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Constitution

最近、小学生の子達に「憲法」について教える機会があった。
何から説明しようかと考えた時に自分の口を衝いたのは"constitution"という英単語だった。

小学生には、ちょっぴり馴染みがないかもしれないが、"constitution"は「憲法」と訳されることが多い。これを読んでいる人の多くはきっと中学生くらいの時に、英単語帳の中で、この単語に出会う。

おそらく自分も出会いはそのくらいだったと記憶している。
ただ、強烈にこの単語を意識するのは高校生になってからのことであった。

英単語を覚えるのが苦手だった。やりたくもない問題を解くために、読みたくもない文章を読むために、ただただやってくる毎週のテストをクリアするために英単語を覚えるのが嫌だった。

なので、偏屈極まりないこの高校生は、教師に英単語を覚える意味がわからないという質問をぶつけてみた。

流石に百戦錬磨。教師は微笑むと、「では日本語から考えよう」と言った。

高校生は怪訝そうに彼女を見つめた。
そこで彼女の口から出た単語もまた"constitution"であった。

高校生が「憲法ですか?」と尋ねると、教師は次の単語をくれた。
"constitute"
"constitution"を動詞の形にした単語。

この前の単語テストに出た単語だった。何だったけな。

高校生が答えに窮していると、教師は再び「日本語から考えよう」と言った。「日本語から」と言われてもな……。

その高校生は勉強が好きではなかったが、何かを考えることは好きだった。
今思うと彼女はその高校生をよく見ていたなぁと感心する。この子が何かを覚えるためには考えることが大事なのだと彼女はわかっていたのだ。

教師はヒントをくれた。「憲法ってさ、どんなもの?」

当然、国の最高法規。

「そう、最高法規。この国で一番大事なルールのこと。日本は法治国家というくらいだから、ルールがこの国を作っているの」

ルールがこの国を作っている。この文言を今でも鮮明に記憶している。

「だから、憲法には『国を形作る大事なもの』という側面もあるのね」

そして、教師は高校生に問いかける。

「なぜ、"constitution"に憲法という訳がついたのでしょう?そして、"constitute"を日本語にするなら、どんな意味になる?」

高校生は考える。
そして、頭の中で「憲法」と"constitution"、"constitute"が繋がっていく。
そのさきにあるのは、「形作る」……?

家に帰って単語帳の"constitute"「構成する/構成要素となる」に付箋を貼った。ついでに"constitution"「憲法/構成/構造」にも。

これが自分と"constitution"の出会い。
知識と知識が繋がって、何かを考えているということを実感したのを鮮明に覚えている。


最近、ちょっぴり挫折する出来事があった。
絶賛立ち直り中である。だからNoteを書いているという節もある。

そういう時にふと頭によぎる単語もまた"constitution"だ。

"constitution"は人間に使うと、「気質」や「体質」といった意味になる。
自分を形作るもの、といったニュアンスだろうか。

似たような単語に"identity"という単語がある。
「身元」や「独自性」「同一性」、いわゆる「アイデンティティ」というやつである。こっちは自分が何に属しているのか、何者なのか、を指す単語とといった印象を受ける。

よく言われるのが、「アイデンティティの揺らぎ」というやつだ。
自分を見失う、と言っても良い。

自分の感覚として、これはあまりピンと来ない。
自分はおそらく今までの人生で「アイデンティティ」に「揺らぎ」を感じたことはない気がする。それは自分の性別や家族、所属するコミュニティ、職業に不安を感じたり、不満足を感じたりした経験に乏しいからだろう。

だから、挫折して「道に迷う」とき、いつも"identity"ではなく"constitution"が崩れていく感覚に襲われる。

別にネガティブな話をしているわけではなく。

何と言えば良いか。
挫折から立ち直るときには、いつも自分の"constitution"を作り直すようなイメージで考える。

つまり、自分は自分なのだ。その存在に揺らぎは感じない。
一方で、その存在の組み立て方を変えていく。
「別人」ではないが、「構造は別もの」の自分を目指すのだ。

だから、一度立ち直ると、前までの自分のことを恐ろしいほどに引いた目で見るようになる。なぜなら、組み立て方が違うからだ。

これまで通りの組み立て方だと、崩れてしまう。
だから、崩れない組み方に変えていく。また崩れたら、その"constitution"を手放して、新しい"constitution"に組み直す。

よく、何か強烈な出来事や挫折を経験すると「考え方が変わる」という話を聞く。そちらのイメージ近いのだろうか。


少々考えに耽ってしまったが、どうまとめるか。
いずれにしても、自分は今、さしあたり立ち直り始めている。

立ち直った時の自分はどのような形をしているのだろうか。
その時の自分の"constitution"はどのようなものなのだろうか。

答えはいつも決まっている。

今の自分が一番素敵なのだ。





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