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いじめた事実は永久に残り続ける


午後四時。

次男が学校から帰宅した。いつもは元気よく聞こえる「ただいま」の声がない。

不思議に思って出迎えると、家の前に担任の先生がいらっしゃった。

男の子を持つ親御さんなら、経験されたことがある方も多いのではないのだろうか。担任の先生の急な訪問や電話があった際、「何かやらかしましたか!?」とヒヤッとする感覚。

ところが、今日はそうではなかった。

申し訳なさそうに、担任の先生が切り出した。

「休み時間に◯◯くん(次男)がトイレの個室に入っているとき、誰かから執拗にドアを叩かれ、その後トイレ用のスリッパを投げ入れられて、それが目に当たってしまったんです。目の方はすぐに保健室で見てもらい、痛みも無さそうでしたが、肝心の加害生徒が誰かわからない状態で…」

暑い中、次男と一緒に歩いて自宅までやって来て下さった先生の額には、びっしり汗が浮いていた。

なんとも言えず、悲しい気持ちになった。

我が子がそんな嫌がらせを受けたことは勿論、それをした生徒は名乗り出ることはなく、何の落ち度もない先生がひたすら頭を下げて下さっている状況に。

率直な意見を言えば、トイレのスリッパなんて不衛生なものを投げ入れる行為は理解出来ない。自分がやられたとしたら、理不尽さと不快感でブチ切れてしまいそうだ。

けれど、次男はそれをしなかった。勿論良い気分ではないだろう。今日帰宅してからは、明らかにいつもより元気がなく、毎日するゲームも全く触らなかった。

それでも、癇癪を起こすことも、名乗り出ない卑怯な相手にキレることもなかった。それはとても強くて、立派なことだ。

恐らく、今日次男に嫌がらせをした生徒たちは、軽い悪戯心からそんな行動に出たのだろう。学年主任の先生はかなりお怒りだったようなので、金輪際次男には関わらず、今日のことなんて忘れて日常を過ごすのかも知れない。


それでも一つ言えるのは、次男が受けた傷は、例え一度でも決して消えることはないということだ。

彼らが嫌がらせをした事実も、これからどれだけ月日が過ぎようが、消えることは決してない。彼らの記憶からは都合よく消えたとしても、私や次男の中にはきっといつまでも残り続ける。

この先もきっと彼らが名乗り出てくることは無いのだろうし、今回の件もやがて水に流されるのだろう。

けれど私は彼らの卑劣さと、そんな子供になってしまった環境を、哀れまずにはいられない。

同時に私も、より一層息子たちの日頃の様子に気をつけるようにしなければと、改めて胸に刻んだ。

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