見出し画像

異端の鳥

昨今、映画というものが薄っぺらくなっている。
そんな中で、久しぶりに映画らしい映画に出会った。

パンチの効いた映画を観たい人にはいいだろう。
「シティ・オブ・ゴッド」や「ザ・トライブ」が好きな人は満足すると思う。

冒頭、小さな動物を抱えた少年が逃げていく。
少年は捕まり、動物は焼き殺される。

少年はおばさんと一緒に暮らしている。どうやら両親から預けられているようだ。しかし、おばさんと少年がどういう関係なのかは不明。
少年は「迎えにきて」と書いた紙を帆にして小さな船を川に流す。ここでの純粋な少年らしさは後々の布石になる。
おばさんが座ったまま死んでいた。おどろいた少年はランタンを落としてしまい、家が焼けてしまう。

少年は旅立つ。しかし村人につかまり、祈祷師のような女に買われる。
祈祷師には重宝がられているようだが、村人からは嫌悪されている。

普通の人々は少年を忌み嫌う。受け入れず、暴力を振るう。
仮に受け入れた場合は道具として使われる。
少年はユダヤ人なのだ。だから排斥される。
いつの間にか少年の目は無感情になっている。

中には少年を受け入れる人もいる。
それは司祭であったり、敵の兵士であったりする。
本来少年を受け入れるであろう人々は少年を忌み嫌うのだ。

暴力に満ちた世界を生き延びていくうちに、少年は変化していく。
自らも暴力的になっていくのだ。
人を殺すこともためらわなくなっていく。

やがて父親と再会する。
どうやって再会できたのか、戦争はもう終わったのかわからない。
少年は父親を拒絶する。
物語の冒頭ではあれほど焦がれていた両親を今は拒絶するのだ。
これはコミュニティが彼を受け入れないということがトラウマとなっているのだと思う。
一緒にバスに乗っている時に、少年は父親の腕に、数字が入れ墨されているのを見つける。ユダヤ人を管理する数字だ。
少年はガラス窓に自分の名前を書いた。
少年が動物から人間になったのだ。
父親はどうだろう。父親は数字のままなのだろうか。

文化的な知識がないので、コサック兵とソビエト兵の違いがよくわからない。
そもそも少年はどこからどこへ旅したのだろう。
それは細かいことかもしれない。
少年は家に帰るという目的をもって旅をして、地獄めぐりをしたのだ。
神話的な構造といってもいい。

サポートいただくと、よりよいクリエイティブにつながります!