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アメリカの歴史を踏まえて「エイリアン3」を読み解いてみる。

監督 デヴィッド・フィンチャー
出演 シガニー・ウィーバー
公開 1992年5月22日
製作費:76億円
興行収入:240億円

前作が1986年に公開されているので、本作は6年後に公開されている。デヴィッド・フィンチャーの監督デビュー作だが、シナリオの段階からトラブル続きだったようで、本人は自分の作品として認めていないという。よっぽど懲りたのか、その後はSFを撮っていない。しかし、非常にスリリングな映像を楽しめるし、犬から生まれて四つ足で疾走するエイリアンという新しさもある。
なによりも注意深く読み解くと、前作を尊重しつつアメリカの時代の流れとしても忠実な続編であることがわかる。

・あらすじ
LV426惑星でエイリアンをせん滅した宇宙船スラコ号は謎の事故が発生し、脱出艇が放出された。リプリーたちは冷凍睡眠状態のまま、ウェイランド・ユタニ社所有の囚人惑星フューリーに墜落。リプリーだけが生き残った。
脱出艇に潜伏していたフェイスハガーが犬に寄生し、エイリアンが生まれる。
囚人たちが次々と襲われていく。

1988年頃にはシナリオの製作がはじまっていた。最終稿がいつ仕上がったのかは不明だが、1990年には撮影がはじまっているとして、1991年公開の「ターミネーター2」に似ている部分があるのはおもしろい符合だ。

それはさておき、本作では囚人惑星では、天然メタンを燃料として、核廃棄物用のコンテナをつくる鉛の板を作っている。映画が公開された当時1990年はアメリカ経済が後退しており、鉄鋼業も縮小していた。本作でもそのような社会情勢を反映しているようで、ウェイランド・ユタニ社が収容所を閉鎖する決定をしたにもかかわらず、囚人たちが残ったという設定になっている。全盛期はもっと人数がいたのだろう。
本作でも核兵器の話題が出てくるわけだが、映画を作っていたであろう1990年にアメリカとソ連は核実験は地下核実験に移行し、放射能汚染は地下に限定された。当時は核がかなり重要なトピックだったと思われる。

そのような前提で、本作をさらに読み解くヒントは、囚人たちが信仰する宗教にある。
作中で医師のクレメンスが「黙示録にもとづいたキリスト教原理主義のようなもの」と説明している。これがキリスト教右派を指しているとすると、「エイリアン2」につながる道筋が見えてくる。

「エイリアン2」については下記に書いた。

それを踏まえて下記はアメリカの歴史と「エイリアン2」以降の流れを読み解く。

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