サファリは今日もドラマチック・セレンゲティ国立公園
サバンナってね、ドラマにあふれているんですよ
テレビのドキュメント番組を見ていると、動物達が織りなす感動のドラマが描かれていますよね。干ばつを生き抜く姿や、自然の中で賢く生き抜く知恵、親に学び群れから独立する子etc.
そんな感動の世界を生で感じたくてアフリカまで繰り出す方も多いと思うのですが、2泊3日ほどのサファリではそんなドラマなんて無い無い。
って思っていませんか?
サファリ中は、
「ライオンだ!わーい♪」とか、
「チーターがいた!ラッキー♡」とか、
目の前に動物が現われるとムチャクチャ興奮してしまい、目の前の動物だけに夢中になってしまう。
ドキュメントのような “感動の野生の世界”ではなく、目の前のライオンやキリンだけに心を奪われてしまい、視野が狭くなってしまいがちです。
でもライオンもキリンも、この広大なサバンナで生きているんですよ。動物園のように個々の檻の中ではなく、様々な命と関わりあって、日々を生き抜いているのです。
2023年夏 タンザニア取材
2023年夏も前年に引き続き、タンザニア側から見るヌーの大移動の取材でした。セレンゲティNPの中央部セロネラのキャンプサイトにテントを張り、ヌーがいる北を目指してドライブです。
朝、キャンプサイトを出ると10分も走らないうちに早速ライオンが登場しました。さすがセロネラ、ここはネコ科天国なのです。
3頭のメスライオンが身を潜め、トムソンズガゼルの群れを見つめていました。
しばらく観察していると、木の横にいたほうの1頭がトムソンズガゼルに向かって突進。あっという間に決着はつきました。
みんなで食べるにはトムソンズガゼルはちょっと小さ過ぎるかな。仲間の2頭はガゼルを倒したメスを見つめているものの、奪い取りに駆け寄ってくる気配はありませんでした。羨ましそうに見ているだけ。
倒した1頭が1人占めして食べるのかな。
ところがトムソンズガゼルを倒したメスは何か落ち着かない様子。腰を下ろして食べ始めるかと思えば立ったまま、何度も口でくわえては下ろし、獲物と格闘しています。
やがてトムソンズガゼルを口にくわえて歩き出しました。
あ、これはもしや!
そのライオンはトムソンズガゼルをくわえたまま、草地に消えてしまいました。姿がよく見えなくなったため、見物していた何台かの車はあきらめて、残りの2頭のライオンに向かって走りだしました。
いやいや、待って。これはもしやですよ!
「こっちのライオンを追っかけてください」
ドライバ―さんにお願いし、トムゾンズガゼルをくわえたライオンが歩いている方角に先回りしてもらいました。草地が開けた道路で待っていれば、ライオンは正面に現れるだろう。そして何よりも……、
多分だけれど、私の予測では、ライオンが向かっている先にお母さんを待っている子供がいるはず。
ライオンはこのあと、私達の車を越えて更に歩いて行きました。
多分あの草の中に赤ちゃんがいるとは思うけれど、草丈が高い所に隠れていたら何も見えない。
すると……、
子供達が母親の姿に気が付き、草の中から出てきたのです。
やったぁ。ラッキー♪
母親がトムソンズガゼルを下ろすと、チビ達は一斉に飛び掛かって食べ始めました。
草から出てきたときは、「ちび、かわい~♡」なんて思って見ていたけれど、子供達は獲物を目の前にすると可愛いなんてとても言えない。もう立派な猛獣です。グルグル、グォーと激しい声を上げながら獲物の争奪戦。
ライオンは“プライド”と呼ばれる群れで生活していて、仲間同士で助け合って生きています。狩りも協力して行い、皆で食べます。
でもこの時、このメスライオンは仲間にガゼルを分けず、自分で食べもせず、真っ先に子供の所に運んでいったのです。仲間達も子育てに協力していました。
「子供達は全部で6頭。全てが生き残ることは難しいでしょう。来年再びセレンゲティNPを訪れた時、この子供達の何頭が元気な姿を見せてくれるでしょうか」
――な~んて、私は心の中でNHKドキュメントのようなナレーションを語ったりして、ひとりサバンナのドラマに感動しています。タイトルは「母の愛!ライオンの子育て」かな(笑)
サファリで動物に出会ったら、目の前の動物だけでなく周りの状況にもちょっと目を向けてみてくださいね。サバンナは今日も様々なストーリーにあふれているのですよ。
アンボセリNPでのドラマはこちら↓
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