テリウスに恋したのは私
最近、テレビを見る時間が極端に減った。というか、ほとんど見なくなった。
元々テレビはニュースくらいしか見ないのだけれど、最近はコロナ関連の話題ばかりだし、何よりメディアの偏向報道にうんざりしているので、いよいよ見る番組がなくなってしまったのだ。
これまでは朝と夜に報道番組を見ていたものの、知りたい情報があれば、今は自らネットで探すようにしている。
毎朝、何となく惰性で見ていた情報番組も見なくなり、適当にチャンネルを変えると、ローカル局でたまたま韓流ドラマが放送されていた。
私はこれまで、韓流ドラマを見たことがない。主婦層を中心に、女性に人気があるというイメージを持っていて、日頃日本のドラマですら見ない私はまずハマることも無いだろうと思っていた。
ところがどっこい。
見始めるとこれがなかなか面白くて、気づけば息子たちも一緒にテレビの前に集まり、見入ってしまっていた。
その時放送されていたドラマのタイトルは『私の恋したテリウス』。恋愛要素だけではなく、スパイ要素やアクション要素もあり、それらのハラハラする展開の合間合間に、程よく息抜き出来るコメディ要素もある。
ヒロインは、ある事件をきっかけに夫を亡くしてしまった主婦。男の子と女の子の双子の母親だ。
そんなヒロインの向かいの部屋に住んでいる、スパイの男性。彼がタイトルにある『テリウス』なのだが、一見何の接点も無さそうな二人が、ある事件を通して奇妙な縁で繋がっていくというストーリー。
私は残念ながらストーリーの中盤あたりからしか放送を見られなかったのだが(最初に見たのが7話あたりだった)、そこからでも十分入り込めるドラマだった。
ヒロインのキャラに嫌味がなくて良いし、スパイという立場柄、口数も少なく人付き合いに関してはとにかく不器用な『テリウス』が、女性の心をキュンとさせてくれる。なるほど、これは女性がハマるのもわかる、と思った。
このドラマの良いところは、二人の間に確かに愛が芽生えていく様子が描かれているのだが、キスシーンなどの露骨な触れ合いが全くないこと。
最近は日本のドラマでも、家族で見るにはちょっと躊躇するような、キスシーンやラブシーンなどが多数出てくるものが増えている気がするのだけれど、このドラマは精々ハグ止まり。
ただ、この作品独特の愛情表現が登場する。ヒロインが、子供たちと交わす『お鼻』。違いの鼻をすり寄せるスキンシップなのだが、これが所謂キスシーンの代わりになっている。私は、正直この『お鼻』の方が、キスシーンより何倍もときめいた。日々命を狙い狙われているようなスパイ男性の、精一杯の不器用な愛情表現。これはときめかざるを得ない。
これまで家族揃ってドラマを見ることなんてまず無かったというのに、『私の恋したテリウス』のお陰で、我が家は毎朝必ずテレビの前に集まるようになった。親子揃って、「今日も面白かったー! 続き気になるな!」と会話も弾む。これは、今回のコロナ禍において一番の収穫だったように思う。
今現在は『ゴー・バック夫婦』という韓流ドラマが、同じ枠で放送されている。
結婚し、夫婦互いに仕事や家事育児に追われる中ですれ違いが生じ、離婚した夫婦が自分たちが出会った大学生時代に、突然タイムスリップするという内容。
こちらは恋愛要素がメインなので、『私の恋したテリウス』とはかなりテイストは異なるのだが、二作に共通しているのは、とにかく子育て中の主婦は大変だぞということを作品を通して訴えてくるところ。個人的には、こういう部分が主婦層の心を掴むのかなと思った。
しかしこの『ゴー・バック夫婦』、冒頭では主婦の大変さが描かれていて、そりゃ妻は嫌になるよ…と思うのだが、ストーリーが進むにつれ、実は夫が素朴ながらも優しい人間であることがわかってくる。
これは夫婦間あるあるだと思うのだけれど、何年も共に過ごしている内に、沢山のことが『当たり前』になってしまっていて、お互いの小さな優しさや思いやりに、いつの間にか気づけなくなってしまう。「貴方は何もわかっていない!」となりがちだし、実際私も何度思ったことか。
けれど、このドラマを見ていて改めて気づかされた。私は夫のことをわかろうとしていただろうか、と。
このドラマ、ドタバタ恋愛ものでもあるのだけれど、随所にジンとくるシーンが散りばめられている。
出会ったときの気持ち。
付き合い始めた頃の気持ち。
結婚式の思い出。
子供が生まれたときの喜び。
共に暮らしていたからこそ、いつの間にか覚えている相手の好みや癖。
現実世界では、このドラマのように過去に戻って都合よくやり直したりは出来ない。でもだからこそ、やはり忘れてはいけないものはあるなと考えさせられた。
こちらは今週の金曜日に最終回を迎える予定なので、今後の展開も楽しみにしたい。
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