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#13 ALS患者になるまで④
難病宣告の翌日。
「筋生検」の検査の日。
前日の夜はあまり眠れてなかった。
「筋生検」と検索しようとしてやめた。
わからないままがいい。
一晩中、大好きなB’zをYouTubeで見ていた。
♪夢じゃない あれもこれも♪
同じ曲のリピート。
現実と向き合わなければいけない。
難病を発症したことから逃げたいが、そんなことができるわけはない。
宣告を「はい。そうですか」と簡単に受け入れられない。
でも、夢じゃない、あれもこれも…悲しい。苦しい。悔しい。憎む。
考えれば考えるほど、ネガティブなキーワードがあふれ出る。
朝の検温、朝食、いつもと同じ病院の朝。
昼前に、看護師さんと主治医、インターンの女性が、ストレッチャーを持ってやってきた。
出発前に、看護師さんから
「フェイスタオルを1枚持っていってください」
何に使うのか説明はなく、「ん?」と思いながら、タオル片手にストレッチャーで連れて行かれたのはナースステーションの隣の処置室。
痛み止め入りの点滴を刺され、うつ伏せになると、左ふくらはぎに部分麻酔をされ、筋肉の萎縮が見られる部分の筋肉を3cm程度切除すると、ドクターから説明があった。
皮膚には麻酔をするが、筋生検の字のごとく、筋肉を切る時は麻酔なしだった。
インターンの女性が両足首をがっちりつかんで、急に怖くなった。
その痛みは、出産の痛みをはるかに超えて、声が出る。
筋肉を切るブチっという感覚で痛みが更に増してくる。
看護師さんはタオルを素早く口に入れて、舌を噛まないようにしてくれた。
このためのタオルだったんだ…
看護師さんは手をしっかり握ってくれて、
「がんばって」
「あと少しですよ」
「切れましたよ」
「縫合しますよ」
私のために声をかけ続けてくれたが、想像をはるかに超える痛みで、
「どうしてこんな痛い思いをしないといけないんだ!」
「どうせ治らない病気なら死んだ方が家族の負担にならん!」
筋生検の痛みは、まるで今まで生きてきた自分を全否定され、罰を受けているようで、この先、病気とともに生きようという思考は浮かばず、自死を選ぶ覚悟をしたきっかけになった。