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ティモシー・アーチャーの転生

ディックのヴァリス3部作の最後。そしてディックの遺作とされている作品。

個人的にはすばらしい作品だと思う。模造品について書いてきたディックが、その一番深いところにたどりついた。

生きるための軸となっていたもの、たとえば信仰が揺さぶられたとき、人はどうなるのだろう。という問い。ヴァリス同様、大量の情報におぼれる人々。今回は情報が大量だからではなく、大量の情報の中から、アイデンティティを崩壊させる「真実」を発見してしまう。自分の存在が否定された人間の物語。

ディックはここまで辿りついたか、という感動を覚えた。純文学の作家を目指していて、でも金のためにSFを書かざるをえなかったディックが、最後は純文学を書いていた。しかもみんなが知っている彼のSF小説を深化させた形で。これがすばらしい。

この偽物だらけの世界で、ディックは本物の作家だったなあ。

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