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#223 【病原性集中講義】Part7: 免疫系の成り立ちから感染症への罹患まで。

毎日夜19:30に更新中!腸内細菌相談室。
現役の研究者である鈴木大輔が、腸内細菌にまつわるエピソードをお届けしております🦠

病原性集中講義の第7回は、免疫系の成り立ちから感染症への罹患まで、今週お話してきたエピソードの復習をします。免疫系とは、抗原を排除することで感染症への罹患を含めた、生命の恒常性維持機能を守るシステムです。免疫系について知ろうとすると、免疫細胞の種類の多さや分化の複雑さなどに圧倒され、中々全体像を理解することが難しいです。そこで、病原性集中講義では、免疫系の種類、分化の過程、シグナル伝達、免疫寛容の観点でお話をすることで、免疫系に対する有機的な知識を獲得することを目指してきました。ここまでのお話を理解することで、病原性を考える上で重要となるカウンターパートの病原体について進むことが出来ます。

早速、免疫系の種類から復習をしていきます!

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病原性とは何か

病原性とは何でしょうか。Journal of Invertebrate Pathologyの"Definitions of pathogenicity and virulence in invertebrate pathology"では、次のような言及をしています。

具体的に、病原性は病気を引き起こす潜在的な能力を表す状態や質を指すのに対して、ビルレンスは病原性の程度として病気を引き起こす能力の程度を表す。 病原性は質的であり有るか無いかを示し、ビルレンスは病原性を定量化した用語である。

Shapiro-Ilan, David I et al. “Definitions of pathogenicity and virulence in invertebrate pathology.” Journal of invertebrate pathology vol. 88,1 (2005): 1-7. doi:10.1016/j.jip.2004.10.003

病気をひきおこす潜在的な能力が病原性、 病気をひきおこす潜在的な能力の程度がビルレンスと呼ばれます。例えば、AとBの2つの細菌について、Aの方がBよりも疾患を引き起こしやすい場合にはAのビルレンスが高いと考えることが出来ます。

病原性の発現には、何らかの分子が宿主に対して悪影響を及ぼしますが、このような分子のことをビルレンスファクターと呼びます。

病原性を持つウイルスや細菌、真菌を総称して病原体と呼びます。ヒトを含めた生物には、病原体の侵入に備えて免疫系が存在します。

免疫系の2つのサブシステムと抗原提示

免疫系は、病原体を含めた異物を抗原として認識することで、体内から排除する仕組みです。免疫系が備わっているので、微生物が跋扈するこの世界でも、特に病原体の存在を意識することなく生きることが出来ます。

免疫系には、自然免疫と獲得免疫の2つのサブシステムが存在します。自然免疫は抗原非特異的に=抗原によらずに貪食で排除するのに対して、獲得免疫は抗原特異的に=特定の抗原に対して細胞性免疫や体液性免疫により排除します。

獲得免疫には、自然免疫で受け取った抗原を貪食細胞が細胞表面に結合する、抗原提示が重要です。抗原提示を受けたナイーブT細胞が、ヘルパーT細胞として細胞性免疫や体液性免疫を担う種々の細胞の分化を促すことで、抗原特異的な免疫機能が引き起こされます。

抗原提示においては、細胞表面の主要組織適合抗原(MHC)と呼ばれる糖タンパク質に対して、断片化された抗原由来のペプチドが結合することで行われます。MHCに結合したペプチドを媒として、ナイーブT細胞のTCRと結合が行われることで、シグナル伝達が進行します。

シグナル伝達と免疫寛容

MHCを介した免疫系のシグナル伝達は、抗原提示と免疫機能の活性化に重要です。一方で、獲得免疫の活性化はこれだけでは不十分で、T細胞と抗原提示細胞の別の場所での糖タンパク質を介した共刺激も必要になります。抗原提示と共刺激が、ナイーブT細胞の分化には必要です。

他にも、様々な免疫細胞が分泌するタンパク質として、サイトカインも重要です。サイトカインには、インターロイキンやインターフェロン、ケモカインが含まれ、それぞれ免疫機能や細胞の遊走機能を変化させる能力があります。

抗原提示や共刺激といった細胞間の直接的な相互作用と、サイトカインを介した細胞間の間接的な相互作用が、免疫系のシグナル伝達を構成する要因です。

ここで、免疫系を考える上では、ヒトを含めた宿主側のタンパク質についても考える必要があります。宿主の体内にもっとも多く存在するタンパク質は宿主由来のものであり、これに対して免疫応答が起こってしまう(自己を異物と誤認識する)と自己免疫疾患となります。そこで、獲得免疫を備える生物には免疫寛容と呼ばれる、自己に由来する分子を含めた特定の抗原には免疫応答を示さない仕組みも備わっています。

感染症と病原性

このように、精密な免疫系の存在によって、宿主は病原体から守られます。しかし、宿主側の免疫機能に先天的あるいは後天的な不全がある場合には、病原体によっての感染症の成立が容易になってしまいます。例えば、貪食細胞の食作用機能の不全や獲得免疫機能の不全など、様々な免疫不全の状態が知られています。他にも、老化に伴い免疫機能が低下することも、宿主の抗うことが出来ない運命です。

また、病原体もやはり精巧な仕組みを備えることによって、宿主への侵入が可能になる場合があります。これが次週お話していく、病原性の宿主要因に対するカウンターパート、病原体のお話です。毒素からがんまで、幅広く取り扱います。

明日の放送は、#科学系ポッドキャストの日ということで、病原性集中講義をお休みします!もちろん、いつもどおりのポッドキャストでも科学系ポッドキャストなのですが、明日のテーマは宇宙ということで、宇宙飛行士の腸内細菌についてお話します!

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今日も、お疲れさまでした。
また次回、お会いしましょう!

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