ラグられた!!
ミームコインの世界に入ってすぐに資産が増えるという経験をさせてもらってホクホクしていたかあさん。
だけど、そんなにうまい話は長くは続かないのが世の常。
今日はミームコイン参入早々に手痛い洗礼を受けたお話です。
Devの不在
今となっては思い出すのも腹立しい、まだ「調べる」の意味がきちんと分かっていなかった頃のお話。
とあるコインを購入したのだけど、チャートが少しずつ元気をなくしていく。
まだミームコインを触り始めたばかりだったかあさんは、「まあその内上がるでしょ」と、じわじわ下がるチャートを呑気に眺めていた。
一方その頃、Crypto界隈でよく使われるSNSであるTelegram内に設置されたそのコインのコミュニティでは事件が起きていた。
Dev(コイン開発者)がTelegram上にまったく姿を現さなくなったのだ。
不安に駆られたホルダーからは不満の声が上がり、Devを信じるホルダーはその不満を抑えようとなだめたり説得したりで、Telegramは大荒れ状態となっていた。
それを知ったかあさんは「Devだって人なんだから、数日顔を出さなかったくらいでそんなに大騒ぎしなくても…開発してるのかもしれないし、体調崩してるのかもしれないし…」と静観を決め込んでいた。
ところがTelegram内での騒ぎは収まることを知らず、MODらしき人物はみんなをなだめようと一生懸命。
熱心なホルダーの中には「Devが不在でもコミュニティの力でATH(All Time High=時価総額の最高値)を目指そう!」と、多額購入する人まで現れた。
そんな一連の騒ぎを、かあさんは「大変だなぁ」と、まるで他人事のように眺めていた(今思うと、この姿勢がもうおかしいのだけど)。
一瞬の出来事
そんな騒ぎがしばらく続いたのち、突然、Devがテレグラムに姿を現した。
やはり開発に集中していたのが不在の原因のようだった。
コミュニティは安堵と歓喜に包まれ、Devの再登場をきっかけにチャートもわずかに回復し始めた。
かあさんも、止まっていたものが進むのだ、と期待を込めて少しだけ増資。
楽しみだなぁ…と思っていたら…。
Devの再登場からほどなくして、突如、師匠からメッセージが入った。
「いったん逃げて!」
一瞬で何が起きたのか悟った。
スマホに伸ばした手がガタガタと震えていた。
落ち着け。落ち着けワタシ…。
まだ慣れないPhantom Walletの操作法を、ぼうっとした頭で必死に思い出しながら「売り」を進めていく。
多くのホルダーが売りに殺到したせいかSlippageに引っ掛かり、何度か操作をやり直すことになった。その間にも価格はどんどん落ちていく。
うまく売り払えないことにイライラするよりも、見たこともないDevがほくそ笑む姿が脳裏に浮かんできて恐怖の方が勝った。
ついさっき、コミュニティのみんなに「戻ってくれてうれしいよ」と迎えられたあの人は、信じてくれた人たちを裏切る瞬間、どんな顔をしていたのだろう。
混乱しつつもやっとのことでコインを売り払った時には、かあさんが投じたお金は4分の1にまで目減りしていた。
(今思うとそれだけで済んだのはマシな方だったのかもしれない。)
手はまだ震えていたし、心臓は口から飛び出しそうなくらい高鳴っていた。
それから、しばらくウォレットに示された金額を呆然と眺めていた。
何が起きたのかは理解していたけれど、受け止めきれなかったのだ。
これが、ラグプル(Rug Pull) なんだ…。
改めてチャートを確認するとまっすぐにガクンと減っている赤い線が見て取れた。
下げ続けるチャートがDevの帰還で一瞬上向きになったところで、運営チームが手持ちのコインを一気に売り払って、文字通りこのプロジェクトを投げ捨てたのだ。
出口詐欺とも言われるラグプルは、嘆かわしいことに暗号資産の世界では日常茶飯事というくらい頻発している。
図らずも、ミームコイン初心者のかあさんが見事に被害に遭ってしまったというわけだ。
改めて確認すると、DexScreenerに貼られたコインのホームページはすでにリンクが切れていて、Xのアカウントも削除されていた。打ち捨てられたTelegramのコミュニティの中にはDevを罵る言葉が無数に飛び交っている。みんなを抑えるようにふるまっていたMODらしき人間も消えていた。
思い返してみると、おかしいな、と思うことはあった。
ホームページ上にはコインの紹介はされていても、技術面についての言及が一切なかった。ずいぶん簡素なつくりのホームページだな…と思ったのだ。
それこそが最大のヒントだったのだと今なら分かる。
だけど、「調べる」ことの意味を理解していなかったかあさんは見逃してしまっていたのだ。
なんて怖い世界なんだ。
こんなことがまかり通る世界なんだ。
そんなことが頭に浮かんできたし、指の震えはまだ収まらなかったけど、不思議ともう辞めたい、という気持ちにはならなかった。
「もっとちゃんと調べて、考えて、それからお金を動かすべきだった」
その反省だけが強く頭の中に残った。
ウォレットの残金を見てショックは受けたけど、ではどうすべきだったかを考えることが、この世界でやっていくためには必要なんじゃないかと思ったのだ。
(でも一瞬だけ「ちょっと立ち直れない…」とビールを煽ったりもしたけどね🍺)
嵐の後に思うこと
この事件はかあさんにとって大きな教訓となった。
自分の大切な大切なお金を預けるのだから、預ける相手のことをとことん調べたり情報を集めたりするのは当たり前のことなんだ。
誰かが「この銘柄は上がる」と言ったから、くらいの動機で買っていい銘柄なんか、本当はひとつもないんだ。
全部自分で決める
良い結果も悪い結果も全部自分で引き受ける。
それは実は生きていく上でのルールにも等しいと思う。
自分の人生の責任を誰かに取ってもらうことはできないのだから。
もしも調べて納得した上で買ったコインなら、たとえ悪い結果に終わったとしても、その結果ごと受け止めることができるのではないかしら。
そう思うのは、かあさんがまだまだ少額しか動かせない弱小トレーダーだからなのかな。
これが大きな金額となると、そんなに割り切れるものでもなかったりするのかな。
このことに答えを出すにはかあさんの経験値はまだまだ足りないのかも。
でも覚悟だけはどのステージにいたって決められる。
だから、かあさんは自分が手にするコインで何があっても「結果まで全部受け止める」覚悟でいようと思う。
それが初心者トレーダーの、せめてもの矜持になるのではないかと思うのだ。