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みんなで持とう、モンスターの自覚

ドラッグストアに行きたくて、いつもは通らない駅前商店街へと向かった。
商店街の入口で不動産屋のお兄さんが踊るようにチラシを配っている。

元気でよろしい。

横を通りすぎるとき、
「チラシ、もらってください!がんばって作ったんです!!」
と言いながら、はち切れんばかりの笑顔でチラシを差し出してきた。

え、作ったの?本当に?

チラシの出来を確かめたくて一瞬受け取りそうになるも、まぁ要らんしな、と冷静になる。

「ごめんなさい〜」と断ると急に声を潜めて「家、買っちゃいましたか?」と尋ねてくる。

家、買っちゃいましたか?

今後、言われることもなければ言うこともないであろう台詞だ。
なかなかレアな言葉に巡り会えた。
家は買ってないし、買う予定もないけど。
だからチラシも要らんけど。

結局こいつは受け取らねぇとわかると、
お兄さんは元気に「ありがとうございまぁす!」と声を出して、
他の通行人にターゲットを変えた。

家が売れるかはさておき、そのコミュ力があればどこでも生きていけるだろう。

先日、美容師さんと「美容師業界に異業種からの転職組はいるのか」という話をした。結論、ほぼいないらしい。
免許も必要だし、技術職はホイッと転職できるもんじゃないよな。

逆に、美容師が別業界に転職することはあるとのこと。
多いのが不動産業界への転職。

美容師といえば接客のプロ。
その接客力を買われて、不動産屋さんから「うちに来ない?」とオファーされるらしい。
なんならお客さんとして髪を切りに来た不動産屋が「きみウチで働かない?」と従業員を引き抜くこともあるんだとか。
頭を預けた相手を引き抜く。
これが本当のヘッドハンティング?

同じく美容院にて。
髪を洗ってもらっている間、お客さんの会話が耳に入ってくる。

小学生女児が
「ラプンツェルに憧れて髪を伸ばしてるの!」と元気に宣言したら、

美容師さんが
「うちの娘も同じこと言ってたよ〜」と返していた。

女児のお母さんが
「みんなラプンツェル好きなんですよね、かわいいですもんね」と合いの手を入れて、会話は盛り上がっていく。

ついこの間、人生で初めてラプンツェルを観た。
ラプンツェルが予想を上回るアクティブガールだったので驚いた。

引きこもりが外に出ていきなり人の輪に入れるわけがなかろう!
ソースはおれ!!ディズニーは引きこもりをわかってない!!
とプンスカしつつも、
それはディズニーではなくおれに問題があるとわかっているので、
それなりに楽しみながら無事見終わった。

ラプンツェルの話してる〜
いいないいな〜
と思いながら会話を盗み聞いていたわけだが、ちょっと待て。

ラプンツェルに憧れて髪を伸ばすの、おかしくない?

ラプンツェルのあの長い髪は不自由の象徴、まるで手綱だ。
どんなに遠くへ行こうともその長い髪は魔女に握られており、逃げることができない。
あまりにも長く伸びた髪の重みで、肉体的にも精神的にも、彼女は身動きが取れなくなる。

だから、呪縛のような長い髪から解放されるその瞬間にこそ、
人はラプンツェルに憧れるんじゃないか?
髪を失うことで、自由と真実を得る。
そこに憧れるんじゃないの??

あ、もしかして、「髪を切る瞬間の解放」を味わうために髪を伸ばしてるってこと?
長い髪のラプンツェルに憧れてるんじゃなくて、ラプンツェルみたいに長い髪をバッサリ切ってみたいから髪を伸ばしている。
髪を伸ばすのはあくまでも髪を切るという最終地点にたどり着くための過程にすぎない…そういうこと?

全国のラプンツェルに憧れて髪を伸ばす小学生女児に真意を問いたい。
でもおれの人生に小学生女児との接点はない。
あったとしても、少女たちを怖がらせずに真意を引き出すだけのコミュ力が、おれにはない。

もし、今、自分が美容院の片隅で花を咲かせているラプンツェル談義に参加できたとしても、場の空気を悪くせずに自分の考えを伝えるスキルがなさすぎて、黙って話を聞くことしかできないと思う。

そして、どうせ黙っているなら端から参加しなくていいか、という結論に落ち着く。

聞く内容に納得はできない。
自分が納得できるまで相手から情報を引き出すこともできない。
自分の考えを誤解されることなく相手に伝える技術もない。

何を聞いても腑に落ちないし、何を言っても伝わらない。
なら、初めから参加しなくていい。

そうやって、会話の輪から離れていった。

突然ですがここで、でびでび・でびる様の冷たい恋愛相談をどうぞ。

↑動画の1:06:00~から、マッチングアプリでマッチングしても、実際に会うところまでいかなくて悩んでいる人への回答が秀逸すぎる。

以下、超絶一部分だけを抜粋。雑メモなので正確ではない

おまえの話、おもんないんだと思うよ。

話がおもんないっていうのは、
たぶんわかりづらいんだよ、お前の話が。

モンスターみたいにカタコトになってんだよ、たぶん。

それか、モンスター界の話しかしないから、人間からすると
「え?今なんの話してんのかわかんない」みたいになってんだよ。

「この幼虫が美味くて~」みたいな話しても、
人間からすると「なんの話してんだろ」ってなるじゃん。

でびでび・でびるさま

おれの話すぎる。
すごいわかる。
わかりづらいんだよ、おれの話は。

「ラプンツェルに憧れて髪伸ばしてるの!」
「わかる!ラプンツェルかわいいよね!」

という会話に、

「ラプンツェルに憧れているっていうのは長い髪の彼女の容姿についてではなく、長い髪を切った瞬間に彼女が得た解放感に憧れてるってこと?髪を伸ばしてるのは容姿を真似るためではなく、髪を切るという行為を追体験したいから、という認識でおけ?」

なんて早口で突撃してみろ。

怖いだろ、そんなやつ。
何言ってんだこいつってなるだろ。

そうか、おれ、モンスターだったのか。

でびさまは本当にいいことしか言わない。
でびさまの名言についてもっと書き残しておきたいが、今日はもう眠いのでここまで。いつかやろう、いつか。

オデ モンスター
オマエ ヒト
オデ ヒト ナカヨクナリタイ

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