「テルマ&ルイーズ」(1991年)
名作映画としてよく名前のあがる作品。
女性版「イージーライダー」(1969年)といった趣で、さすがに完成度が高い。
ウェイトレスの中年女性ルイーズは、友だちの専業主婦テルマを誘って週末のドライブ旅行を予定していた。テルマはそのことを夫に伝えようとするのだが、気弱なため、はっきりと口にできない。そうこうするうちにルイーズが迎えに来てしまい、夫にはなにも伝えずに出発してしまう。
ルイーズのすすめで、旅の間くらいは羽目を外そうということになり、テルマはバーで酔っ払い、男と踊る。その気になった男に襲われそうになるが、ルイーズが止めに入る。しかし、もめごとのあげく、ルイーズは男を射殺してしまう。予期せぬトラブルに巻き込まれ、ふたりは警察に追われる身となる。
本作が公開された1991年という年は、「ターミネーター2」「羊たちの沈黙」も公開されている。戦う女という題材を通じて、女性が男性と対等の存在として主張されるようになってきた時代だったのかもしれない。
本作を監督したリドリー・スコットと、「ターミネーター2」のジェームズ・キャメロンは、ふたりとも「エイリアン」シリーズを手掛けており、戦う女リプリーを描いているのがおもしろいところだ。
「羊たちの沈黙」では女性捜査官のクラリスが男性社会の中で奮闘する姿が描かれていた。本作や「ターミネーター2」では主人公は女性だが、成長の証として銃を撃ったり男性に対して暴力的な形で勝利を収める、といった描写になっている。これは女性が社会において男性と対等な立場を手に入れる、というよりは、女性が男性化していくことで社会進出していく印象を受ける。性別は女性なのだが、ベースにあるのは男性的なマッチョ思想なのだ。
現在は女性が女性として描かれる作品も増えてきているが、90年代初頭はまだまだ女性の社会進出というものが本当の意味では浸透していなかったのかもしれない。
製作費23億円で、興行収入64億円。よく名前を聞くわりには当時はそこまでのヒットではなかったのだろうか。ちなみにこの年、全世界興行収入ランキングの1位は「ターミネーター2」(730億円)だった。
それにしてもリドリー・スコットという監督はクオリティの波はかなりあるが、「エイリアン」「ブレイドランナー」などは言うまでもなく、本作のような長く愛される作品を数多く生み出しており、その想像力には敬服する。
https://www.youtube.com/watch?v=ngY_us7og70