STORY2 クマ―ムのXmasスープ 2024/3更新
毎年クリスマスになると、クマ―ムの森の広場ではお祭りが開かれます。正確に言えば、彼らはクリスマスでなくとも毎月何かにかこつけてお祭りをしているのですが、ツリーの飾り物があったり、お祭り会場でふるまわれるごちそうの他に、特別な料理を各自持ち寄るのが他の月のお祭りと違う所です。
特別な料理とはスープです。とってもおいしくて食べるとどんな病気も治ってしまうすごいスープです!各家庭(※1)で秘伝の味が受けつがれてています。スープの材料がそろうのがクリスマスの時期だけなので、年に一度しか食べられません。肉や野菜がたくさん入っています(※2)。どんなレシピなのかはクマ―ム族の秘密な模様。
そして、今年もその時期がやってきました。クマーム(※3)からその事を伝えられた男の子は言いました。
「すごいスープがあるんだね、僕の家では七面鳥を焼くんだけど、クリスマスの日はおたがい料理を持ち寄って一緒に食べようよ!」
クマ―ムは断りました。クマ―ム族の掟で別の生き物にそのスープを分けてはいけないのです。男の子は残念な気持ちになりましたが、クマ―ムはもっと残念な気持ちになりました。
それでもクリスマスの夜は男の子のお母さん特製のチョコレートケーキをいっしょに食べる約束をしていた2人ですが、厳しい寒さのためか、男の子は前の日に風邪をひいて寝込んでしまいました。
クリスマスのお祭り当日に森の広場で男の子と待ち合わせをしていたクマームですが、男の子は一向に現れず…。とにかく話が大げさでもりもりな 鳥、ガっちょん (※4)から男の子が病気で寝込んでいる事を聞きました。
クマ―ムはたいへんにびっくしてから思いました。クマームのスープを男の子に食べさせてあげれば病気なんてすぐに直ってしまうぞ!と。一度そう思ったらスープを食べさせてあげたくてもうどうしようもありません。
人間にスープを持っていくことが家族や他のクマーム族にばれないように、こっそりと秘伝のスープを作り始めたクマ―ムです。料理はへたくそですが、緑のエプロンを腰に巻いて頑張りました。肝心の材料もなんとか調達できた(※5)みたいです。
もう外は真っ暗で、吹雪が吹き荒れる(※6)中、クマ―ムは歯を食いしばって男の子の家に向かいます。あまりにも寒いので鼻水が、スープがおいしそうなのでよだれもでてきました。スープは重いし逆に熱いし、坂道も急なのでさらに大変です。エプロンは風で飛んで行ってしまいました。
男の子の家のすぐそばに来た時、クマームは急坂の階段から足を滑らせて転げ落ちてしまいました。
ああ!大事なスープが!!スープの容器はそのまま転がって、男の子の家の横のとても大きな枯れ木に中身がぶちまかれました。
ちょうどその時、男の子が通りかかっていて、転げ落ちてくるクマ―ムをみてびっくりしました。男の子はちょっと風邪気味ではあったものの大したことはなく(※7)、だいぶ遅れたけどクマ―ムの森へ向かおうとしていたとの事。「クマちゃんありがとう!もう僕元気だよ!」
いつのまにか雪もやみだし星空が見えてきました。2人は大きな木をクリスマスツリーに、星々を食べ損ねたごちそうやお菓子に見立てて話を咲かせます。男の子のお母さんが作った温かいココアを飲みながら、スープもいいけどココアもいいなと思って幸せな気持ちになりました。
おや、クマミュウが何かをもって走ってきます。足元が悪い(※8)ので気をつけましょうね!
おしまい
脚注
※1 クマ―ムは不老不死で男女の区別がなく、子供も産まないので本当の家族ではないのだけれど、家族ごっこをして何匹かで一緒に同じ家に住んでいます。なんとなくお父さん・お母さん・子供っぽいクマ―ムが集まって家族ごっこをしているだけみたいですよ。面白いですね。
※2 何の肉でなんの野菜なのかは不明。ジャングル大帝から続く、動物の森あるある事案。なお、クマームは雑食で、ジャンクフードがお好き。油マシマシ、糖質モリモリ。と思いきや、道端の草を食べている事も。
※3 ピザ好きの黄色い奴。クマームを個人名称として使う場合は彼の事を差すん。本名は アンドレ・クマーム・太郎…かもしれない。(作者の気まぐれで変わっちゃうかも。)
※4 ガっちょんも森の妖精で、赤い鳥の姿をしています。郵便や伝言の仕事をしているのだけど、よく間違ったというか大げさに情報を伝えてトラブルを起こす事が多いんです。この間もクマームの森が大騒ぎになったんですが、それはまたのお話で。
※5 それにしてもなんの肉なんでしょうね。
※6 クマ―ムの森の中心、特に広場はいつでもちらちら雪が振る程度なんですが、森から外に出て離れるとしばしば激しい風と雪になります。なので人とクマ―ムの遭遇も少ないのです。がんばれ!サンタクマ―ム!
※7 ガっちょんさあ…。
※8この後、どうなったでしょう?
クマ―、クマ―クマ―!