【イジンデン:ハイケイ考察】阿弥陀堂
みなさん、こんにちは。イジンデンが好きな人、歴史が好きな人、建築が好きな人に向けて、この記事で、皆さんの好きがもっと深まるといいなって思います。ダイソー発のTCG「イジンデン」を遊んでいます。この「イジンデン」のカード「阿弥陀堂」について、建築史に少しだけ詳しい私がそのモチーフを考察していこうという記事です。
イジンデンとは???
「イジンデン」とはあの100均でおなじみ「ダイソー」さんが出しているTCG(トレーディングカードゲーム)です。
歴史上の偉人をモチーフとしたカードゲームです。いろんなイラストレーターさんがいろんなタッチで描いた偉人達を眺めるだけでも楽しいカードゲームです。そしてダイソーさんが出しているだけあって、お値段は100円(税込み110円)!!!
中でもブースターパック(5枚入り)が100円ならまだしも、スターターデッキ(40枚入り)すら100円!!!
ほかTCGに比べ、圧倒的安さです。
それでいて、ルールはデュエル・マスターズのようで本格派。
すでにループデッキや山札全引きデッキが複数確立されているなどとっても恐ろしい奥深いゲームです。
「イジンデン」のカードにはイジン、ハイケイ、マホウ、マリョクの4種類です。今回取り上げるハイケイはイジンやプレイヤーをサポートする効果を持っており、そのため歴史上の出来事や名所、建物、文化財などをモチーフとしています。
で、私、じつは建築学と歴史学の合体である建築史に少しだけ詳しいのです。そんな私があるカードのモチーフを考察していこうかなと思います!!!
イジンデンプレイヤー(ダイバー)、歴史好き、建築好きに楽しめるような内容を心がけるので、どうぞ読んでってください!!!
阿弥陀堂・・・???
で、今回考察するカード「阿弥陀堂」を見てみましょう。
「なんだ、普通の建物じゃん」と思うことでしょう。私も最初はカードの効果に注目していたため、何も気になりませんでした。
でも「阿弥陀堂」って阿弥陀如来の仏像を本尊として安置するための建物のことを言うんですよ。建物の名前ではあるんですが、どちらかというと建物の用途を示す言葉なんですね。
要は「APAHOTEL」ではなく「ホテル」、「ジョナサン」ではなく「ファミレス」、「スタバ」ではなく「カフェ」ということです。
で、皆さんの仏像を置いている建物のイメージの中にこんな横に長い建物ありますでしょうか。
また絵の右端を見てもらうと、真ん中の建物に似た造りの建物がチラッと見えます。
つまり、この真ん中の建物から横に伸びているのは建物同士を繋いでいる構造物となります。単純に考えれば「廊下」になるのですが、仏堂に付く廊下の多くは屋根のみの吹きさらしです。イラストでは壁に覆われているように見えます。
そうすると、この横に伸びているのは屋根アリの塀で、真ん中の建物は「阿弥陀堂」ではなく、なんらか門の可能性が出てきます。なんか入口っぽいとこあるし…
格のある寺院の門は門だけで素晴らしい屋根を持った価値ある遺構であることが多いです(西本願寺 唐門とか)。そうであれば、門から全景を映しているこのカード名は「〇〇寺」といった「その場所」の方が適切のはずなんですね。
でもそうじゃないということは、これは明確に「阿弥陀堂」ということです。
始皇帝に「執筆」能力を完全無効にする能力にする制作の人たちなら、明確にモチーフがあるはず…!
ハイケイ元ネタ考察
では、これは何なのか。考察にあたって、1点ずつ検証していきました。
ポイント①:カードゲームのメタ的考察
カードゲームはカード一枚一枚に効果があります。その効果を組み合わせて、自分を圧倒的に優位にしたり、相手のしたいことを邪魔して、勝利をもぎ取っていくわけです。この組み合わせを俗にコンボといい、さらにコンボができるカード同士のことや、そのカードたちと別のコンボができたり、そのコンボをより利用できたりするカードたちを「互いにシナジーがある」と言ったりします。このシナジーは日本語で相乗効果という意味です。
で、このシナジー効果を意図的に作るとき、カードのキャラクターにも関係性を持たせることがあります。他TCGだとカードゲームの背景世界やストーリーみたいなもの(種族とか出自とか)が設定してあることが多く、その中で仲間などの特別な関係性があったりします。ということで制作側の都合の部分からまず見ていきましょう。
イジンデンでは偉人との関係性ですね。実際、青のスターターでは美術家にして万能の天才「レオナルド・ダ・ヴィンチ」とその著作「モナ・リザ」にシナジーがあります。墓地利用の「ダヴィンチ」のために「モナリザ」でカードを墓地に送りながら、ドローができます。では、「阿弥陀堂」も同じ緑のスターターに収録されてるイジンに元ネタのヒントがありそうです。
しかし、阿弥陀堂は仏堂なので、神道である出雲大社の巫女「出雲阿国」とは関係がありません(効果にシナジーはありそうですが)。また他のイジンもほとんどが文化人で仏教に直接的な関わりは薄いです。唯一の僧のイジン「最澄」ですが、この人が開山となった寺「比叡山延暦寺」は「阿弥陀堂」こそありますが、屋根の形が全く違います。延暦寺阿弥陀堂は上から見たらほぼ正方形の方形型という屋根の形をしています。対してイラストは入母屋型の屋根となっています。意味もなく手間のかかる方にアレンジするとは考えられないので、元ネタは別にあると考えられそうです。
ポイント②:阿弥陀堂という時代性
阿弥陀堂というのは、その名前の通り、阿弥陀如来の仏像を本尊として安置、祀るための建物のため、浄土信仰とのかかわりを考慮しましょう。
浄土信仰は奈良時代から始まり、平安後期が一番盛んであったといいます。阿弥陀堂という名前を代表する一枚であるため、「最初の」か「最大の」あたりが、元ネタとしては扱いやすそうです。もしくは最盛期である平安後期の建物が考えられます。
「最初の」阿弥陀堂・・・東大寺 阿弥陀堂 天平一三年(七四一)
「最大の」阿弥陀堂・・・無量寿院 阿弥陀堂(最大級)
→ 現存せず
「現存の最大級」 ・・・本願寺(東京) 阿弥陀堂
どちらも資料のようなものが少なく、元ネタとするには心もとないです。
本願寺阿弥陀堂は廊下がありますが、片側のみ、また建物自体の高さは同等そうですが、本願寺阿弥陀堂は低層+反りの強いことによる高い屋根となっています。元ネタとは言えなさそうです。
ということで、いったん平安後期と時代を仮定します。
さて、平安の建物と聞くと貴族の住居のイメージが強いんじゃないでしょうか。建物同士を廊下でつなぎ、廊下の間にできた広い庭で蹴鞠に興じる。
あと平安の建物って朱いイメージないでしょうか。カードの「阿弥陀堂」も若干朱いんですよね。
あの横に伸びてるやつ、マジで廊下なんじゃないか???
平安時代で、廊下をもつ阿弥陀堂???
ほんとにある、そんなやつ?
ポイント③:建築史の観点から
建物と時代の関連性というのは、わかりやすい例えでいうと、コンクリートが使われていたら、近代建築といったもんです。
実は素材以外にも時代性が表れるんですね。その一つが構造技術です。じつはお寺は時代によって構造形式が微妙に違い、それがデザインに表れてくるんですね。昔は木を積み木にように重ねていって、どっしりと支えていたんですが、技術が進み、テコの原理で屋根の重さを支える方式も出てきました。それに伴い、デザインはより洗練されていきます。これは中国から取り入れられた方式で、鎌倉時代あたりで盛んなデザインとなります。
しかし、ここらへんは細かすぎるので、イラストにデフォルメするときに省かれることがほとんどです。
一応、「阿弥陀堂」には建物途中の横の部材(長押(なげし)ということが多いです)の上にちょこっと短い縦の部材が何本か見えるかと思います。これをだいたい束(つか)といいます。この束を用いたシンプルなデザインは日本昔ながらの和様と呼ばれる方式です。この方式は奈良~平安の建物によくみられるデザインです。
元ネタ考察:結論
実はあるんですね、平安時代で両側に廊下を持つ阿弥陀堂、さらには朱いイメージもぴったりです。
はい、10円玉でおなじみ、平等院鳳凰堂です。この鳳凰堂って後世で呼ばれたもので、もとは阿弥陀如来を祀る「阿弥陀堂」だったんですね。
鳳凰堂と呼ばれるようになった由来は左右の廊下と、後ろにある尾廊を上から見たときに鳳凰が翼を広げた形に見えるからとか、屋根のてっぺんにある金の飾り(しゃちほこのポジション)が鳳凰だからとかいろいろあるみたいですね。
細部を一つずつ見ると違いますが、私は「阿弥陀堂」の元ネタはこれだろうと睨んでいます。イラストの芝生だと思ってた部分、池だったんですね(笑)
おまけ:あのイジンとのシナジー
平等院鳳凰堂の関係者といえば、「藤原頼道」ですね。イジンデンではカード化もされています! だとしたら、当然シナジーとかも考えられているはず…!
赤の数少ない執筆持ち、その能力は父親である道長と同様にマホウ回収です。「阿弥陀堂」があれば、毎ターン回収できますね。
さらに一弾のカード内では、「阿弥陀堂」のレベル4は「ファイナルアタック」、「ギャザリング」以外のすべてのマホウを回収可能です。
お父様を超える効果を得ていますが、色が違うというのは、少し気になります。
今後、緑の「藤原頼道」が最凶の【召喚時効果】や「執筆」を引っ提げて、登場するかもしれません。楽しみですね。
阿弥陀堂_カード解説
いちイジンデンプレイヤー、いやダイバーとして、このカードの使い方を紹介します。この記事で「阿弥陀堂」に興味が沸いた人はぜひ使ってみてください!!!
まずはカードをもう一度、見てみましょう。
といったカードになっています。さて一目、見ただけでは
「なんでわざわざだしたカードを戻すのか」
と思いますよね。
でもこれ、他のカードや状況に合わせて、いろいろ使える。非常に器用な効果なんです。一つずつ紹介していきますね。
使い方①:召喚時効果の使いまわし、再利用
使い方①は【召喚時効果】の使いまわし、再利用です。通常出したら終わりの【召喚時効果】を阿弥陀堂で手札に戻すことによって、再度召喚して、もう一度使用できるということです。では具体的に見ていきましょう。
・「卑弥呼」は、自分の山札の上から1枚を魔力ゾーンに置きます。レベルを相手より早く上げることができますね。そうすると、相手よりレベルの高いイジンを出すことができます。
・「清少納言」は相手のイジンを魔力ゾーンに置きます。魔力ゾーンに送るタイプの除去です。破壊と違って、パワーやレベルなどの制限なく除去ができるのが強いですね。ただ自分の魔力ゾーンにある色限定となっています。
・「行基」は出したときに、自分のハイケイの数だけドローします。これでデッキのキーカードを引いて、勝負を決めに行きましょう。この時、イジン召喚権を+1できますので、「行基」の効果で「行基」を引いて、引いた「行基」を召喚し、さらにドローできます。これで手札を増やしながら、自分の戦場に行基をはじめとした大量に並んだイジンで殴り倒す、いわゆる「行基ターボ」というデッキがありました。
また緑以外のイジンを戻すこともできます。
・「藤原道長」は自分のマホウを手札に戻せますので、阿弥陀堂と道長が自分のターンの開始時にあれば、毎ターン同じマホウを使い続けれますね(もちろんコストがあれば…)。もし魔力ゾーンに2色以上あれば、使い続けられるマホウが増えます。これにロマンを感じてしまった人は「道長ループ」と調べてください。
・「メアリー1世」は相手の手札を見て、マリョクカード以外の好きなカードを捨てさせることがっできます。「織田信長」、「円形闘技場」、「チャンピオン」など使われると負けそうなカードを使えないようにしてしまいましょう。これが毎ターンされると考えると、ゲームしたくないですよね(笑)
使い方②:「執筆」を毎ターン使う
ハイケイを置いたときに発動する効果は、逆に言うと「手札にハイケイがないと使えない」効果になります。でも、阿弥陀堂でハイケイを戻してしまえば、「執筆」は毎ターン発動できることになります!
そして何より「阿弥陀堂で阿弥陀堂を戻せる」んですね。つまり阿弥陀堂があれば無限執筆編に突入します。
では恐ろしい書き手の皆さんのご紹介です。
・「ストウ」はハイケイが出されたら1ドローします。ハイケイが出たら出ただけ1ドロー、自分の戦場にストウが2人いたら、ハイケイ1枚で2ドロー、これが1ターンに何回も使えます。ドローしたら、バトルを行えないのですが、これは相手のターンにも使える、つまり相手をバトルできなくさせることができちゃいます。これがレベル2? えぇ…。
・またお前か「清少納言」、こいつの執筆は魔力ゾーンのカードを手札に戻します。つまり相手が使えるカードのレベルが下がったり、マホウのコストを準備できなくなります。そこに「阿弥陀堂」があれば、相手は永遠に魔力が増えません。しかし、実戦ではそこで終わりません。ハイケイは1ターンに戦場に置ける制限がありませんので、相手の魔力ゾーンが0になるまでハイケイを置きます。あとは死を待つのみ…
・「紫式部」はハイケイが出されたら、相手のイジン1体を魔力ゾーンに送っちゃいます。制限はありません。なんでも無力化します。相手の戦場が空になるまでハイケイを並べましょう
使い方③:魔力ゾーンに行ったカードの回収
「阿弥陀堂」が戻せるカードには、魔力ゾーンのカードもあります。
これまで紹介した「清少納言」の【召喚時効果】、「紫式部」の「執筆」、マホウ「エイジング」で魔力ゾーンに行ってしまったカードを手札に戻せます。一度、魔力ゾーンに行ったカードは手札に戻す方法が少ないため、魔力ゾーンに送るカードが制限が緩いこともあって、強いんですね。「阿弥陀堂」はその中で恒常的に魔力ゾーンからカード回収できるカードになります。ただ3枚のためだけに? と思いますよね。そこで次のカード。
いわゆる種マリョクですね。こいつらは魔力ゾーンに置くと山札の一番上を魔力ゾーンに置けます。魔力ゾーンのカードはガーディアンと違って、自由に中身を確認できますので、種で魔力ゾーンに引っ張ってきて、「阿弥陀堂」で回収となんちゃってドローができます。魔力が減るので、扱いは難しいですが、状況に合わせて、好きなカードを選べます。使わない間は魔力として、使いたくなったら回収!ととても器用です。
緑は魔力を増やすことが得意なので、1ターンに種を1枚以上置いて、デッキの中に眠っているカードを強引に持ってきましょう。来ないようなら、置いた種をもう一回使ってもいいですね。
ほかにも最初に紹介した「卑弥呼」や緑のマホウ「グロウ」でも魔力ゾーンに裏向き魔力を増やせますね。
使い方④:ガーディアンの回収
「阿弥陀堂」は、戦場のカードを戻すことができます。で、この戦場のカードとはガーディアンも含まれます。
自分を守るガーディアンをわざわざ減らすなんて、負けるじゃないかと思うかと思います。この使い方も現状、ガーディアンを手札に戻すカードの少なさによるものと思っていただければと思います。
でこちらは、蟹江市にあるトレカショップなかまのZIZさん(間違っていたらごめんなさい)から教えていただいたもので、その発想はなかったと感動したので記述する、いわば私の備忘録、日記のようなものだと思ってください。
今のイジンデンで、ポピュラーなデッキタイプと言えば「徴募」デッキがその一つだと思います。その徴募デッキはおおむねピョートル大帝を軸に据えた青メイン、黄色を少し混ぜたデッキが主です。(トップ帯では黄色は「曹操」くらいが多いようです(2024年8月時点、肌感))そのデッキに入りがちな除去カードがこの「メロウ」です。レベル制限のみで相手のカードをガーディアンにして、無力化します。
これを救い出す方法が「阿弥陀堂」による回収ということです。
おわりに
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
阿弥陀堂の元ネタは本当に平等院鳳凰堂なのか。なにか考察に進展があれば、また書きます。
この記事で皆さんの興味が広がってくれたらうれしいです。
画像引用元
カード:https://one-draw.jp/ijinden/cardlist.html
平等院鳳凰堂:https://www.byodoin.or.jp/learn/architecture/
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