「パリ、テキサス」(1984年)
テキサスを放浪していたトラヴィス(ハリー・ディーン・スタントン)は弟のウォルト(ディーン・ストックウェル)に引き取られる。
ウォルトと妻のアンはトラヴィスの息子ハンターを育てていた。
トラヴィスはウォルトの家でしばらく生活していたが、アンから彼の妻ジェーンの消息を知らされ、探しにいくことにする。
ジェーンを演じているのが絶頂期のナスターシャ・キンスキー。それだけでもうなにも言うことがないのだが、ヴェンダース作品としても、上位のクオリティだ。
強すぎる愛は相手を理想化し、本当の意味でのコミュニケーションは成立しない。
これは映画についての映画であり、コミュニケーションについての映画でもある。
ウォルトが編集した8ミリには理想的な家族がうつされていて、ハンターはそこにうつっているジェーンが本当のジェーンではないと語る。
トラヴィスはハンターに認められようとして、父親らしい服装や立ち居振る舞いを演じようとする。
場末の風俗店で、トラヴィスはマジックミラー越しに女と話す。客から女が見えるが、女から客は見えない。女はそれぞれの役割を演じ、客の要望に応える。
その店で働いているジェーンを演じているのは何度も言うように、ナスターシャ・キンスキーであり、超絶美人だ。マジックミラーを挟んだ会話は、スクリーンに映し出される女優のように遠い。
ジェーンもそうだが、息子のハンターも賢く、ものわかりがいい。
この映画じたい、構図も考え抜かれており、映像も美しい。
すべてが美しすぎて、理想的だ。
そう、この映画は映画的であるからこそ成功していると言える。
https://www.youtube.com/watch?v=3j8ypqxfiT4
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