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【六寸刻文皿】の道行

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2020年に発表した「八寸丸皿 百果刻文」を小さくリサイズした「六寸丸皿 百果刻文」の道行です。様々なフルーツをレリーフ状に彫刻したデザインで、製法である「圧力鋳込」や「石膏型」…
本マガジンは「上出長右衛門窯の道行」からの抜粋です。月額500円/初月無料の「上出長右衛門窯の道行…
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2022年3月の記事一覧

【六寸刻文皿】の道行#9「春と塵(原形完成)」

こんにちは。上出惠悟です。 20数年前のちょうど今頃、金沢の高校を卒業した私は美術予備校へ通うべく親元を離れ、名古屋へ向かいました。卒業式が終わっても浪人を許さなかった父は、話し合いの末に「たまには手紙を寄こせ」と言って送り出してくれました。最初の手紙には北村という友人ができたと書きました。結局浪人中、私が父に手紙を書いたのはその一通だけだったように思います。これが私という旅のはじまり。その後の柴田との出会いも、親友や妻との出会いもこの特別な春からはじまりました。名古屋へ向

【六寸刻文皿】の道行#8「原形完成」

こんにちは。上出惠悟です。 日々確かな春の訪れを感じていますが、石川県は北陸らしい三寒四温の気候がまだまだ続いています。皆様のお住まいの地域はもう暖かいでしょうか。 本noteは「道行」と称して、上出長右衛門窯の新作制作の㊙︎作業日誌をお届けしています。ものづくりを”旅”と捉え、その旅路にご同行頂ける方(購読者)を募集しています。私たちがどのような考えも持ち、何を大切にしているのか、その一端を覗き見ることができるのではないかと思います。 さて、前回お届けした工程より5日

【六寸刻文皿】の道行#7「祈りと光」

こんにちは。上出惠悟です。 ”焼物”とは文字通り”焼かれた物”で、人がどんなに手ずから粘土を捏ねて成形し、何日掛けて絵付を施そうが、最後は窯の火で焼かねばなりません。窯で焼くことで粘土が石質になります。これを”焼成”と言います。磁器の焼成温度はおよそ1300度。焼いている最中の窯をご覧になったことがある方はご存知かも知れませんが、高温になると火は赤ではなく白くて眩しい光のようになります。ウイルスはもちろん、どんな生物も燃えてしまう光の洗礼を浴びて、見違える姿で窯から出てくる