不可逆を知る
ごぶさたしております。早いもので桜が咲きはじめています。
いろいろあったのですが、まずこれを書かねば始まらないみたいなので、放流させてください。
これとは、
あっちとこっちの両親(子どもにとっての祖父母)に家族4人そろって会いに行く、です。
我が家にとっては一家で行動すること、そして一家で家族以外の人と会うことは一大事なのです。しかもあっちとこっちで2度もありました。
*
家族での遠出が難しくなってから早幾年。比較的遠方に住まう祖父母1とは長く会っていませんでした。特にユキ。
祖父母1の方が高齢でもあり、さすがにこのままではまずいということで、夫が口火を切りました。
「来月の〇日に家族で会いに行こうと思っているけど行く?」
と下の子ユキに尋ねました。
車で行くんですけど、
車って宇宙船くらいせまくて逃げ場のない空間で、その中で何時間も空気を分け合って過ごさねばならないんですよね。
直近の様子からして、上のアメやわたしとは無理なのでは…と踏んでいたんですけど、
答えはまさかまさかの「行く」でした。
うそだろーとあんぐりしました。
ご本人的に「後悔したくないから」ってことらしく、そこだけ聞けばごくごく真っ当で、高齢者へのいたわりなんぞも感じられて、成長の跡が見られるようにも思うのだけれど、
間髪入れず「そこから**(オタク的レアスポット)って近い?」と聞いてきて。
あーーーそっちかーーーそうよねーーー
情けないやら納得するやら。
方位的には同じだけど、通り道ではなくて、足を延ばさねばならないんだけど、そこに行きたいのね・・・
なにがしかのメリットがなければ動かないというか、ちょっと「えぇっ?」と思ってしまう利己的というか打算的な判断基準をお持ちである。
で、オタクスポット兼ねて祖父母1に会いに行くことになりました。
車内で対角に配置したとしても、アメとユキの距離が近すぎやしないかい?耐えられるのかい?
わたしは非常に心配だった。
むかしは、家族で出かけるのも、みんなで車に乗るのも、なにを考えるまでもなく「みんな一緒」が当たり前で、なんの懸念も抱かなかったのに…ウソみたいに変わってしまったことだなぁ、としみじみ…。
しみじみなのか?そこはしみじみでいいのか?
とにかく、その頃とは大きく変わってしまったのですよね。
当たり前は当たり前ではない、ふつうってやっぱり尊いわ。
一方、ユキの懸念は、どさくさに紛れてアメに話しかけられることでした。「一緒に行く」ことに合意したからって和解したと思うなよ、ということらしい。
そもそも。
一方的に始まったことなのに「和解」で合ってるのか?
なにをそこまで嫌悪するのか?
いろいろ問いただしたくもなるけれど、ひとまず保留して前進。
車内を仕切るカーテン的なもの(透明、簡単取り外し可、安価)を調達した。
マジ?って思う方もいるでしょうが、マジです。
本来の使い方は、エアコンを後部座席まで効かさなくていいように取りつけたりするものです。
が、ここでは心の距離を取るために使用。
物理的距離は変えられないけど、一枚間にはさむことによって、近すぎる感が若干緩和されるのではないかと考えました。
大マジメです。
そして次は各所への根回し。
アメにユキの懸念を発言通り伝えるのはさすがに気が引けて、
「わたしたちに話しかけてほしくないそうだから、絶対話しかけちゃだめだよ。道中も別行動するよ」って、やや解釈をねじ曲げて伝えました。
アメは「あーうっかり話しかけてしまう可能性はあるな!」と悟空並みのカラリとしたお答えが返ってきた。
これほどまでに毛嫌いされ、あれだけ緊迫した関係が続いていても「うっかり」があり得るんだな、君ってやつは!
そのうっかりしそうになるところもまた、アメのアメたるアレで。
言いにくくてもちゃんと言語化して念押ししておいてよかった。
もう一つは、祖父母1に我が家の今の姿を包み隠さずお伝えする。
ここ(ユキ)とここ(わたし、アメ)はしゃべりません。そんな状態をお見せすることは心苦しいのですが、どうしようもありませんので、なにもなかったように振る舞ってくださいますように、なにとぞお願いいたします~
さて当日。
祖父母との対面の場では終始にこやかに饒舌に話しておいでで。
何年分の愛想を使ったらあのようなことになるのだ?
はぁ?なにあれ?だれ?
心底、大層、驚きあきれました。
対面以外の、オタクスポット巡りはもちろん別行動。
道中食事をするときも別テーブルでお会計も別で、まるで赤の他人でした。
「こことここ、本当は家族」と店員さんが知ったらたまげるかなぁなどと想像しながら、人と人との関係性にはいろんな形があるものだということを、自ら体現しているのが、おかしいやら哀しいやら不思議な感覚でした。
無事祖父母1のミッションは終わり、次は祖父母2もなんとかしてうまく会うことができたら…と思っておりました。
祖父母1に会ったと聞けば、わたしたちの方には来てくれないの?となるでしょうし、人の気持ちって難しい。
お正月も近付いたある日、今年はいとこ一家が祖父母宅に来ないらしい、との情報をキャッチした。
「それなら行こうかな」(ユキはいとこが大の苦手)と言いました。
マジか。
祖父母2は、祖父母1に比べて経験不足というか、ふつうでないことに慣れていないというか、健全だった頃の記憶が強いというか、ちょっと危うい。
だから、ユキが祖父母1と会った時くらいのテンションで振る舞ったとすると、
「あ、大丈夫なんだ、治ったんだ、戻ったんだ」みたいに受け取ってしまって、慎重に行かねばならないところを踏み込んでしまったりする可能性大。
祖父母1の時以上にさらけ出して説明しました。
良さそうに見えても、それは無理してがんばっている不安定で不自然な状態だから、決して押しすぎないように油断しないように、ひらにお願いいたします~と。
さて、いざその日が来ると、ユキはまたしても別人格になっておりました。むかしみたいに、いそいそ手伝いなんぞしながら、機嫌よく立ち回っておられるわけですよ。
前も驚いたけど今日もすっげーな、と呆気にとられていました。
しかも今回はわたしにも話しかけてくるではないですか。
なにもなかったように、ふつうの家族みたいに。
んんん?なんなの、これ。
わたしは戸惑いました。
祖父母も事情を知っていて仲の良い振りをする必要はないのに。
演じなくてもいいのに。
気を遣われたのだろうか。
なんだかなぁ。
もはや喜ぶとかの次元ではなくなってしまっているので、残るはただ、わだかまりばかりなりけり。
*
そんなことこんなこともありつつ、その他のいろんなことも絡んだ末に、
わたしはわたしの人生を生きよう。
具体的には、更に「わたし」の優先順位を上げていこう。
今年のスローガンみたいなものをひっそりと掲げたのでした。
お読みいただいたみなさまありがとうございます。