読書メモ「地球上の中華料理店をめぐる冒険」

地球上の中華料理店をめぐる冒険 〜5大陸15カ国「中国人ディアスポラ」たちの物語〜
関卓中(ちょっく くわん):作者は日本で暮らしたこともある香港生まれカナダ在住の映像作家
斎藤栄一郎 訳

この本、実に読み応えのある本だった。世界各地にある中華料理店、そのオーナーとファミリーのルポルタージュだ。
例えばマダガスカルでは「スープシノワーズ」が国民食として根付いていたりする。南米でも。その裏には故郷から渡った人たちがいる。泳いで出国して亡命したり、死んだ人の戸籍を買ったりと生きるために命懸けで新天地を求めた人たちは、新たな土地で中華料理店を開きその土地に根ざしていく。その人と家族の苦難と強さを辿る本だ。

自分はインドを旅行した時に、これは明らかに中華料理なのではと思うメニューを見かけたことがあった。かねてより不思議に思っていた「インドにある中華ぽい食事」は、移住した華僑たちが職業を限定されたり時代によっては迫害された歴史のなかて、食の特性が強いインドで食べ物もローカライズされ根付いたものだ。
20年以上前にブルガリアではクリスマス前後に開いていたのは安宿の隣にあった中華料理屋だけだった。箸を欲しいと言ったら奥から長さの揃っていない橋が出てきて、後ろで賄いを食べている東洋人顔をした家族らしき人たちはスプーンとフォークで食べていた。いつから箸を使わなくなったのか彼らの歴史を考えたことがあった。

様々なストーリーがヨーロッパ、中近東、南米に人の数だけあるのだろう。食べ物の背景にある生き抜いた人の歴史を興味深く読んだ。

印象に残った章

  • マダガスカル。文章を読みながら南国の緑と光とコロニアル風の風景、色鮮やかな料理が目に浮かんできた。

  • イスタンブール

  • イスラエルの華僑。娘はイスラエル軍に従軍。

  • トロムソ(ノルウェー) 北極圏にも中華料理屋がある驚き

  • インド ムンバイ、ダージリン、コルカタ。迫害の歴史。

  • ペルーは中華料理屋が多い

  • 最終章は日本の最新中華事情。昨今流行りのガチ中華にも詳しい。

  • 巻末で知ったイギリスと中華

    •  イギリスで中華が普及したのは、BBCで「ケン・ホム」さんという人が出演した料理番組があったからだという。出演し中華料理の布教につとめ、「英国家庭の65%が中華鍋を持つに至った」という。日本で言うなら陳さんみたいなものだろうか。(でもレストランオーナーではない)

この取材はもともとドキュメンタリー映画を作るためのもので今はYouTubeでいくつか見ることができる。今もお元気だろうかと思いながらトリニダード・トバゴの章を見た。

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