「本書には、ジョージ王朝の後期にあたる時期から摂政時代、おおよそ1750年から1830年ごろにさかのぼる時代のレシピを、現代風にアレンジしたものとともにおさめてあります。」
最近なにかしら手仕事(着物を畳んだり部屋の片付け)をしながら、BBC版の「高慢と偏見」を流し見しています。
わたしはこの1時間6回にまとめられたドラマが大好きで、もう何度見たことか分かりません、という言葉がまったく誇張ではないくらい見ています。
なので、別に画面を見ていなくても見ているかのように楽しめるんですよ。
さて、このBBC版のテレビドラマシリーズ、英語で「コスチューム・ドラマ」と呼ばれる、一種の時代劇のようなタイプの火付け役は、このBBC版の「高慢と偏見」だったそうです。
「高慢と偏見」は、それ以前にもローレンス・オリヴィエという大俳優が主演を務めた映画版がって、原作小説から大きく逸れた脚本ながら、「オリヴィエが演じるダーシーのロマンティックさ」に心を射られたご婦人が沢山いたとかなんとか。
そういった、「原作準拠ではなく人気のラブロマンス仕立て」の映画はこのころ(白黒時代ですが)よく作られていたようで、なんだか平成の人気ラノベ・マンガのアニメ化によるアニオリのようです。
それが1990年代になって、「原作に忠実な映像化をしよう」とBBCが英国公共放送の威信をかけて作成したのが、このコリン・ファース版「高慢と偏見」です。
このドラマ版は一気に人気が出て、放送時間には町の通りから人が消えた、と言われているくらいでした。
わたしより上の世代はもちろん、わたしと同世代、少し下の世代でも、「高慢と偏見」といえばBBC版、という人たちがほとんどです。
で、この長い長い前説がどこに落ち着くのかというと、このドラマが放送されたのが1995年のことで、今回紹介する本がイギリスで出版されたのも、1995年だ、ということです。
マギー・ブラック、ディアドレ・ル・フェイ著、中尾真理訳『ジェイン・オースティン料理読本』(晶文社、1998)
いやあ、なんというか、早業ですよね。
流行ったとたん関連書籍がでるのは、日本もイギリスも同じだということです。
あ、ジェイン・オースティンは『高慢と偏見』の作者です。
この本の特徴は、この本に掲載されているレシピの由来がどこにあるかということ(オースティン家の家政婦と、親戚一家のレシピだそうです)、この時代の食事事情、コースの概念、社交の場としての食事など、歴史的検証と説明が50ページほどあることです。
たしかに、オースティンの時代は1日2食だったとか、階級や地方によって食事の時間や概念にも差があるとか、説明されないとわからないことはたくさんあるので、まあ仕方がありません。
とはいっても、”Cook Book"と題された本のはじめ50ページが解説だなんて、なんというかあまりにもイギリスだなと思います。
それから続くのは料理のレシピですが、イギリスの料理本には「出来上がりの写真」とか「手順の写真」とか、そういったものが皆無です。
これはこの本が、というのではなくて、イギリスの料理本がそういう傾向にあります。
あとはひたすらに分厚いこと。
「料理辞典」とでも呼べそうな大きさと重さは、なんというか、料理中に見るつもりほんとにある?みたいな気がしてきます。
(だからメシマズのままなんだよイギリスは)
そんなわけで、わたしはこの本をマニア心から買い求めましたが、まああれですよね。
作ってませんよね。
なんならちゃんとレシピ読んでないですよね。
いま見たら、「固いカスタードクリーム」、卵黄5個とか書いてありました。
そんな大量のカスタード、いらなくないですか?
(お客を呼んだとき用のレシピだからね……)
なんというか、お国柄というか。
料理本ひとつとっても、”らしさ”が出ますよね。
ところで先ほど、「高慢と偏見」のエピソード3を見終わったところで、例のプロポーズシーンで大歓喜しています。
やはりあのシーンとそれに続く心情の変化は見もの。
演技の細やかさがあっての説得力。
さすがイギリス演劇は質が高いなぁと思います。
あ、そちらのかた、BBC版「高慢と偏見」、見たことない?
この機会に見てみましょう。
アマプラならタダで見れますよ。