書籍の販売モデルの種類をざっくりまとめてみた
はじめに
株式会社mikanで事業開発を担当している宇波と申します。
これはmikan Advent Calendar 2022 8日目の記事です。7日目はkakkiによる「ローコードツールを導入して社内管理画面を構築した話」でした。少ないリソースで管理画面を構築したときのメリットや実際のアウトプットがどんなイメージかわかる記事になっているので、ぜひ読んでみてください!
日頃から出版社の編集者さんやライセンス担当の方とやり取りさせていただく機会が多く、今回の記事ではそこから得られた知見の整理も兼ねて、書籍の販売モデルのあれこれについて簡単にまとめてみたいと思います。
mikanでできること
英語アプリmikan(iOS , Android)は累計ダウンロード数650万を超えた英語学習アプリです。出版社様刊行の英語学習書籍を学習コンテンツとして掲載させていただくことで、BtoBtoCのモデルをメイン事業として展開しています。
長らく英単語学習に特化したアプリとして展開してきましたが、直近でTOEIC・英検等の問題演習機能、Audio Player機能など、新機能のリリースを重ね、アプリでできる英語学習の幅をどんどん広げています。
最近新たな機能として、Book Reader(電子書籍)機能をリリースしました(現在は一部書籍のみ対応)。
一般的な電子書籍リーダーとの差別要素として、書籍付随の音声を該当ページ上でシームレスに流すことができることが特長です。英語学習書籍はリスニング用の音声がセットになっていることが多いので、学習者にとってこれはかなり便利じゃないかなと思います。
これまでとBook Reader機能提携との差分
さて、Book Reader機能が出たことにしたがって、出版社様とmikanの提携における書籍掲載範囲に変化が生じました。
どういうことかというと、これまでは書籍のページをそのまま載せるわけではなく、mikanの「英単語学習フォーマット」や「問題演習フォーマット」などに落とし込める部分のみが掲載範囲だったため、「版権ビジネス」のような形で捉えていただくことが多く、比較対象は電子書籍ではないことが多かったです。
例えば英単語学習フォーマットでは、英単語とその日本語訳のみがmikan上に掲載されますが、書籍上にはある類義語などの解説や例文は掲載されません。
それに比べて、Book Readerでは掲載範囲が「書籍全体」になるため、比較対象が電子書籍に明確に変化しました。
これまでのやり方が通用しない側面も出てくるため、書籍のそれぞれの販売モデルについてまずは咀嚼する必要があるなと思い、出版社様へヒアリングもさせていただきつつ自分なりの解釈も加え整理しました。
書籍の主な販売モデルについて
書籍の販売モデルとして、今は以下4つが主流かと捉えています。
紙書籍
電子書籍 - 買い切り
電子書籍 - 読み放題(サブスクリプション)
版権
4. 版権については、販売モデルというより、マネタイズモデルといった方が正しいかもしれません。4つの中で一番イメージしにくいかと思いますが、例としては、mikanのように本の内容の一部分のみをアプリ化することや、もっとわかりやすいものでは、書籍内のキャラクターのグッズ化や他社とのコラボなども当てはまってくるかと思います。
4つそれぞれについて、主に出版社の目線で違いを整理してみました。
1. 紙書籍
収益発生タイミング
先払い
閲覧期限
永年
譲渡や貸出
容易に可能
1冊あたりの実質読者数
1人以上(譲渡や貸出容易なため)
1冊あたりの実質収益
定価を割る(実質読者数が1人以上なため)
何度繰り返し読まれても、積ん読であっても変わらない
定価について
再販制度があるため、値引き販売されることはほぼない
2. 電子書籍 - 買い切り
収益発生タイミング
先払い
閲覧期限
販売プラットフォームの存続期間中のみ閲覧可能
譲渡や貸出
しにくい
1冊あたりの実質読者数
ほぼ1人(譲渡や貸出がしにくいため)
1冊あたりの実質収益
ほぼ定価と同じ(実質読者数がほぼ1人なため)
何度繰り返し読まれても、積ん読であっても変わらない
定価について
紙よりは安価な設定になるパターンが多い
販売プラットフォームのセールなどで、値引き販売される場合あり
3. 電子書籍 - 読み放題(サブスクリプション)
収益発生タイミング
後払い(読まれた分だけのロイヤリティが入ってくる構図)
閲覧期限
読み放題を解約すると読めなくなる
譲渡や貸出
しにくい
1アカウントあたりの実質読者数
ほぼ1人(譲渡や貸出がしにくいため)
1アカウントあたりの実質収益
読む量によって、紙や電子の1冊あたり定価(から得られる収益)を割ることもあれば超えることもある
いかにじっくりと繰り返し読んでもらえるかが収益に関与してくる
定価について
書籍単体の定価という概念がなく、プラットフォームのプランなどによってユーザーへの提供価格は異なる
その他
紙や電子(買い切り)を買う動機にもなる=販促にもなりうる
4. 版権
組み先によって提携モデルがさまざま
1〜3のライバルになる場合もあれば、ライバルにならず副収入につながる場合や、販促にもなる場合もある
このように全体を整理すると、どの販売モデルにも一長一短あることが分かります。どの販売モデルを選択して売っていくかや、複数のモデルを組み合わせるかどうか、最注力領域などは、まさに出版社や書籍による特色が出る部分だなと思います。
読者目線から見ると、幅広い選択肢が提供されていた方がユースケースが増えるため、単純にその方がいいなと思ってしまいますが・・・!
3や4がmikanの提供領域として該当するモデルになりますが、1や2に比べるとかなり新しい考え方であり、浸透もまだまだだなという感覚があります。出版社様の社内にも先行事例がまだないことが多いので、社内での説明や体制の整備などにハードルがあるパターンが多いためです。(そんな中弊社と提携してくださっている出版社さまには本当に感謝です・・!)
とはいえユーザーとしてはこれまでのモデルとは違う便利さがあり、英語学習の選択肢を豊かにできる可能性を秘めていると思っているので、業界内での理解促進を今後もはかっていきたいなと思っています。
さいごに
普段何気なくいろいろな経路で書籍を購入していると思いますが、出版社やプラットフォーム目線だとこういう整理ができるんだよ、というのを書いてみた記事でした。
まだまだ整理しきれていないところや認識が浅いところもあるかと思いますので、お気づきのことがあれば、ぜひコメントやDMなどでご意見をいただけると嬉しいです。
さいごに、mikanでは一緒に英語学習をより良いものにしていくべくサービスを作っていく仲間を募集しています。ご興味のある方は、以下のリンクからぜひご応募ください。