「チャーリーとチョコレート工場」(2005年)
原作はロアルド・ダールの「チョコレート工場の秘密」(1964年)
ウィリー・ウォンカが自分が経営しているチョコレート工場に子供たちを招待する。世界中でたった5人というプレミアムチケットだ。
貧しい家族とともに暮らすチャーリーは幸運にもそのチケットを手に入れ、おじいさんと一緒に工場見学に行く。
中に入ると、そこは工場というよりは遊園地のような場所だった。見たこともないような光景を目にして、子どもたちは羽目を外す。そして、自業自得とも、ウォンカの策略にはまったともいえるように、脱落していくのだった。
わがままな子どもたちと対比されるのが、貧しいチャーリーだ。彼は欲望の赴くままに生きるのではなく、ウォンカの指示をちゃんと聞く。こういう少年が最後に褒美を手にいれる。というプロットを見ると、やや教育的な映画ではある。本作ではチャーリーの家族に対する向き合い方と、ウォンカのそれが対比される。チャーリーはウォンカに家族がなんたるかを教え、ウォンカはそれに対する礼を与える。
ジョニー・デップはウォンカを演じるにあたって、マイケル・ジャクソンを元ネタにしたと思われる。あの雰囲気をそのまま演じていて、やっぱりうまい俳優なのだと感心した。
感心したのは物まねがうまいからだけではなく、ウォンカのモデルにマイケル・ジャクソンをチョイスしたからだ。
ネバーランドと称する自宅兼遊園地に住んでいたあのポップスターは、家族とのトラブルにも悩まされ続けていた。その人物を、ウォンカに当てはめるというのは、絶妙なチョイスだ。
ジョニー・デップ本人のプライベートにも平穏な日々が訪れることを祈っている。
ロアルド・ダールのひねくれた世界観と、ティム・バートンらしいダークファンタジーは相性がよく、チョコレートでいえばビターテイストな仕上がりになっている。
初期のティム・バートンは手作り感があって、あか抜けない感じが個人的にはイマイチ気に入らなかったのだが、「PLANET OF THE APES 猿の惑星」(2001年)あたりから、いかにもハリウッド映画っぽい絵作りをするようになってきた。矛盾することを言うが、映像が洗練されることで、ティム・バートンらしさが失われるのは嫌だった。しかし、ティム・バートンはティム・バートンのままだった。技術が向上しても、ダークファンタジー好きなお絵描き少年のような世界観はそのままだった。
スタジオにあれこれ言われて、結局映画そのものがめちゃくちゃになってしまう監督もたくさんいる中で、ティム・バートンの作品はいつもティム・バートンだ。
本作に名を連ねる製作会社は「ワーナー・ブラザース、ヴィレッジ・ロードショー・ピクチャーズ、ザ・ザナック・カンパニー、プランBエンターテインメント、テオバルト・フィルム・プロダクションズ、ティム・バートン・プロダクションズ」。ティム・バートンは自己資金でインディペンデント映画を作り続けているわけではない。
それでも常にティム・バートン作品を作り続けられるというのは、驚異的なことだ。
本作は制作費が220億円。興行収入は697億円。30億円というのが大ヒットの目安だから697億円といえば、ものすごいヒットなのだが、制作費が220億円もかかっていても、満足できる数字なのかどうか、というは気になる。