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#8 家族との在り方
私は3年前から、自宅からスープが冷めない距離で家を借りて生活をしている。
ALSの確定診断を受けた時から、数年で寝たきりになる自分は
「誰に介護されたいか」
をずっと考えていた。
何度も何度も考えても、やっぱり家族に介護の負担をかけたくなかった。
徐々に足から動かなくなっていき、足を引きづりながら廊下を這い、階段の段差を使って、キャスターつきのキッチンチェアに座って、家事をしていた。
義母にも家事を手伝ってもらっていて、毎日思うように動けないことが申し訳なくて辛かった。
腕が動きにくくなってきてからは、小学生の娘のお弁当を作るのに、夜11時くらいから始めて、明け方3時や4時までかかっていた。
お弁当を作るたび、
「これが最後のお弁当作りになるかもしれない」
と、考えながら。
お風呂は床を這って入浴してから掃除し、トイレはキャスター付きの椅子からトイレへ、いつ膝から崩れて倒れるかわからない格好で移っていた。
自分がケアマネで、こんな人を担当していたら、急いで介護サービスを導入するだろう。
案の定、まもなくケアマネさんが入るや否や、
「自分の体を大切にしなさい!」
と、一喝された。
あの頃は、自分ができることは自分でやって、とにかく家族に迷惑かけたくない…頭の中はそればかりだったから、自分の体を酷使して、結果的には筋緊張を強めてしまい、毎日、体のつりや痛みで苦しんでいた。
自分1人で抱えて、家族と話し合うこともなく、自分1人で空回りしていた。
そのうち、病気が進行しても家族に素直に
「助けて」
が言えなくなっている自分がいた。
外では明るく笑って過ごしながらも、家では妻や母の役割が出来なくなっていって、ALSになってしまった自分を負い目に感じていた。
普段から夫や子どもとのコミュニケーションがどれだけ大切で、自分1人でがんばらず、お互いが遠慮なく「助けて」と言い合える関係になるか…
もっと早く気づいていたら…と後悔している。
今は別々に生活することで、自分の体を第一に考えることができるようになった。
家族も顔を見に来てくれている。
今の形がベストかどうかはわからない。今も悩み続けている。