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「「やめておけ。お前たちの腕ではあいつは倒せん」」

古今東西の変な人を集めまくったかのよーな「スレイヤーズすぺしゃる」ですが、3巻のこれは地味にけっこぉレベルが高い気がします。

神坂一著『ナーガの冒険』(富士見書房、1992)

スレイヤーズ短編集3巻目。
思い出しをかねてばーっとページをめくりましたが、まだまだナーガが常識人だな、と思います。
昔は控えめだっったね、ナーガ。

3巻には趣深い変な人が何人も出ていますが、その中でも筆頭はリオル爺さん。
この爺さん、リナを素体にキメラを作ろうとしたり、ナーガをもとにホムンクルスを10体作ったりと、かなりハイレベルの狂魔導士です。
…… まあこれに関しては、OVAの印象がめちゃくちゃ強いってのはある。
スレイヤーズのOVAはクオリティ高いので、わたしは好きですね。

それにしても、すぺしゃるで出てくるからただの変態爺さんみたいな扱いを受けていますが、ゼルがキメラにされた体を元に戻すためにアドバイスをもらったのがリオル爺さんだったっていう設定、どこかになかったっけ……?
つまりこと合成、複製技術に関しては、レゾに匹敵するんじゃなかろうか、この爺さん。

すぺしゃるは倫理の壁とか常識の枠とかを無かったことにして楽しむぶっとび系の短編なので、ツッコんだら負け、みたいなところありますが、そもそも人体実験をやるような魔導士を放置していていいんだろうか、この世界。
リナに関しては「目論見」だけで終わっていたけれど、おまけ短編の「ナーガの冒険」のほうでは実際にナーガのホムンクルスを10体も作り上げてるしなぁ……
この場合、ホムンクルスの自我とか人権とかってどうなるんだろう。
考えたら負け。

で、アニメだと脅威のナーガの高笑い×11人分が聞けるのでね。
耳がおかしくなりますよね。
川村さんの高笑い、アニメ界一位じゃないかって勝手に思ってます。
(封神の妲己ちゃんだってもっと控えめだった。)

話はかわって、冒頭の一文は「ヒドラ注意報」から。
いるよね、こういう「自分こそがその仕事にふさわしい」って難癖つけてくる人。
でもって、口先だけというかなんというか、実力が伴わないタイプ。
でもこのラウルさんみたいに、一丁前にカッコつけたニヒルなおっさんが、実際にカッコつけてるだけでめちゃくちゃ弱いっていうの、「ニヒルな渋い勇者」の逆パロで好きです。
すぺしゃるはそういう、「いやふつーそういう言い方するやつはこうでしょ」というのの逆張りをうまく使ってネタにしてくるので、シンプルにおもしろいです。
テンプレを崩すおもしろさってありますよね。

すぺしゃるのほうも、この辺りの巻からようやく気恥ずかしさが薄れるというか、キャラがこなれてくるというか、しっくりくるようになります。
ご長寿作品の楽しみ方は、そういう「文章の変化」みたいなところにも出るのかなと思います。

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