横浜狂言堂230611(大蔵流<茂山千五郎家)
「延命袋」
口うるさい女房が実家に帰ったのをきっかけに、夫は離縁状を書いて、実家の妻に届けさせる。離縁状を読んだ妻は激怒して、「自分で面と向かって返事をする」と、夫の家に戻り、怒鳴りあいがはじまる。妻が「別れるのなら、暇のしるしをくれ」と言うと、夫が「別れてくれるならなんでも好きなものを持っていけ」と言い返す。」妻は「そのためにちゃんと袋を持ってきたんだ」と大きな袋を取り出す。そして妻が選んだものは…。という話。
うるさい妻を追い払おうとする話ではあるが、夫婦の愛情というものが描かれている。落語でも口うるさい女房というのはよく出てくる。今の夫婦はわからないが、当時はこういう女房に辟易としながらも、なんだかんだでうまくいっていたのかもしれない。
「狐塚」
豊作で喜んだ主人は、群鳥が畑を荒らしていると聞いて、太郎冠者と次郎冠者に鳥を追い払うようにと命じる。ふたりは鳥を追い払っているうちに夜になる。庵で休んでいると、主人が酒を持ってくる。このあたりには化け狐が出ると聞いていたふたりは、目の間にいるのが主人ではなく化け狐なのではないか、と疑いはじめる。という話。
しもべ想いの主人のように描かれているが、太郎冠者と次郎冠者は本当のところでは主人を信じていなくて、目の前にいるのが化け狐ではなく、本物の主人だということはわかっていたのではないか。狐の化けの皮を剥ぐという体裁をとりながら、日ごろのうっ憤を晴らしているのではないか。
当時の世の中はどんな感じだったのだろう。そして、狂言を見に来るひとたちはどんな生活をしていたのだろうなどと考えながら見ているといろいろと新しい視点を得られるのがいいところだ。
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