城山ダムの洪水調節機能強化について聞いてみた。
城山ダムの洪水調節機能強化の報道
5月26日にこのような報道がありました。
下のプレスリリースの概要としては十分な内容ですね。
昨年の洪水対応について取材したこともあり、不明点もあったので問い合わせしてみました。
注意事項
取材による回答は極めて専門的な内容が多かったため、できるだけわかりやすい言葉に直し簡潔に書いています。内容は5月27日現在のものです。検討段階のものもあり、具体的な内容は今後変わる可能性があります。
計画規模を超えない雨量予測の場合
出典:リーフレット『城山ダム』
城山ダムは50年に1度の大雨に対応する計画で作られており、事前の雨量予測が50年に1度の大雨に満たない場合は従来通りの実施。
計画規模を超える雨量予測の場合
出典:城山ダムに関する新たな情報共有の仕組みと洪水調節機能の強化について資料2
令和元年東日本台風のように50年に1度の大雨を超える雨量予測の場合に、今回発表された上のグラフの赤線のような新たな操作を実施。
現段階では、特別防災操作(ただし書き操作)と呼ばれる特例的な操作として、相模川流域の本格的な台風シーズンである9月までに具体的な操作方法などの決めて、暫定的に操作規則の改正を行い運用を開始予定。
異常洪水時防災操作開始水位
異常洪水時防災操作開始水位(緊急放流を行う基準となる水位)は従来の操作であれば貯水率8割にあたる水位になるが、新たな操作ではまだ検討段階で具体的な数字は決まっていない。
住民への周知
従来通り行う。ただし、マスコミとの連携といったより効果的な方法も想定して引き続き検討をする。
相模川河川整備計画への影響
ざっくり言えば、上の整備計画流量図への影響のこと。新たな操作を実施する場合、整備計画流量図の数字と整合性が取れなくなる。そのため、9月までに運用開始するものも操作規則の改正は行うがあくまで暫定的なものとして次の台風シーズンまでに間に合わせ、今後時間をかけて検討しダムの操作規則や相模川河川整備計画へと段階的にさらに反映する。
ゲートの放流能力の限度量まで引き上げ
このグラフでは、従来操作も新たな操作も一定率一定量の洪水調節方式に見えるが、実際の新たな操作では洪水調節開始よりゲート開度最大で放流を行い放流量が3,400㎥/sになった時点で3,400㎥/s一定量の放流を行う定開度一定量方式に近い操作になる。
洪水初期~中盤にできるだけたくさん放流して、異常洪水時防災操作(緊急放流)を回避、または異常洪水時防災操作をしたとしても最大放流量を少なくして下流の被害を最小限に抑える操作となる。
この新たな操作を行う場合、従来操作より洪水調節容量2,750万㎥の約3割相当増やして大規模洪水に対応できる。
事前放流は効果がない。
出典:リーフレット『城山ダム』
城山ダムの放流設備は写真の通りダムの上部にしかない。ダムの放流量は開口部の大きさと水位の高さで決まり、水位が高いと放流量が大きくなり、水位が低いと放流量が少なくなる。そのため、事前放流で水位を下げても物理的に放流量が増やせず、洪水が始まる前に事前放流で減らした分だけ先に貯まり意味を成さなくなる。
同様の問題は他のダムでも…
徳島県にある長安口ダムは、城山ダムの事前放流に効果がない理由と同じ構造上の問題を抱えていたダムであるが、そのダムで事前放流を行った場合のシミュレーションがグラフに示されているので参考までに。
ダム改造
構造上の問題を抱えていて事前放流などの対応ができないダムでは、洪水吐の増設といった改造工事を行って改善する事例がいくつかある。しかし、城山ダムの場合は検討はしているが費用対効果の問題もあり、他の事例をみてもXXX億円はかかるかもしれないので今の段階では何も決まっていない。
問い合わせは以上
■今後の予定
今後、ゲートの開度など具体の操作方法の詳細を詰め、必要な操作要領等を
改正したうえで、本格的な台風シーズン(9月)までに運用を開始する。
出典:城山ダムに関する新たな情報共有の仕組みと洪水調節機能の強化について資料2
資料内に書いてある通り、具体的な詳細はこれから詰めていくとのことですので、当記事で書かれている通りに実施されるとは限りませんのでご注意ください。
できるだけ簡潔に書いたつもりですが、読み返すとそうでもないですね。わからないところがあればTwitterでメンションを飛ばしてもらえばできるだけ回答しようと思います。
御礼
今回、神奈川県河川課へ電話問い合わせをしましたが、質問が多いにも関わらずご丁寧に対応していただきました。お忙しい中ありがとうございました。
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