『Tic Tac Bow』がサービス終了した
『Tic Tac Bow』がサービス終了した。サービス終了の報せを受け取ったのは8/29で、公式Discordからの報告があった。
これははっきりいってまったく悲しくない。何をどう考えても大きな力が働いて、ゲームの面白さや人気とまったく関係なくオリンピック競技に選ばれたこのタイトルは、近代のゲームのそれと比較するまでもない。20年前のFlashゲームを彷彿とさせるそのゲーム体験が失われることについて、これを到底惜しいとは思えない。なんなら、頑張れば自分で作れそうでもある。作ろうとはまったく思わないが。
まったく惜しくはないが、不安にはなる。というのも、気になるのはこのニュースである。
2025年にはなんと、"第一回"のeスポーツオリンピック大会が開かれるというのだ。2025年が第一回。IOCがそう言っているのだ。じゃあ、僕たちがオリンピアンを目指して練習した『Tic Tac Bow』は、シンガポールで行われていたアレはなんだったのだろう?
肝心のアプリケーションはApp Storeにはもうないのだから、『Tic Tac Bow』がこの世に存在することを証明できない。日本代表としてシンガポールに行ったとされる象先輩とmekasueさんは本当にシンガポールに行ったんだろうか。二人は意味不明なゲームのやりすぎて頭がおかしくなっただけで、実際にはシンガポールに行っておらず、Photoshopでシンガポールに行った風の合成写真を作っただけなのかもしれない。僕の過去が学校で盛り上がっていた話を話してくれたEvolgish君との出会いも、ヤバすぎるTic Tac Bow星人であるMontyの存在も、まるで霧のようだ。これらは本当に、この世に存在したのだろうか?
あるいは僕の頭の中はもうおかしくなってしまっていて、ありもないeスポーツオリンピックタイトルを作り出し、自分がオリンピアンであったと言い張りたいだけなのではないか?何者かになることを諦めきれずに狂ってしまったゲーム好きの中年男性がでっち挙げた、すべては妄想だったのではないか?
答えを確認する術はもうない。だって『Tic Tac Bow』はなくなってしまったのだから。僕は『Tic Tac Bow』の存在を信じて生をまっとうするのだと思うけれど、数年もすれば「オリンピックの大会でデカデカと広告が出てくる怪しげなコインフリップサイトで先行後攻を決める?そんなことあるわけないだろう」と、嘲笑する人がきっと現れる。だって、IOCが2025年が第一回だと言っているのだから。その公式なソースをもって、自信満々に、僕のことを狂人だと、バカだと言ってくるに違いない。サウジアラビアの記事はインターネットに残り続けるけれど、『Tic Tac Bow』が書かれた記事は、せいぜい僕のnoteくらいしか残らない。だとすれば、すべてが僕の狂言のように見えても、それはまったくおかしくないのだ。
SNSでは『ブループロトコル』のサービス終了の報せを受け、物知り顔でバンダイナムコにマウンティングを試みる人たちがたくさんいる一方で、『Tic Tac Bow』のサービス終了は、誰にも知られることなく、誰にもサービス終了の理由をSNSで語られることもなく、ひっそりと消えた。
かなり面白くないゲームに僕が費やしてしまったあの時間は戻ってこない。しかしせめて、その時間を費やしたことでしか得られなかった出会いと経験だけは、誰に疑われようとも、誰に嘲笑されようとも、大事にしたいと思う。それは、それこそが、僕にしか大事にできないものなのだ。
面白いのは、まだサービス終了する一日前、9/4であるはずなのに、まったくプレイできないことである。最後まで『Tic Tac Bow』は『Tic Tac Bow』だ。
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