「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」(2007年)
5作目、つまりハリーがホグワーツで5年生になったということだ。
本作は物語の展開もかなりダークになっている。
物語としては下記のようなもの。
人間の世界にディメンターが現れ、それを撃退しようとして魔法を使った。
それが原因でハリーはホグワーツを退学を通達される。
しかし、「不死鳥の騎士団」が迎えにきて、隠れ家に移動する。
どうやら、ハリーの退学には、魔法省がからんでいるようだ。
そして、ホグワーツに新しい教師がやってくる。魔法省から派遣されてきたドローレス・アンブリッジだ。
彼女は学校を改革しはじめるが、その背後にはヴォルデモート卿の復活があるようだ。
今まではヴォルデモート卿という存在がどこかぼんやりとしていて、彼の影響下にある人物や信者みたいな存在がハリーを攻撃してくる、という印象だったが、前作で不完全ながら復活の予兆が見られた。そのこともあって、ラスボスが明確になってきた(「賢者の石」の冒頭でヴォルデモート卿がラスボスであることは語られていたのだが、実体がないと印象が薄い)。
ヴォルデモート卿の存在が濃厚になってくると、物語のトーンが暗黒化してくる。英雄譚では死の世界を旅するパートが設けられており、本作あたりから、そういうパートになっている。
もはや「賢者の石」の頃の子どもらしい明るさは皆無であり、ダークファンタジーになっている。
本作の製作費は222億円。興行収入は1,395億円。前作「炎のゴブレット」よりも製作費は5億円ダウン、興行収入は100億円アップしている。これはハリー・ポッターシリーズ中の4位。1位は「死の秘宝 PART2」、2位は「賢者の石」、3位は「死の秘宝 PART1」。つまり最初と最後を除いた、中間のエピソードでは一番売れたということだ。
かなり暗い話だと思うし、シリーズものでは徐々に売り上げが落ちていくのが普通なのに、5作目にしてこの人気というのは、すごいことだ。もちろん映画の売り上げは、プロモーションや、競合作品次第というのもあるので、作品の質が良いからだ、とは言い切れないが、ダークファンタジー好きとしては、このあたりからパワーアップしてきた感がある。
そして、宿敵の姿が明確になってくると、ハリーは戦いに身を投じ、仲間を巻き込まないようにする。ここで、ハーマイオニーたちはハリーに仲間とはなにか、ということを伝える。
本作がいかにおとな向けのダークファンタジー路線になってきたとはいえ、伝えるメッセージはただ一つ「きみはひとりではない」ということなのだ。
強い問いは強い物語を生み出す。J・K・ローリングの抱えていた孤独の深さは想像もつかないが、それゆえに彼女はこの物語を生み出せた。人生とはどう転ぶかわからないものだと、つくづく思う。
https://www.youtube.com/watch?v=NauE6vFmkHk&t=1s
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