田中一村展 奄美の光 魂の絵画
これはなかなかよかった。
ゴーギャンのような南国の明るい絵のイメージがあるが、そこに至るまでの道のりがかなり険しい
8歳から69歳まで、一生にわたる作品を展示している。
このキュレーションはうまかった。
おかげで田中一村がいかにオリジナリティーをいかに獲得していくか、もしくはオリジナリティーの獲得がいかに難しいかを観ることができた。
8歳の頃は神童と呼ばれた。
水墨画のような作品が多かったがプロ顔負けだ。その後も順調に成長し、今の美大にストレートで合格。スポンサーもついていた。画家としては成功していたと言っていいだろう。
ただ、この頃オリジナリティはほとんどなかった。ごくたまにいつもと違う感じの作品はあれども、基本的には記憶に残らない作品ばかりだった。
50代になり、奄美に移住する。
そこで突然オリジナリティを獲得する。
水墨画を描いていたことで、絹本着色という手法を用いていた。
だから独特の質感とサイズ感が出る。
そこに奄美の自然を描いた。
おそらく奄美はジャングルのように樹木が密集していたのではないか。
だからモチーフが画面を覆いつくすように配置されることになる。
これらの要素が田中一村のオリジナリティを生んだのだと思う。
幸運が重なったようにも思えるが、描き続けたからこそ獲得できたのだ。
絵がうまくてもオリジナリティがなければ、ただ絵がうまいだけ。
日本画はオリジナリティを打ち出すのが難しい。
伊藤若冲は特別な例だ。彼は絵そのものがオリジナルだった。
田中一村は若冲とはまた違う方法、様式でオリジナリティを獲得した。
そういう意味で価値のある展覧会だった。
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