新しい魔法使い

名前を言ってはいけないその魔法使いの姉弟を知らない人はいない。
名声をほしいままにしていた魔法使いの姉弟が死に、彼らの毒牙にかかってきた者たちの反乱が起こった。一気呵成に魔法の城の城壁は崩れ落ちた。
かつて、魔法使いに育てられた者たちは、崩れゆく城から暗い内に逃げ出す者、遠巻きに見る者、救いに立つ者と様々だった。
その時、私は城の外にいる目撃者だった。
燃える城の中から鳥が飛び立つのを、黒煙の上がる様子をみていた。
見上げていたあの美しい城が、燃落ちていく様子から目が離せなかった。
そこから動けずいたからか、身体からはなかなか焦げた匂いが消えない。
もうあの魔法使いは戻ってこない。だって、彼らは死んだのだ。
まだ城に残ろうとする者に、雨風は冷たく。私は同情の気持ちを抱いている。
それはもう一方的に雨風に吹きつけられ、心ない大衆に痛めつけられる魔法使いの子供たちの事を嘆いてしまう。
火の粉の降りかからないところまで逃げろと、願ってしまう。
ただ、彼ら自身はこんなことを言うのだ。
「いいよ、お前かっこいいよと、褒めてもらい、たくさん良い勘違いをさせてもらって育ってきた。今の若い子は誰も褒めてくれない中で、その子達を褒めてあげたいと思う。自分がやってもらっていたことを、今の時代の子供にやってあげたい思いとそれはとても難しいことなのだ」と。
この動画の中で。

このほっこりドライブ動画で号泣したオタク、私だけなのかい?!!!!!!!!!!
初見で泣き、思い出して風呂場で嗚咽し泣いたんだけど?!!!!!

わたしは死んだ魔法使いたちの真実は何も知らないし、刑事事件にも裁判にもなっていない何も公に開示されていない騒動とは、全く関係ない立場の中年女性ですがね、名前を言ってはいけないあなた方がかけてくれた魔法で輝く彼らのことが、大好きだよ。すくすくとのびのびと、あなた方のもとで育ち輝きを得て、一人で飛べるようになって、自分の世界をどんどん広げて飛び回っていく彼らのことを、あなた方があなた方の方法で大事に思っていたと思えて仕方がないよ。それは愛だったかもしれない、恋だったかもしれない、それもわからないし、思いを遂げただけかもしれない、片思いだったかもしれない、無理矢理で暴力的なものだったかもしれない。そのどれも違うかもしれない。あなた方はたくさん悪いこともしたかもしれない。親が悪かったら、子も同じように罰せられるべきなんだろうか。わたしは子供を育てて良い、そういう人間だろうか。わからない。そんなところまで飛躍して、たどり着くのがこの魔法使いの子供達が語るこれからの話なんだよ。

城の中に残る者達が、あなた達が自分に魔法をかけてくれたように、今度は自分が新しい魔法使いになろうとしているよ。
ただの目撃者である私がまだこの魔法の中にいる事を、育てられた子供達は鬱陶しく思うかもしれないけど、そしておそらく、あなた達がいるそこは魔法のない地獄かもしれないんだけど、自分が育てた子供たちが新しい魔法使いになろうと奮闘する姿を見て、「お前たちかっこいいよ!!!」
って思っていると良いなって思ってしまうんだよ。

新しい魔法使いによって、生みだされた子供たちが再び世界に現れ、健気に頑張る様子に、どうしてもまだ、わたしの心は熱くなってしまう。

わたしにかかったままの、この魔法もいつか解けるのだろうか。




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