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優しさに包まれたなら
映画『魔女の宅急便』で、初めて観たときからずっと、印象に残っているシーンがある。
キキが、森で暮らす絵描きのウルスラの小屋へ誘われ、共に向かう道中。レトロ感のあるバスに乗り込んだ二人が、車内でフーセンガムを分け合うシーンだ。
ウルスラが、フーセンガムの入った筒をキキに差し出し、一方のキキは落っことしてしまいそうになりつつ、ガムを受け取る。まん丸で、一粒がそこそこ大きい。ウルスラは少年みたいな笑顔で、キキにフーセンガムを膨らませる手本を見せる。
このシーンは、本編の流れにあまり影響のない、何気ないひとコマのように見える。
けれど同じ高山みなみさんが演じるこの二人のキャラの性格や生い立ちなどが、何となくこのひとコマだけでも滲み出ている気がするのだ。
都会慣れしていないながらも、一人の女の子として身だしなみも気にしたいキキと、男勝りで大胆で、けれど力強い優しさを持ったウルスラ。
初めて観た当時、私自身も実はガムをあまり食べたことがなかったので、もしかすると羨ましさもあったのかも知れない。
『魔女の宅急便』にはこのフーセンガムだけでなく、オソノさんが初めて淹れてくれるコーヒーや、美味しそうなパン。宅急便の仕事で知り合ったおばあさんが作る、焼きたてのパイなど、飲食物を通した優しさが沢山表現されている。
優しさなんて、所詮は綺麗事だと言う人も居るかも知れないけれど、綺麗事で良いじゃないか。綺麗なものの何が悪い。
こんなご時世に、わざわざ口汚い言葉を言ったり聞いたりするくらいなら、例えそれが作られたものであったとしても、私は綺麗なものに触れていたい。
このコロナ禍で、人が変わったように言動が穏やかになったり、優しくなった人がいる。逆に、別人のように荒っぽくなった人もいる。
私は、こんな時だからこそ、前者のような人を大切にしたい。