グリーンブック
これはなかなかよくできている。
いわゆるアカデミー賞狙いの商業作品で、ものすごい精度で的を射抜いた。
BLMの台頭、多様性、人々の断絶とつながり。現代的なテーマをうまく昇華している。
マハーシャ・アリが演じる音楽的才能のある黒人が重要な人物となる。
主人公はヴィゴ・モーテンセンが演じる。彼はすでに名優と呼んでもいいだろう。今回も強面の用心棒を、魅力的に演じる。
本作は人種差別を扱っているが、ヴィゴが演じる用心棒もイタリア系で、社会的には下層階級だ。彼を雇うのがアリが演じる黒人の天才ピアニスト。
アリはヴィゴをやとって、アメリカ南部を演奏旅行で回る。そのなかでさまざまな出来事があり、ふたりが成長していくというもの。
アリは金持ちで才能豊かな黒人だが、黒人であるがゆえに差別を受ける。ヴィゴは下層階級のイタリア人なので、それはそれで自分がいやしい身分であることを意識している。だから、ヴィゴはアリが恵まれていると考えているが、実際にはそうではないのだとアリは考えている。このあたりのやりとりが、本作の肝ということになるだろう。
才能のある黒人というキャラクターは同じくアカデミー賞を受賞した「それでも夜は明ける」にも通じる。映画としては見せ場になるが、ある種の特権階級を持ち出すと、人種差別的な訴求力は弱まる気がする。
いかにも賞狙いな映画なのだが、そこをきちんとクオリティの高いヒューマンドラマに仕上げたのが、ハリウッドの力なのだろう。
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