小説チックな遊び
いつもより少し遅めの新快速。
いつもの特等席に腰をかける。
仕事終わり、SNSのチェックは欠かさない。
そうか、今日は土曜日だった。
同期の楽しそうな投稿。
大学生という名の自由を満喫している後輩の投稿。
みんな今日は楽しそうだな。
そう思いながら見る窓の外には、いつも通りの風景が広がっている。
最初は長いと感じていた通勤時間ももう苦じゃなくなっていた。
降り立つや否や、熱に身を包まれる。
さっきまでの楽園は嘘みたいだ。
汗ばみながら長い階段を足取り重く登ってゆく。
「疲れた」
不意に漏れた言葉。
この言葉だけは口にしまいとしていたのに、我ながら意志が弱い。
冬は人肌が恋しくなるというが、私の場合は違うみたいだ。
凍えそうな寒さではない、息苦しくなるほどの熱帯夜。
日に日に溜まるのは家族や友人ではないまだ見ぬ貴方に聞いてほしい本音。
朝の日課は12星座占いを見ること。
あれだけ食い入るように仕事運を見ていた私が、数ヶ月でここまで変わるものなのか。
ただいまと声をかけながら薄暗い部屋に明かりを灯す。
今すぐにでもベッドにダイブしたい気持ちを押し殺し、洗濯物を入れにベランダに向かう。
やってしまった。
最近はゲリラ豪雨というものが当たり前になった。
いつからこんな異常気象になってしまったのだろうか。
早起きが苦手な私の努力の結晶なんだぞ。
と思いながら、もう一度洗濯にかける。
仕事上食事の時間が不規則なこともあり、こんな日はサラダに豆腐に魚。消化に良いものだけを胃に入れる。
さながら朝食のような食事だ。
夜のルーティンを終えたところで、ベッドに潜り込む。
音が欲しくて動画を漁る深夜2時。
タロット占いを見つけた。
サイト側からおすすめされるもんだから、ついつい見てしまう。
しかし、どの動画を見ても、いいようにしか書かれておらず、当てにはならない。
そうだ。今度の休み、友人がお勧めしていたあの占いの館にでも行ってみるか。
いやいや、それでは相手の思う壺じゃないか。
たかが占い。されど占い。
辛口だと謳っている動画でさえ甘すぎる。
こうやって人は占いの渦へ誘われるのだ。
そんなことを考えていると気づけば朝になっていた。
平凡な冴えない1日が始まるだけでもありがたいこと。
なんて、思いながら日々生きるには荷が重すぎる。
大概の人間は次の休みのため、長い1日を耐えぬいているのではないか。
いつもより少し早めの新快速。
いつもの特等席に腰をかける。