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マサイマラNRのスターライオン ハンティングは苦手?
『まるまるサファリの本ver.4』ネタ探しの旅
2021年9月、ケニアのマサイマラNR 取材の旅に行ってきました。
主な目的はヌーの大移動と、群れを作るチーター“タノボラ”(当時4頭になっていてイネボラと呼ばれていました)。
それからタレック川を越えて“ムシアラ湿原”にも行く予定でした。
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ムシアラ湿原はイギリスのドキュメンタリー番組が撮影された所です。
番組に登場した湿原(マーシュ)をテリトリーにするライオンの群れ “マーシュプライド”の知名度は高く、欧米からのお客さんは当時、
「ライオンが見たい」ではなく、
「マーシュプライドが見たい」
「シーザーに会いたい」など、テレビで見た特定のライオンをご指名していたほど。名付けて「ライオン黄金期」。
特に人気だったライオンは、ノッチという名のオスライオンの息子達5頭と、四銃士と名付けられた4頭のオスでした。
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ライオンの寿命は約15年。2010年代の黄金期を過ごしたスター達はやがて命を落としていきました。特に大スターだった“スカーフェイス”が死んだときは、facebookのお知らせが何度も鳴るほど、ケニアからライブでその状況が伝わってきました。
スターがいなくなっても群れは健在。
2021年9月の取材当時、“ハーフテイル”と呼ばれるシッポが切れたオスライオンがマーシュプライドに君臨していました。
ムシアラ湿原に向かう予定だった最終日の朝に入ってきた情報では、
「今、マーシュ(湿原)は通行止めになっているそうだよ。マーシュプライドを探しに行くのはいいけれど、マーシュの奥にいたら見られないよ」
とのこと。
途中寄り道をしたため、マーシュに到着したのは午後3時。
やっぱり何もいない。1頭も見えない。マーシュの奥に入っちゃったのかな。
とりあえず遅い昼食を広げて車中で食べていると……、
「あ、ハーフテイルだ!」
100mほど先の木々が茂る一角にオスライオン発見! ランチを食べながら眺めていると、右手の草間から3頭のメスライオンが登場し、単独でいたバッファローめがけて走り出しました。
わ、いきなりハンティング!
メス達はバッファローをハーフテイルの方に追い込んでいく。頭脳戦か?
よし、ハーフテイル、行け!!
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ところが、突進してくるバッファローに後ずさるハーフテイル。
ダメじゃんっww かのマーシュプライドのオスだろ!!
メスはビビるハーフテイルの姿に「え?」って感じで一瞬立ち止まるも、再びバッファローを追いかける。遅れて追いかけるハーフテイル。
しかしやっぱり、思った通り、逃げ切られてしまいました。とさ。
↓残念なハーフテイル
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足が遅いライオンは、獲物にできる限り近づいて飛び掛かる。
という作戦をとるのだけれど、ソロリソロリと接近しているうちにバレて逃げられる、というのが私が今まで目撃した限りの結末です。
タンザニアでのある調査によると、人間がライオンの被害に遭うのは満月前後が多いというデータがあるそうです。
街頭がない地方のことなので、満月の夜は明るいため、夜に出歩いてしまうのが原因だろう、とされています。
で、私の仮説は……、
通常ライオンは夜~明け方の暗い時間にハンティングをしますが、ソロリソロリと獲物に接近しても、満月の夜は明るいからバレてしまう。そのため満月前後はお腹を空かせていて、人を襲うことが増えるのではないか?
そしてつまり……、
満月の前後なら、お腹を空かせたライオンが昼間にハンティングをする確率も上がるかも⁉ ←サファリ好きが考える都合の良い仮説ですが、私がハーフテイル達の狩りを目撃した2021年9月21日は、まさに満月の日でした。
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