書いちゃったけど)。

雑なアプトプットでも許容されるのであれば

このように、雑なアウトプット(文章が微妙だったり、語尾などを変更して流用していたり、そもそも占いしてなかったり…)でも許容され、それこそ「人気占い師」になることができるというのであれば、次の展開はAIによる置き換えです。

X(Twitter)や「情報商材」的なものを煽っている方々はすでに目をつけて「AIで占いコンテンツを自動生成、月間収益100万円」とかヒドイ売り文句で中身のない「情報」を売っているようです(個人の感覚ですが、稿料が発生するコンテンツで100万円はありえないと思っています)。

「情報商材屋」の格好の餌食になっている格好ですが、正直SNSにあふれる占い系のコンテンツを見ていると「AIのほうがマシな結果を出す」ようなものが多いように見受けられます。このあたりAIに置き換わっていくと、カジュアルな占いについての意識が変わっていくのではないかと思います。もちろん「いい加減」な占いをしている人は収入源をAIに持っていかれるということになります。また、占い関係なく悩みごとがあるのなら最初にAIに質問してみるというのが有効になる未来がやってくるのかもしれません。

では私はどうするのかというと、本業持っていて(可能であれば占い以外になにかを成し遂げた人に鑑定してもらうのがいいと個人的に思います)、占いで食い扶持を稼がなければいけないわけでもないし、そもそもオカルトの分野は知識階級の人の裏芸みたいなところがあるので、ひきつづきそのあたりに首をつっこみ、たまに有料のコンテンツ(皆さんに喜んでいただけるものになるとよいのですが)を出していければと思います。

占い業界のウォッチングをしていると、なぜか人間の弱さに気付かされることが多いということで、ミイラ取りがミイラにならないように精進していきたいと思うのでした。

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長南 浩
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