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写真のキャプションってすごく大事3

1枚の写真には深いストーリーがある
前回前々回のブログで説明しましたが、写真のキャプションって短文のくせして手が抜けないほどムチャクチャ大事。実は前回に前振りした2枚の写真には、長いストーリーがあるのです。

1枚目はこの写真。

「サバンナに朝陽が昇り始めました。草原が黄金色に輝く最も美しい時間です」なんてキャプションではつまらない。キャプションをつけてみて!

この瞬間にシャッターを押した訳。
セレンゲティNPのセロネラ(中心部)はサバンナのど真ん中。グルメティ川に注ぐ支流が何本も流れ、川沿いには木々が育ち、回りには草原が広がり、岩山がそびえetc.。
様々な動物が暮らす絶好の環境です。そしてキャンプサイトはどうぶつ達の気配で満ち溢れています。

夜22時寝袋に入り、虫の音や葉のささやく音を聞きながら眠りにつきました。
「グォーッフ、グォーッフ」
夜中12時頃、オスライオンがテリトリーを主張する声が聞こえてきました。ビルや家など音を遮る物がないせいか、近距離に感じます。ここは柵もないキャンプサイト。大丈夫だろうか。

「グオウッ」
夜中2時。再びライオンの唸り声で目を覚ましました。
「グォアー」
2時半、さっきよりも激しい声で唸っています。ヌーが声をあげ始めました。
「グヌー、グヌー」
危険を知らせているのでしょう。仲間がそれに応えます。
「グヌー、グヌー」
回りの仲間達が騒ぎ出します。
「グヌー、グヌー、グヌー」
ヌーが走るヒヅメの音が暗闇に鳴り響き、タダならぬ雰囲気。真っ暗なテントの中で音を頼りにその光景を想像します。
「グォアー」
「グヌー、グヌー」



決着が着いたのでしょう。やがてサバンナは何事もなかったように静まり返りました。聞こえてくるのは虫の音と風の音だけ。

明け方4時頃、再びちょっとした騒ぎに起こされました。
「ウーッウォウ、ウーッウォウ」
興奮したハイエナ達の声がキャンプサイトまで聞こえてきたのです。ライオンが食べているヌーを狙って現われたのでしょう。ジャッカルもやってきたようです。
「ウーーウィッ、ウーーウィッ」
時折ハイエナやジャッカルを蹴散らすライオンの唸り声も響きます。音を聞きながらライオン達の光景を思い浮かべる。ああ、今すぐカメラを持ってそこに行きたい!国立公園のオープンまであと2時間。

そして早朝6時。待ちに待ったサファリに出発!
早速、昨夜の騒ぎの現場を探しに行ったのは言うまでもありません。

……そして見た光景がこれ↓

夜のサバンナで繰り広げられた野生動物達の物語、動物達の命の営みを僅か100文字のキャプションで書ける!?

短い文章って難しいでしょ? この1枚にはそんな長いストーリーがあるんです。

「サバンナに朝がやってきました。長い1日の終わりです」
かな。これでも伝わらないですね。「1日の終わり?」と、朝なのに始まりではない事に引っかかってくれればいいのだけれど、短い文章って本当に難しい。

サファリのガイドブックを作っている私としては、
「わーい。ライオンがいた~♪」
と目の前の動物を楽しむだけのサファリではなく、

<私達が眠っている間にも動物達は生と死を賭けて、このサバンナで生き抜いているんだ>

ということを改めて思い出して欲しいなぁ、と思うのです。せっかくアフリカまで繰り出して来たのだから。それを感じるだけでサファリが何倍も充実するよ!とサファリの楽しさをもっと伝えられるガイドブックにしたいのです。
キャプションって大事ですよね。

写真のキャプションってすごく大事1
写真のキャプションってすごく大事2
写真のキャプションってすごく大事4

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